第4話外伝 その結果
外伝といっても、第4話の後半部分の様な位置づけなので短いです。
<Side:??????>
研究班の人間が慌てた様子で部屋へと入ってくる。
どうやら、偵察に出した人形に何かが起きたようだ。
「何? 10を超える魔法の一斉攻撃を受けて沈黙した……だと!?」
ボスが研究班の人間の報告に驚き、報告の内容を復唱するかの如き声を発した。
それに対して研究班の人間は、少し焦りながら、バインダーの資料を読みながら報告を続ける。
「は、はい! その様なダメージデータが送信されてきました。映像と音声からも裏付けが取れています……!」
「むむぅ……。つまり、少なくとも10人の人間がその周囲に居たという事か……」
「おそらく、元からそのつもりで動いていたのではないかと……」
ボスの言葉に別の男が言葉を返す。
うん? この男の名前はなんだっただろうか……? なんだかやたらと長い名前だったような気がするが……
…………ううむ、どうにも思い出せそうにないぞ…………
……よし、とりあえず青いロン毛とでも呼ぼう。
無論、面と向かってそう呼ぶわけにはいかないが、心中で呼ぶ分には問題なかろう。
さて、そっちはいいとして、だ――
「AIの判断基準を逆手に取られたという事か? だが……そうだとしたら、だ。先に送り込んだその2体が痕跡ごと消されたのに対し、何故、偵察に送り込んだ奴はその場に残されていたのだ?」
「我々に対するメッセージなのではないか? こちらは単独で動いているわけではい。集団――それも手練の集団で動いている、下手に手を出すと痛い目を見るぞ……と、そんなところではなかろうか」
ボスの疑問に対し、私はそんな推測を語る。
おそらく間違ってはいないと思うのだが……若干、引っかかるものがあるな。
もっとも……それが何なのかは分からず、現時点では単なるカンでしかない為、口には出さないが。
「閣下、私も彼女の推測に同意します。おそらく、あのエルランのモノノフは、単独で動いているわけではなく、どこかの組織の一員として動いているものかと」
青いロン毛が一歩前に歩み出て、そう言った。
ボスはこめかみに人さし指と中指を当てながら、青いロン毛へと言葉を返す。
「ふむ……なるほどな。治安維持省の情報は全て得ていたはずだが、引っかからなかった事を考えると、どうやら別の所に、秘密裏に諜報部隊が作られていたようだな」
「……今の元老院議長なら、そういったものをいつの間にか準備していたとしても、何ら不思議ではありません。――そういう男ですから」
「ああそうだな……。まったく、実に厄介な奴だ……」
青いロン毛の言葉に対し、拳を握り、それをワナワナと震わせながら、忌々しげな表情でそう返すボス。……まあ、そうであろうな。
ボスは腕を組み、しばらく考え込んだ後、
「……ともかく、暗殺を狙うのは一度中止する。あのモノノフの裏にある組織について暴くのが先だ。長距離からの生体感知による監視に留めつつ、慎重に接触した人間について調べていくのが妥当であろう」
青いロン毛の方へと顔を向け、そんな言葉を紡ぐ。
「承知いたしました。では人形で監視しつつ、接触した人間については、私の方で調査を行うとしましょう」
青いロン毛がそう答えて恭しく頭を下げる。
それからゆっくりとこちらに向き直り、
「――すまんが、君にもあの女が接触した者の調査を手伝って貰いたい」
と、私に対して協力の要請をしてきた。
……ふーむ、状況的に考えると少し手伝っておいた方がよさそうな感じではあるな。それに……少し引っかかるのものがあるからな。
そんなわけで私は、青いロン毛に対して頷き、そして告げる。
「――わかった。私で良ければよろこんで協力しよう」




