第60話[裏] 鬼哭界・ゴロツキとRASEM
<Side:Souya>
「ぐごげぇ!?」
「ごばあっ!?」
そんな声と共に、ロゼの攻撃を受けたゴロツキふたりが倒れ伏す。
「まさか、本当にゴロツキが居て、襲ってくるとはな」
「ん。居そうだとは思っていたけど、うん、ここまですぐに襲ってくるとは思わなかった。治安悪すぎ。うん」
俺の言葉に、円月輪を構え直しながらそう言ってくるロゼ。
「そうだな。フェルトール大陸北部の不夜城都市ですら、ここまで治安は悪くないぞ……っと!」
そんな風に返しつつ、正面方向に向かって電撃を放射する俺。
強烈な電撃を浴びたゴロツキたちは、声ひとつ上げる事が出来ないままその場に倒れ伏した。
殺害してしまうと面倒な事になりそうなので、一応気絶に留めている。
ロゼが倒した2人も同じだ。
「……ん、私より倒した数が多い。残念。うん」
「何故そこで残念がる……」
残念と言いつつ、悔しそうな表情――と言っても、見た目的にはあまり変化はないが――をするロゼに対し、そう俺が返した所で、
「アクセラ・タブを使っても追いつける気がしねぇデタラメな速さで動く女に、強力すぎるSWB持ちの男……。な、なんなんだ……。なんなんだよ、てめぇらは!?」
まだ倒れずに残っていた最後のひとりがそんな風に言ってくる。
「通りすがりの……ただのゴロツキハンターだ」
「な、なにを言――でげぼぉっ!?」
俺の発言に対し、最後まで言葉を紡ぐよりも前に、最後のひとりが倒れ伏す。
そしてその直後、ロゼが「ん、その通り」と言いながら円月輪をしまった。
「……その刃ばかりの武器で良く気絶させられるもんだ」
「ん、横で殴れば大丈夫。うん」
俺に対してそんな風に答えつつ、しゃがんでゴロツキを物色し始めるロゼ。
正直、あまり褒められた行為ではないとは思うが、ここは仕方あるまい。
襲ってくる奴が悪いという事にしておこう。
などと、心の中で呟いていると、
「……ん。駄目。こいつら、大した金を持ってない。うん」
なんて事を言いながらロゼが小銭を見せてきた。
「ここではカード的な物での支払いがメインとかなのだろうか? まあ、単に持っていないだけの可能性も十分ありえるが」
そんなふうに言うと、再び漁り始めたロゼが、
「ん、カードっぽいものはあるけど、ううん、なんて書いてあるのか分からない」
と言ってくる。
「分からない? 自動翻訳が働いていないのか?」
自販機の文字や奴らの言葉は理解出来たんだが……と思いつつ、ロゼから手渡されたカードを見る俺。
『RASEM』
……ラ……セ……ム? なるほど、たしかに謎だな。
だが、これってこういう物なんじゃないか?
地球――というか日本にもこういう感じの名称を持つカード、結構あったし。
「ラセム……。何かの略称な気がするな」
「ん? その文字、読めるの? 私は、うん、そもそもその文字が意味不明。翻訳されてない。うん」
俺の呟きに対し、そんな風に返してくるロゼ。……んん?
「R、A、S、E、Mの5文字だが……読めない感じか?」
「うん。読めない。そもそも、RとかAとか言われても分からない。うん」
俺の問いかけに対し、ロゼがそう答える。
それを聞き、俺は思う。
……この感じ、『アーティファクトメイカーズ』の時と似ているな。
ロゼに取って読めない文字――つまりそれは、ディアーナの翻訳対象外である『グラスティアにおいて、現代に至るまでの長い歴史の中で一度も使われた事のない文字』だという事だ。
それを踏まえて考えるなら、ここに記されている文字は、アルファベットそのものだと考えていいだろう。
そして、そうであるとするならば、鬼哭界で使われている言語は『地球の言語そのもの、あるいは限りなく近い』という事になる。
――地球の言語をルーツに持つ……とかそんな感じなのか?
いや、そもそもその話の前に、どうして文字は理解出来ないのに、言葉の方は理解出来る――正しく翻訳されているのかが謎だな……
って、まてよ……?
もしかして、この『RASEM』に該当する単語が存在しないから……だったりするのか?
おそらくこれは何かの略称だろうからな。
なんにせよ、この鬼哭界というのは、地球と何らかの関係がありそうな感じはするな。
まあもっとも、単純に『地球と同じような感じで発展しただけの完全な別物』という可能性もあるにはある。
だが、『アルファベット』という、いかにも関係性がありそうな要素が存在しながら、完全に無関係ですというのは、さすがにないだろう。
何かしらの関連性があると考えて良いんとは思うんだが……
RASEMは、蒼夜の言う通り略称です。
とまあそんなこんなでまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月26日(火)を予定しています!




