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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第94話[表] 鬼哭界・最終目標

<Side:Akari>

「お前たちの言う事は至極もっともだ。だが、マザーシップは長い年月の間にあらゆるものが閉塞し、緩やかに滅びへと向かい始めている。お前たちが冥界や混沌界と呼んでいるコロニーから『人間』が失われてしまったように、マザーシップもまた『人間』が失われかねない所まで来ているのだ」

「……冥界も混沌界も、全ての住人が死に絶えたわけではないけれどね。リリアが言うには『異界解放同盟』は、冥界や混沌界……そして、この鬼哭界の人間の末裔にあたる者たちで構成されているようだしね」

 ディゾートの説明に対し、エルウィンがそんな風に返す。

 

「たしかにその通りだ。もっとも、グラスティアの住人と交わり続けた結果、魔王血統、ドラグナーズブラッド、エルダーブラッド……お前たちがそう呼ぶ『異界の種族の血』を持つ者は、かなり少なくなってしまったがな。――特に純血ともなれば、ほとんどいないと言えよう」

 そうディゾートが告げると、今度はユーコが、

「だから、血が途絶えてしまわぬよう、今のうちにグラスティアへの移住を強行して、閉塞状態を打開しよう……と、そういうわけですか」

 と、そんな風に返す。

 

「そうだ。しかし私は、他の『銀の王』――いや、『ディアドコス』のように大陸ひとつの環境を変えてまで移住するのは、正しいと思っていない。そのような事をすれば、グラスティアに住まう者たちとの間に、大きな『溝』を生む事になる。それは未来の事を考えれば悪手と言わざるを得ない。なぜなら『溝』というのは、『争い』へと繋がる大きな原因のひとつであるのだからな」

「まあ、その通りでありますね。些細な行き違いから、大きな争いへと発展してしまった例は、過去にいくつも存在しているでありますし」

 ディゾートの言葉に、クラリスが頷きながらそう返事をする。

 

「それで……ディアドコスのやり方に異を唱える貴方は、一体どうしたいと思っているのかしら?」

「――私はディアドコスの全てに異を唱えているわけではない。私も市民の『移住』そのものは必要不可欠だと考えている。だが、その全てを無理矢理移住させる必要はない。移住したいと考える者だけをグラスティアへ送り、市民の生活に害を及ぼさない程度に環境を調整した小さな都市を築く……。そこから始めるべきなのだ」

 私の問いかけに対してディゾートは、そんな至極真っ当な意見を口にしてきた。

 

 うーん……。思ったよりも、まともな思考をしているわね……

 まあ、シズクや珠鈴が認めているのだから、少なくともグラスティアに住む者たちに対する、悪意や害意などを持っていないのは当然なのかもしれないけれど……

 

 なんて思っていると、

「……というより、『黄金守りの不死竜』よ。私からするとお前たちの方が、最終的に何をしたいと思っているのかが良く分からんぞ? 一体何を最終目標としているのだ?」

 と、そんな問いの声を投げかけてくるディゾート。

 そんなディゾートに対し、

「そう言われてもなんとも答え難いでありますね」

「まあそうだね。一応の目的、目標はあるけれど、その先の『サクヤ・プラン』の目的、目標までは把握していないからね」

 なんて答えるクラリスとエルウィン。

 

 そしてそんなふたりの表情は、『知っているけど答える気はない』ではなく、『本当に知らない』と言わんばかりだった。

 というか、サクヤ・プラン……?

 

「……そう言えばクーさんが前に言っていましたね。蒼夜さんには幼馴染の朔耶さんという人から伝えられた、蒼夜さんにしかわからない――蒼夜以外には誰も把握する事が出来ない――そんな情報と目的がある、と」

「ああー! 思い出したわ。たしか……例の『ノイズ』と同じで、その情報や目的は、仮に蒼夜が口にしたとしても、私たちには絶対に伝わらないようになっているんだったわよね?」

 ユーコと私がそう口にすると、

「ふむ、最高レベルのセキュリティを扱える者の『プラン』か。もし、そのサクヤなる者が『全てを把握した上で構築した』のだとしたら……『全ての根幹』にすら繋がっていてもおかしくはないな……」

 と、そんな事を呟くように言って、勝手に納得し始めるディゾート。

 いやいや、こっちは良く分からないんだけど……どういう事よ?

 

「――灯、『移民船団』の現状がどうなっているのか覚えていますよね?」

「え? えーっと……別の宇宙へのワープに失敗して、次元と次元の境界みたいな空間に落っこちている状態……よね?」

 ユーコの問いかけにそう返した所で気づく。

 

「ああっ! もしかして……『サクヤ・プラン』の最終的な目標は、『今いるこの空間からの脱出』かもしれないって事!?」

「そういう事です。もっとも、蒼夜さんにしか分からない以上、現時点では単なる推測でしかありませんけどね」

 私の発言に、ユーコが頷きながらそう言って肩をすくめる。

 

「いやはや、『何をしようとしているのか分からない』はずだ。なにしろ、我らはとうに『ソレ』を成す事は諦めてしまっている。ゆえにそんな事は考えもしないし、そうであるからこそ市民の移住の為に、大陸の環境を変えるという手段を選択したのだからな」

 なにやら楽しそうにそんな事を口にしてくるディゾート。

 

 ……なるほど。大陸ひとつを丸々テラフォーミングしようと考えたのは、今いるこの空間から脱出するよりも簡単で確実だと判断したから……ってわけね。

 ある意味、ディアドコス――機械らしい判断ではあるわね。

 

 でも、うーん……

 『銀の王』――『竜の御旗』って、明らかにローディアス大陸のテラフォーミングが最終目標っていうわけじゃないわよね?

 テラフォーミングが最終目標であるのなら、余計な事をせずにローディアス大陸に籠もっていればいいわけだし。

 だというのに、連中は世界各地で暗躍している。

 

 そもそも、ディゾートも『ディアドコスの全てに異を唱えているわけではない』などと言っていたわけだし。

 そんな言い回しをするという事は、ローディアス大陸のテラフォーミングは、あくまでも計画の一部でしかない……と、そう考えて間違いないだろうし……

 

「――それで? 脱出を諦めた『ディアドコス』と『銀の王』の方は、何を最終目標としているのかしら? 当然、テラフォーミングではないわよね?」

 答えてくれるかは正直わからない。


 けれど……それでも私は、そんな問いの言葉を投げかけずにはいられなかった――

妙に色々と把握している上に、詳しい説明までする『銀の王』ですね……?(何)


とまあそんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、1月29日(月)の想定です!

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