第104話[表] 冥界・絵の違い
<Side:Akari>
「……駄目ね。さっぱりわからないわ」
「うーん……。ふと思ったのですが、これと同じ絵が、もしかして他の所にもあるのでは……」
「あー、なるほど。たしかにそれはあり得るかもしれないわね。まだ全部の部屋を見たわけじゃないし」
「ですね。一旦、ここは後にして、もう一度各部屋を見て回りましょうか」
頷きながらそう言ってくるユーコに対し、私は頷き返すと、とりあえず絵を転写してその場を後にする。
そして、まだ見ていない部屋を見て回った。
……
…………
………………
「……うん? この絵、さっきも見なかった?」
「……おそらく、これも『限りなく似ている絵』ですね。先程と同じく中庭を挟んだ反対側にありましたよ」
「また中庭を挟んで反対側? しかも、これも街を上から見たような絵だし、どう考えても怪しいわね……。じゃあ、これも転写して……っと」
そう返事をしつつ、ちゃちゃっと絵を転写してしまう私。
そして、
「はい、オッケー。その部屋に戻るわよ」
と告げ、『限りなく似ている絵』のあった部屋へと向かう。
「ここですね」
辿り着くなり絵を見比べ――
「……なんか、適当に違うところを作ってみました感がないかしら……これ。ここなんてとりあえず橋をなくしてみたって感じじゃない?」
と、そんな風に言う私。
「ま、まあ、橋がなかった所に橋をかけたのかもしれませんし……」
「いやいや、それならこっちに逆に橋がないのがわけわからないから……」
ユーコに対してそう返しつつ、絵に描かれた川を指さす私。
そして、ため息混じりに言葉を続ける。
「正直、間違い探しレベルよね……この違い」
「そこはそうですが、ここの城壁の外にある森とかはわかりやすい違いですね」
「そうね。こっちとこっちで、明らかに森の広さが違うわね。こっちの絵だと城壁の近くまで森がきているけど、こっちの絵では森と城壁の間に平原があるし」
ユーコに返事をしながら絵を見比べる私。
「先程の絵は川の有無で、今度の絵は平原の有無が大きな違い……ですね」
「そうね。川、平原……?」
私はユーコに頷きつつ、そんな風に呟き、さっきの2枚の絵を眺め直す。
……んん?
「こっちの絵も『森』があるわね。というか、森に囲まれた街だわ」
そう呟くように口にすると、
「片方は川が街に沿うようにあって、片方は完全に森に囲まれている……。今回の絵は、片方は平原が街の近くにあって、片方は森が街の近くまで広がっている……?」
と、絵を眺めながらそんな風に呟き、考え込むユーコ。
「どちらも、森と街の関係に違いがある……?」
「……そうですね。先程の絵は川によって街と森が隔てられており、今回の絵は平原によって街と森が隔てられていますね」
私の発言にユーコはそう返してくる。
それに対し、
「それ以外の違いは間違い探しレベルなのよね。さっきの絵も良く見ると、この辺りの家の並び方が違うとか、そんなんだし」
と言いながら、街の中心に近い辺りを指さしてみせる私。
「川、平原、隔てる……? これらの絵がある部屋も、ある意味隔てられていますね。『中庭』によって」
「あっ、そういえばそうね! ……もしかして、中庭に何かあるって事を示していたりする……のかしら?」
「可能性はありますね……。行ってみましょうか」
「そうね。何かあればいいんだけれど……」
私はそう返しつつ、この部屋の絵を転写すると、中庭へと向かうべく部屋から出る。
と、そこで一際大きな爆発音が響いた。
「わわっ!? 派手な音ね……っ!」
「……この屋敷へ通じる道路のひとつに、大きなクレーターが出来ていますね……」
「あ、本当だわ。誰がやったのかしら……」
窓から外を見てそうユーコに返すと、
「カリンカさんじゃないですかね? ほら、なんかクレリテさんに呆れられているような感じですし」
と、そんな風に言ってきた。
そして、ユーコの視線の先を見ると、たしかにカリンカが頬を掻く姿と、クレリテが両手を大きく広げながら、やれやれと首を横に振っている姿があった。
「……カリンカって、こんな派手な事をする人だったかしら……? 素の方は少しはっちゃけた所もあると言えばあるけど……」
「そうですね……。先程のクレリテさんとのやりとりでも、少し様子がいつもと違っていましたし、クレリテさんもそれに対して、魔王因子が何か影響してきているのでは……? といったような事を呟いていました。なので、いつもと違う状態になっている可能性は十分にありえますね」
私の疑問に対し、ユーコがそんな推測を口にしてくる。
「なるほど……。言われてみるとたしかにそうかもしれないわね……。まあ、魔王因子がどうしてカリンカに対して、そんな影響を与えているのかが良く分からないけれど……ね」
「魔王因子については、現時点では、魔王と呼ばれていたこの世界の王族らしき者たちと何か関係があるらしい……といった事など、ごくごく一部の情報しかなく、正直そのほとんどが謎ですからね」
「その辺りの情報とかも、上手く見つけられるといいんだけどねぇ……。っと、そのためにも隠し部屋を見つけないと駄目よね」
「そうですね。改めて中庭へ向かうとしましょうか」
そう言ってくるユーコに頷き、私とユーコは中庭へと改めて向かうのだった――
魔王因子、そろそろ何か色々とわかってきても良い頃ではありますよね……(何)
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、3月4日(月)の想定です!




