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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第88話[裏] 鬼哭界・救出作戦 Phase7

<Side:Souya>

「邪魔よ」

 シャルはそれだけ口にすると、左右の手にそれぞれ持った刀と剣で通路に現れた敵の集団を一瞬で斬り倒した。

 

「シャルさーん! 私たちより先に一掃しないでくださいよー!」

 なんて事を言いながら駆けるエミリーに、

「あー……。あの程度なら一瞬で終わるし別にいいかなって……」

 と、頬を掻きながらそう返すシャル。

 

「――レンジさんたちの陽動が上手くいっているようで、こちらに来る敵はほとんどいませんからね……。どちらかと言うと、帰り道――退路の確保の方をメインにするのが良さそうな気がします」

「たしかにそうかもしれないでありますな。相変わらずシャル殿が強すぎるであります」

 クライヴの発言に対し、クラリスが同意しながらシャルを見る。

 するとそれに、

「うん、そうだね。まあ、さすがの剣聖という感じだけど」

 と、エルウィンが続く。

 

「むむっ。ボクも割と強くなっているでありますが……。シャル殿には後ほど手合わせを所望するであります!」

「いきなり何を言っているのよ……」

 唐突なクラリスの発言にシャルがそんな風に少し呆れ気味に答える。

 

 まあ、クラリスとしてはエルウィンがシャルを褒めたから、シャルへの対抗心が湧いたんだろうな……なんて事を思っていると、

「そう言えば、エルウィンさんとクラリスさんをこちらに加えたのは、ローディアスの情報を得られるかもしれないという、その可能性を考えての事なんですよね?」

 と、そう問いかけてくるエミリー。

 

「ああ。なにしろここは『銀の王』の拠点のひとつだからな。ローディアス大陸で行っている事についての詳細もなにか見つかるかもしれない……と、そう思ったんだ」

「少しずつ色々と分かってきてはいるからね。ここでもし『根幹』に関する情報を少しでも得る事が出来たら、案外一気にどうにかなるかもしれないし」

 俺の返答に続くようにして、そんな風に言うエルウィン。

 そして、人差し指をピッと立てながら、

「と言っても、マーシャちゃんを救出するのが最優先だけどね」

 と、言葉を続けた。

 

「そうでありますな。マーシャさえ救出出来れば、ローディアスに関する情報は得られなくとも別に問題はないであります」

「それは実にありがたいが……ん?」

 クラリスに返事をした所で、周囲を調べるべく発動していたクレアボヤンスの視界に、まるでコンピュータールームのような感じの部屋が映った。

 そして、その部屋に慌てて駆け込んでくる人物の姿もまた映った。

 

 ……これは……

 

「どうかしたの?」

「ああ、次の角を曲がった所から2つ目の部屋に、速攻で踏み込んで制圧してくれ。可能なら中の人間を殺さず捕らえる感じで」

 問いかけてきたシャルに対してそう返すと、

「良く分からないでありますが、サッと抑えてくるであります!」

 と、シャルよりも先にクラリスが答えると、即座に正面方向にあった突起に蛇腹剣を伸ばし、そこに引っ掛けた。

 そしてそちらへ向かって蛇腹剣を縮め、その引っ張られる力を利用して超加速。一気に通路を突き進む。

 

「あ、ちょ!? 速すぎ!」

 シャルがクラリスに対して何か言おうとしたようだが、既に声の届くような距離にはいなかった為、それだけ口にして急いで後を追った。

 

 一直線に進むだけなら、こういう事が出来るクラリスの方が速いからなぁ……

 なんて事を思いつつ、ふたりの後を追いかけていく俺たち。

 

 そして俺たちが指定した場所に付いた時には、

「バッチリ殺さず気絶させておいたでありますよ!」

 と言ってくるクラリスと、

「何かあの端末を操作ししていたわ」

 と指で指し示しながら告げてくるシャル。

 

 示された先にある端末を見ると、何やらウィンドウが表示されており、そこには『選択したデータを完全に消去します。よろしいですか?』と記されていた。

 あ、危な……。ギリギリだったか……

 

「どうやら、この端末に記録されている情報を削除しようとしていたようだな」

「それはつまり……この端末には、我々に見られると困る情報が存在している……という事になりますね」

 俺の発言に対し、そう返してくるクライヴ。

 

「そうなるな。――エルウィン、クラリス、ここに残ってまた誰かが削除しに来たら捕まえてくれないか?」

「ん? マーシャの救出の方が重要でありますよ?」

「たしかにそうだが……マーシャの救出に必要な人員は十分足りてるしな。こうして、何かありそうな場所を発見した以上、放っておくのもな……」

 クラリスの言葉に、そんな風に返す俺。

 

 クラリスとしてはマーシャの救出を最優先したいだろうが、ここに何か情報があると分かっていて、それを手放すのは惜しい。

 そして、マーシャの救出を疎かにするつもりはまったくないが、正直、戦力は既に過剰なので、少し分散させるくらいの余裕は普通にある。

 そう判断した俺に、

「うーん……たしかにそれも一理あるね。……うん、了解したよ」

 と、エルウィンが頷いて了承してくる。

 

 無論、エルウィンが了承すればクラリスも了承する事になる。

 というか、それを分かっているからこそ、エルウィンが先にそう返事をしてくれたんだろうが。

 と思っていると、

「あ、ついでに少し調べてみてもいいかな? 一応、この世界の言語と文字はある程度覚えてきたよ」

 エルウィンが俺にそんな風に返してくる。

 いつの間に……と思いつつ、

「それは助かる。是非頼む。あ、その気絶させた奴は後から来る蓮司の所の人間に引き渡してくれ」

 と返し、その場を後にした――

エルウィンとクラリスが、もの凄い久しぶりの登場となりました……


とまあそんなこんなで、今年もまたよろしくお願いします!

今年は(正確には6月に)なんと5年目に突入します。

……正直、当初の想定からすると全体の2/3に到達するかどうかといった辺りなので、まだまだ先は長かったりするのですが(少し縮めようとは思っているのですが、なかなか……)


さて、次の更新は予定通りとなりまして、1月5日(金)の想定です!

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