第54話[表] 新たなる門、新たなる謎
<Side:Akari>
「城の地下の門や、冥界の門と完全一致って奴ね、これ」
門を見ながらそんな風に私が言うと、
「そうですね。ある意味予想通りというべきか、これもまた動作していないようですが」
と、返事をしながら門を見回すユーコ
「ここはどこに繋がる門なんだ?」
そんなもっともな疑問を蒼夜が口にすると、
「開けてみないとなんとも言えませんわね。あのゴーレム飛竜を生み出した所だとは思いますけれど」
「そうじゃな。じゃが……少なくとも冥界や混沌界の類ではないのぅ。あのふたつの異界――コロニーの技術とは明らかに違っておったからの」
なんて事をリリアとクレリテが言った。
良く分からないけれど、冥界や混沌界と呼ばれている別のコロニーの技術ではないみたいね。
もっとも、私はその辺りについて詳しいわけじゃないから、そう言われてもさっぱりだけど。
「ん。とりあえず、触れてみれば何か分かるかも? うん」
なんて事を言いながら門に手を触れるロゼ。
しかし、何も反応しない。
「冥界の門の時は、霊力反応とやらを感知してメッセージが表示されましたが、ここもそうなのでしょうか?」
と言いながら手をかざすユーコ。
すると今度は『権限データ確認……ゲストアクセス……権限レベル不足』などと表示された。
「権限レベル不足……ですか。やはり冥界のものでは駄目みたいですね」
「だが『ゲストアクセス』って表示されている事を踏まえると、権限レベルさえ高ければ、他のコロニーのゲートを動かす事も出来るっぽいな」
「あ、たしかに言われてみるとそうですね。もっとも、権限レベルをどうやったら上げられるのかが分からない以上、現時点ではどうしようもないですが……」
ユーコとロディのそんな話を聞きながら私も手をかざしてみるが、無反応だった。
というかこれ、誰も起動出来ないんじゃ……?
なんて事を思っていると、
『――ブラッドタイプ……アドミニストレーターシグナル』
唐突にそんなメッセージが表示された。……え?
「ん? マーシャに反応した?」
「うむ。そのようじゃな」
ロゼとリリアが口にした通り、門に手を触れているのは、マーシャちゃんだった。
「っ! という事は……!」
ユーコがハッとした表情でそう言った瞬間、ゴーレム飛竜の現れた通路の壁、床、天井全てが障壁に覆われた。
この感じだと、すり抜けられる壁の所も覆われていそうね……と思っていると、
「すり抜けられる壁の所も覆われているな。どうやら、完全に閉じ込められたようだ」
と言ってくる蒼夜。どうやらクレアボヤンスで確認したみたいね。
「これって、ユーコの言っていた?」
私が呟くように言いながら門へと視線を向けてみると、
『レリヴァンスファクター……チェックスタート』
というメッセージがいつの間にか表示されている。
「はい。表示こそ違いますが状況は同じ。つまり……『敵』が来ます!」
そんな風にユーコが声を大にして口にした直後、床に5つの黝い渦が出現。
そこから人間の3倍近い大きさの青い甲冑が浮かび上がるようにして、その姿を現す。
速やかに弓を構えてチャージした所で、
「ふむ……中は空っぽか。いわゆるリビングアーマーの類だな」
と、蒼夜がそんな風に言いながら融合魔法を放った。
そして、当然といえば当然だけれど、その一撃で青い甲冑はあっさりと消し飛んだ。
なんていう無造作な瞬殺っぷり……
などと思っていたら、
「ん! 渦がまた現れた!」
「もしや、あの時と同じ!?」
と、ロゼとユーコがそう言ったように、再び黝い渦が出現。
青い甲冑がその姿を現した。
無限に復活するパターンかもしれないってわけね……。それなら――
「もう一度試してみればわかる話よねっ!」
そんな風に言い放ちながら、今度は私がチャージショットを放った。
あっさりと1体――じゃないわね、もう1体巻き込んだから2体だわ――の青い甲冑が消し飛ぶ。
しかし、やはりと言うべきか倒した分の青い甲冑と同数――つまりふたつ――の黝い渦が出現。そこからまさに補充されるかの如く、青い甲冑が現れる。
その様子を見ていたロディが、
「やはりあの時と同じく、この5体を『どうにか』しないと駄目みたいだな」
と結論づけた所で、2体の青い甲冑が動き出す。
「って! マーシャを狙っていますわっ!」
「まあそうなりますよねっ!」
リリアとユーコが2体の青い甲冑をそれぞれ撃破しながら告げる。
「たしかに2体ともリリアの忠告した通り、一直線にマーシャちゃんの方へと向かう動きだったわね。でも、ユーコの時と同じように引っ張り回して貰うってわけにはいかないし……」
「ああそうだな。迎撃しながら『どうにか』するしかなさそうだ」
ロディが私に対して頷きつつ、そう言って剣をサイコキネシスで浮遊させる。
「うん、でも、今回は床に紋様とかない。うん、どうすれば?」
「今はまだわからぬ! じゃが、必ず解法があるはずじゃ! ロディの言う通り迎撃しながら探るぞい!」
「ん、了解。でも、うん、私はマーシャの防衛に専念する。うん、調べるのは任せた」
ロゼとクレリテのそんな会話を聞きながら、私は再び周囲を見回してみる。
だけど、門の周囲にはこれといって怪しいものは見当たらなかった。
う、うーん……。一体、なにをどうすればいいのかしら……
思ったよりも長くなったものの、途中で区切りづらかったので、一気に進めてしまいました。
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月8日(金)を予定しています!




