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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第61話[表] 鬼哭界・裏手の区画

 一方その頃――

 

<Side:Akari>

「路地裏がこんな風になっているだなんて、表からは想像がつかなかったわ」

 私はそう言いながら周囲を見回す。

 そこは立ち並ぶ古びたビルへと続く通路と、上下の通路を繋ぐ階段とが複雑に入り組み、迷路のようになっている場所だった。

 路地裏というよりは、表の通りとは違う『裏手の区画』であり、立ち並ぶビル内へと続く交差点といった感じね。分岐が多すぎるけど。

 

「錆びたビルと床、赤い光を放つネオン、そしてグチャグチャに繋がっている謎の配線……か。こいつはまるで九龍城砦だな」

 周囲を見回しながらぼそっとそんな事を呟くロディ。

 それに対して、

「ガウロン……ツァーイセン? なんですの? それ」

 という、もっともな問いの言葉を投げかけるリリア。

 これ、日本では『クーロン城』という言い回しの方が一般的ね。

 

「あー……。まあ簡単に言うと、今は無きスラム街の事だ」

 ロディが頬を掻きながらそんな風に言う。


 まあ、この世界に存在しているものじゃないから、それくらいしか言いようが無いわよねぇ……と、そんな風に思いながら、私は補足を口にする。

「私も良くは知らないけど、城塞の跡地だかなんだかに無計画にビルを建てまくった結果、それらが折り重なって迷路みたいになってしまった場所らしいわね。入ったら出られないとか言われるくらいの無法地帯、魔窟だったとかなんとか」

 

「ま、実際の所は住人たちが組織した自警団によって、そういった噂に反してそこそこ治安は良かったんだそうだけどな」

 と、更に補足するロディ。


 へぇ……そうだったのね。

 でもまあ、そこに住む人が大勢いた事を考えると、たしかにそんな無法地帯――魔窟じゃ生活しづらくてたまらないし、自警団によって治安を維持するというのは、もっともな話と言えばもっともな話かもしれないわね。

 

「なるほどですわ。昔はそんなものがあったんですのね。でも、たしかに表の通りと比べて雑多というか暗いというか……いかにもスラムという感じがありますわね」

「明かりのないビルや、あっても光量が弱くて薄暗いビルばかりなせいだろうな。人の気配はあるから、住人はいるようだが」

 リリアに対してロディがそう答えると、

「そうですわね。かなりの人間が住んでいるようですわね。私たちに対しては、大半は無関心といった感じですけれど……ごく一部から監視するような視線を感じますわね」

 と言いながら、視線だけを右方向にあるビルの上の方へと向けた。

 

「詮索するつもりのない人間と、警戒している人間がそれぞれいるって感じなのかしらね?」

「おそらくそんな感じだろうな。とりあえず、『無関心な人間』の多い方へ向かうとしよう。そうすれば監視している奴も『自分たちに害を及ぼす人間ではない』と考えるはずだ」

 私の推測に対して頷きながらそう告げるロディ。

 それに対してリリアが、

「でしたら、こっちのビルが良さそうですわね」

 と返事をしつつ、赤いライトが仄かに通路を照らすだけの薄暗いビルへと足を向ける。

 

「中も入り組んでいますわね……」

「左右に伸びる通路が多すぎるわね。下手に足を踏み入れたら外に出られなくなりそうだわ」

 リリアと私はそんな事を呟きながら、ビルの中の通路を進む。

 

 部屋の入口みたいな感じなのに、中は階段になっているとか、普通に部屋を改装して店にしている所とかあるし……

 

 って、なんだか危険そうな薬品が並んでいる店が出てきたわね。

 かと思ったら、その隣ではビーム系の武器が売られてるわ。

 本当にカオスねぇ……

 

「ビームの槍がちょっと欲しいですわね」

「……あのショットガンっぽいとかアサルトライフルっぽいのとかは、割と役に立ちそうな感じではあるな……」

 なんて事を呟きながら、店を眺めながら歩いていくリリアとロディ。

 

「一応商店街……みたいな感じなのかしらね? ここら辺」

「そのようですわね。だからなのか、監視の視線が消えましたわ」

 私の発言に頷きつつ、後方を一瞥するリリア。

 それに続くようにして、

「おそらく、ここに何かを買いに来ただけだと思われたんだろうな」

 と言って、ロディが肩をすくめてみせる。

 

「まあ、このままもう少し物色してみるのが良さそうですわね。覚えておけば、後で買う事も出来ますもの」

「それはたしかにそうね。蒼夜たちがお金を得られているといいんだけど……」

 リリアに対してそんな風に返しつつ、怪しい物からまともな――と思われる――物まで、それはもう色々と売られているその場所の探索を継続する私たちだった。

九龍はガウルンだったりガォロンだったりしますし、城砦もジャーイセンなんて読み方もあったりするんですが、とりあえず『ガウロンツァーイセン』にしておきました。


鬼哭界はそんなに広くない事もあり、どうしても狭い場所に多くの人が集まるような傾向にあります。

なので、整然としたキレイな街並みよりも雑多で入り組んでいる汚れた街並みの方が圧倒的に多かったりします。


とまあそんな所でまた次回! 

次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月29日(金)を予定しています!

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