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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第58話[裏] 鬼哭界・上の街と下の街

久しぶりの蒼夜視点です。

<Side:Souya>

「これは……たしかに地上には見えないわね……」

 昇降機で辿り着いた天井が朽ちて抜けてしまっている廃墟同然の建物から、上へと顔を向けながら灯がそんな事を呟く。

 

 その視線の先――遥か上空に見えるのは『天井からぶら下がるようにして建つ大小様々なビル』だ。

 更にそのビルとビルの合間には道があり、何かが行き来しているのがわかる。

 

 ……なんだ? これといって規則性などはなさそうだが、何が行き来しているんだ?

 そう思いながらクレアボヤンスを使って視てみると、行き来しているのはなんと『車』だった。そして、それらは自動で動いているわけではなく、誰かが運転しているようだった。

 それは、

「――車が天井に貼り付いて……いや、上下反転して走っている……?」

 そんな呟きが自然と口をついて出てしまう程の驚きだった。

 

「上下反転じゃと? うぅむ、ここから見える光景だけでは良く分からんのぅ……」

「建物の周囲に誰かいる感じはありませんね。ボロボロの通路と廃墟があるだけです」

 クレリテに続くようにして、そんな風に言ってくるユーコ。

 

「ふむ。それなら建物の外へ出てみるとするか」

 そう言いながら外へと向かうロディを追い、クレリテとリリアも外へと向かう。

 

 視線をそちらへと向けつつクレアボヤンスで外を見てみると、ユーコが言う通り、廃工場を思わせるような朽ちた建物が立ち並んでおり、それらの建物を繋ぐ錆だらけの通路があった。

 

 かなり朽ち果ててはいるが、それでも万単位の年月が経過している割には原型を留めている。

 これも『最小限の保全機能』とやらが働いている影響なのだろうか?

 などと思いながら、俺もまたロゼやマーシャと共に建物の外へと出る。

 

「あれは……街? 下に街が見えるわね」

 そう言いながら通路から下を覗く灯に対し、

「どうやら、ここは中間よりやや下あたり……といった感じみたいですね」

 と、上と下を交互に見て告げるユーコ。

 

 たしかに俺たちがいるこの場所の下に街が広がっており、更に上にも街が広がっていた。

 さっき見えたビル群は『上の街』の一部だったようだ。

 

「ん。上側にある街……うん、ソウヤの言ってた通り、上下が反転している。うん」

 ロゼがそんな風に言う。

 そう……。上の街は道を走る車と同じく、全て上下が逆さまだった。

 天井からぶら下がっているように見えたビルは、全て天井側に入口があり、俺たちがいる方に向かって伸びている感じだったのだ。

 

「これはつまり……上の街は重力が上に向かって働いていて、下の街やこの辺りは重力が下に向かって働いている……という事か?」

 ロディが顎に手を当てて考えながらそう推測を口にする。

 そして、その推測はおそらく正しい。

 

「コロニーとしてはある意味、正当な感じがしますね」

「そうだな。ただ、グラスティアと違って『中』である事を隠す気が全くないようだが」

 ユーコに対して俺が頷きながらそう返事をすると、

「というより、グラスティアと比べて天井が圧倒的に低いわよね」

 と、そんな風に言ってくる灯。

 

「ああそうだな。この天井の低さだと、鬼哭界はコロニーではなく『船』である可能性もあり得るぞ」

「あ、なるほど。言われてみると宇宙移民なわけだし、船であってもおかしくはないわね」

 俺の返答に対し、灯はそう言ってウンウンと首を縦に振って見せる。

 心の中でそれに対して同意していると、

「車が走っておるだけではなく、人も少ないが歩いておるのぅ」

 とクレリテ。

 そのクレリテの見つめる先――下の街には、たしかに人影が見えた。

 

「ヒュノス族とエルラン族の姿しか見えないですわね」

「そもそもあれ、ヒュノス族やエルラン族なのかなー? 肌の色とか、大分違う気がするけどー」

「なるほど。言われてみるとたしかに薄い灰色や濃い青色、ピンクに近い赤色や濃いオレンジ色、さらには緑色……と、グラスティアではまず見かけないような肌の色ばかりですわね」

 そんな事をマーシャとリリアが言うように、歩いている人々の肌の色は、グラスティアのヒュノス族やエルラン族とは大きく異なっていた。

 もっとも、スペースオペラとかだと割と普通に出てきそうな感じだが。

 

「どういう街なのか気になるけれど、このまま行ったら目立つかしらね?」

「ん……。目立つかもしれないけど、うん、私たちと同じような肌の色の人もいるんじゃ? うん、『銀の王』なんかまさにそうだし。うん」

 灯に続くようにして、そんな推測を口にするロゼ。

 しかし、それに対してリリアは、

「――『銀の王』はグラスティアで活動する為に、敢えてああいう風に『作られている』可能性もありますわ。あの方々のような肌の色だと目立っていまいますもの」

 と、下の街を歩く人間を見ながら自信の推測を述べる。

 

「ふーむ。たしかにリリアの言う可能性は否定出来ないな」

 俺がそう呟くと、クレリテが自分の次元鞄から杖――魔煌杖を取り出し、

「なら、幻影魔法で肌の色を偽装してみるかの? 妾、ロゼ、リリアは他も偽装しておいた方が良さそうじゃがの」

 と、そんな風に言ってくる。

 

 ふむ、変装……か。

 ……そうだなどこまで通じるかは分からないが、街を見ておきたいという思いはあるし、とりあえず試してみるだけ試してみるか。

 あれこれ考えて心の中でそう呟いた後、俺は改めてそれを言葉にするのだった。

上にある街が『見える』というのは、ある意味ここが初めてだったりします。

(グラスティアは中心点までがかなりある&幻燈壁の影響で、『上側に来る大地』は見えませんからね……)


とまあそんな所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月20日(水)を予定しています!

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