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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第87話[表] 鬼哭界・救出作戦 Phase5

<Side:Yuko>

「うぐ……っ! くう……っ!」

 苦しげに呻きながら手を床について耐えるロゼさん。

 

 どうしたものかとあれこれ考えてみるものの、何も思いつきません。

 ……駄目ですね。こればかりは、私では対処出来ません……

 

「ロゼさん! ちょっと待っていてください……!」

 私はそう告げて、すぐに天井をすり抜けます。

 

「あ、ユーコさん。……その、ロゼさんは大丈夫だったです?」

「そ、その、全身の傷は治療出来たのですが……」

 すぐに私に気づいて問いかけてきたクーさんに私はそう返すと、そのままロゼさんの状況について説明します。

 

「角が壊されていて、アリーセさんの薬でも再生出来ない……です? なるほど……」

 クーさんはそう呟くように言いながら、何かを考え始めます。

 そして、

「……おそらく、ディアルフ族特有の『霊力』が暴走しているのではないかと思われるのです」

 と、そんな推測を語ってきました。

 

「霊力の暴走……ですか。それは一体どうすれば……」

「……申し訳ないのです。推測は出来るものの、どう対処すればいいかまでは……。でも、霊力の暴走という点では、アーデルハイドさんが詳しいので、アーデルハイドさんに診てもらえば、なにか対処法がわかるかもしれないのです」

 私の問いかけに対して、文字通り申し訳なさそうな表情でそう返してくるクーさん。

 

 ですが、それならば、今やる事はひとつというものです。

「……でしたら、予定通りロゼさんは私が守ります。クーさんは、みなさんに今の状況を伝えて、急いで来てもらえますか?」

「わかったのです! すぐにみなさんに伝えて向かうのです!」

 クーさんは私に対してそう返事をするなり、即座に変化して部屋から飛び出していきました。

 

 それを見届けると床をすり抜け、すぐにロゼさんのところへと戻ります。

 すると、ロゼさんは先程と同じく苦しげな様子ながらも、立ち上がった状態で、どこで見つけたのか、血がべっとりとこびりついたナイフを手に取って、ドアの方を見据えていました。

 

「ロ、ロゼさん! 無茶をしては駄目です!」

「ん……。ぐ……。だいじょう……ぶ。このくらい……なら……。うぐっ……。まだ……たえ……られる……っ!」

 慌てて声を投げかけた私に対し、苦悶の表情のままそんな風に返してくるロゼさん。

 

「駄目です! すぐにみなさんが来ます! だから、それまで休んでいてください! 誰か踏み込んで来たら、私が迎撃しますから大丈夫です!」

 私はそう告げながら、ロゼさんを座らせると、そのまま壁にもたれ掛からせました。

 

「ん……。ありがと……。このナイフ……私の皮膚を……剥いだ時の血で、べっとりだから……切れそうにないし……。うん、なんか……霊力の刃も出せないし……。正直言うと、戦闘はちょっと厳しかった……。うん……」

 なんて事を言ってくるロゼさん。

 

 ……霊力の刃を出せない……?

 疲弊しているせいであるのならいいのですが、もし角が壊されたせいだとしたら……

 

 そんな事を考えていると、

「奴ら、きっとここの角冠の女を奪還しに来たに違いない!」

「殺して、その死体を奴らに投げつけてやれ!」

 なんていう声がドアの外から聞こえてきました。

 そして、それと同時にガチャガチャとカギを開ける音が響きます。

 

 ……やはりロゼさんを殺しにきましたか……

 ですが、そうはさせません。

 

 即座にドアから足だけすり抜けさせ、具足のアストラルエッジでカギを開けようとしていた者を突き刺しました。

 

「ぐっ!? がはっ!?」

「なっ!? なんだ!?」

「ビームの刃!? 部屋の中からだと!?」

 そんな声とドシャっという床に倒れ伏す音が聞こえてきます。

 

 ――まずはひとり。

 

「と、とりあえず下がれ!」

 

 ――甘いですね。

 私はそのままドアをすり抜け、横薙ぎにアストラルエッジを振るいます。

 

「がはっ!?」

「んなっ!?」

 

 苦痛の声を発する者と驚愕の声を発する者。

 ――これで、ふたりめ。

 そのまま3人目……とはいきませんでしたか。

 驚愕しつつも後退するあたりは練度が高いですね……。忌々しいですが。

 

「ば、馬鹿なっ! 壁をすり抜ける……だと!? き、貴様は一体……!?」

 少し離れた所にいた者が、目を見開きながらそんな言葉を投げかけてきます。

 

「――私はただの幽霊です。そして、残念ですが貴方がたをこの部屋の中に入らせるわけにはいかないのです。なので、もし入りたいというのなら……代わりと言ってはなんですが、死を差し上げましょう」

 私は、敢えて芝居がかった口調でそんな風に告げてみました。

 こう言った方が怯んでくれそうですし。……先日の一件から。

 

「な、ゆ、幽霊!? 幽霊がどうしてこんな場所に!? ま、まさか、角冠の女の仲間だとでもいうのか!?」


 ほら、やっぱり怯んでくれました。

 正直、問答無用で殲滅するのが一番手っ取り早いのは間違いないのですが……生命反応の消失を察知とかされて、新手が送り込まれても面倒ですし、時間稼ぎ出来るのなら時間稼ぎした方がいいですからね。

 上手くいけば、なんらかの情報が得られるかもしれませんし……

 

 怯んでいる者たちを見据えながら、私はそんな事を考えるのでした――

着実に、密偵とか暗殺者とか、そっちの方面に能力が向き始めているユーコさんです(何)


とまあそんなところでまた次回!

次の更新も予定どおりとなります、12月29日(金)を想定しています!



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