第84話[表] 鬼哭界・救出作戦 Phase2
<Side:Akari>
「とりあえず、特に私たちの潜入に気づいたという感じではなかったのです」
「なら、このまま進んで問題ねぇな。急ぐとしようぜ」
グレンはクーさんに対してそう返すと、クーさんが、
「ただ、この先の通路なのですが、防火扉のような分厚い扉で閉ざされていて、進めそうになかったのです」
と、そんな風に言ってきた。
「迂回するしかないって事?」
「はいです。そうするしかないと思うのです」
私の問いかけにクーさんがそう返事をしてくる。
それを聞いたユーコが、
「それなら、一旦私だけ予定通りに進んでアーヴィングさんたちと合流して、状況を伝えてくるのが良さそうですね。扉なら別に障害にはなりませんし」
と、言った。
うーん、たしかにそうね……と思ったその直後、
「え? 私もそんなもの障害にならないけど? ほらほら、行くよ」
などと告げて、元々予定していた通路へと走るシズク。
……あ、これ、力づくでどうにかする奴だわ。
そう思いつつシズクの後を追うと、少し進んだ所でたしかにクーさんの言っていた防火扉のような分厚い鉄扉が見えてきた。
「ただの金属だね。魔法障壁とかで補強されているわけでもないし、一発かな」
なんて事を言って得物を振るうシズク。
その刹那、青い筋のようなものが壁一面に幾重にも走る。
それはまさに、ゲームやアニメなどで良く見かける『斬撃のエフェクト』のような感じだった。
「終わり、っと」
そうシズクが告げた瞬間、分厚い鉄扉が細切れになりながら、床にガラガラと崩れ落ちた。
「無茶苦茶だな……」
「ま、まあ、シズクさんらしいと言えばらしいのです」
呆れ気味のグレンとクーさんに、
「そんな大した事してないと思うけどなぁ?」
と肩をすくめながら返すシズク。
そしてそのまま鉄扉の残骸を乗り越えて先へと進みながら、
「このくらいならアカリでもぶち抜けたでしょ?」
なんて事を私の方へと顔を向けつつ言ってきた。
「あー……まあたしかに、この程度ならチャージショットで穴開けられそうかも……」
「でしょ? アカリといいユーコといい、どうも自分の強さを……力量を過小評価している気がしてならないんだよねぇ、私は」
「そ、そうかしら……」
そんな事を言われても、ヴァロッカに訪れるまではそんな力なかったし……
強いって言われても、いまいちそれがどのくらいなのか分からないのよねぇ……
「というわけで……。ロゼを救出したら、やりあってみないかな? 私と。あ、ふたり一緒でもいいよ。コンビの方が強そうだし」
「いやいや、なにが『というわけで……』なのよ。やらないわよ。……やらないわよね?」
シズクの発言に対し、私は否定しつつも、一応ユーコの方を見て言葉を投げかけてみる。
「やりませんよ。……と言いたいのですが、2対1というのはちょっと興味がありますね。灯との連携力がどのくらい以前より上がっているのかとか、ちゃんとこちらに攻撃を向けられるかとか、その辺が気にはなりますし」
「え? それ、やりたいって事……?」
何やら妙な事を言いだしたユーコに対し、私がそう問いかけると、
「断られたらシャルに問答無用で仕掛けようと思っていたけど、これは脈アリかな?」
なんていう反応をシズクがしてきた。
……シャルに問答無用でって……相変わらずねぇ……
って、そうじゃなくて!
「やる……の? 面倒くさいんだけど……」
そんな風に私が言うと、
「まあまあ、面倒になったら逃走すればいいんですよ。壁をすり抜けて」
なんて事をサラッと返してくるユーコ。え? 何? ツッコミ待ち?
「それ出来るの、ユーコだけでしょうに! ……大体、私は近接じゃなくて遠隔がメインなんだけど……」
「ああ、たしかにそうだね。うーん……。それなら、アカリは騙し討ちのイレギュラー役って事でいいよ。私からは一切狙わないようにするから。あ、広域の攻撃で巻き込んじゃう可能性はあるけどね」
「はぁ……。まあ、それなら別にいいけど……。多分、実戦でユーコと連携するなら、今はそういう形になるだろうし」
シズクに対してそう答える私。
そして――
というか……。ユーコがどんどんタンク――盾役と化してきているような気がするわ……。思考も、なんだか敵の攻撃を引き付けますって感じだし。
もしかして、裏位相の遺跡で敵に狙われすぎて、何かこう……タガなりネジなりが外れてしまったのかしら……?
なんて事を思うのだった。
思ったよりも会話が長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……
とまあそんなこんなでまた次回!
次の更新も予定通りとなります、12月18日(月)を想定しています!
※追記
話数が間違っていたので修正しました。




