第65話[表] 鬼哭界・RASED and RASEM
<Side:Akari>
「なるほど……たしかにこれは迷路だな」
「ええそうですわね。一体、何を考えてこんな造りにしたのやら……ですわ。まあ、携帯通信機でオートマッピングしていますし、外に出るだけでしたら迷わないで済みますけれど」
ロディの呟きに頷きつつ、そんな風に言って携帯通信機を見るリリア。
というか――
「携帯通信機にそんな機能あったのね……」
「いえ、これは私たちの使う携帯通信機には、プリインストールされていますけれど、市販の携帯通信機にはインストールされていませんわよ。私たちはほら、割と未知の場所を探索する事が多いですし? そういうアプリケーションをインストール済みなんですのよ」
私の問いかけに対して、リリアがそう返してくる。
そして、携帯通信機をしまいながら、
「これを改良した物を使って、五番隊と七番隊が『例の迷宮』の詳細なマップを、今作っていっている所ですわ」
と、そんな風に言葉を続けてきた。
「ああ、なるほど……」
私は納得しつつ、リリアって正確には『黄金守りの不死竜』の人間じゃなかった気がするけど……まあ、敢えて突っ込む事でもないわね。私たちもなんだかんだで色々と恩恵を受けてるし……などと思っていると、シアが、
「オ、オートマッピングのアプリケーション? と、というか、その携帯通信機って、ラ、RASEDとは別物?」
なんて事を問いを投げかけて来た。
「えっと……ラセッドって何?」
「レジストリィ・アンド・ソーシャル・エクステンション・デバイスの略だ。住民である事を示す『証』を兼ねたネットワーク接続端末の事だ。最後のDをMにすると、この辺りで一般的に使われている仮想通貨になる」
私の問いかけに対し、シアの代わりにレンがそんな風に説明してくる。
そして、それに続くようにして、
「そ、そっちは、ラ、ラセムって呼ばれている。あ、貴方たちの所では使われていない?」
と、補足しながら再度問いかけてくるシア。
「そうね。というより……通信機はあるけれど、仮想通貨の方はほとんど使われていないわね」
私はそう言いながら肩をすくめてみせる。
一応、携帯通信機用のアプリケーションは仮想通貨――CAMPという専用のポイントで購入出来るのだけれど、その程度しか存在しないのよね。
しかもそのポイントは魔煌具ショップでカードを買って、そこに記されている番号を登録するという方法でしか買え出来ないし。
「現金がメインとは変わった場所だな。――っと、ここがアジトの入口だ」
レンがそう言いながら立ち止まり、何の変哲もない壁を指さす。
「壁? すり抜けられるとかですの?」
「そんな高度なホログラムではないな。単にドアになっているだけだ」
レンは首を傾げながら問うリリアに対し、そんな風に返事をすると、ポケットからスマホを更に薄くしたような物を取り出した。
そして、それを自身の目の前にある柱へと近づける。
すると、即座にピピッという電子音と共に壁が左右に開き始めた。
「ふむ、柱自体が認証装置になっている……いや、中に埋め込まれている感じか。なかなか上手く隠されているな」
「そ、その通り。こ、このドアと一緒に作った」
ロディの呟きに対し、頷きながらそう言ってくるシア。
「まあたしかに、最初からこんな仕掛けがあるわけないわよね」
「そうですわね。ですが、これだけの仕掛けを作れるという事は、アジュールブリンガーというレジスタンス組織は、それなりに技術力がありそうですわね」
私に続くようにして、そんな風に言いながら開かれた壁――ドアの先の通路を見るリリア。
「ま、その辺は後で詳しく話すとしよう。とりあえず中に入ってくれ。開けっ放しにしておくわけにはいかないからな」
そう告げながら肩をすくめてみせるレンに、たしかにもっともな話だと思い、速やかに隠されていた通路へと足を踏み入れる私たち。
……これで、退路を塞いで始末しにかかってくる……とか、そういうオチはないわよね?
いやまあ、そんな話だったらあれこれ説明してこないだろうからないと思うけれど。
RASEDやRASEMの説明以外の会話が思ったよりも長くなりました……
とまあそんな所でまた次回! ……なのですが、この先しばらくの間、諸事情により火曜日の更新が不可能な事および他の2作との兼ね合いで、基本的には週2回『月曜日』と『金曜日』の更新とさせていただきます(あくまでも基本なので、状況によって1日程度前後する場合があります)
というわけで、次の更新は……10月13日(金)を予定しています。




