第52話[表] 別の道と魔物
<Side:Akari>
「ん、ところでなんとなく冥界に来たけど、うん、この後どうする? 冥界をこのまま探索する? うん」
「そうじゃなぁ……。一度、戻るのがよいのではないかの? 来ようと思えば、いつでも来られるようになったわけじゃし、無理にこのまま探索する必要はないじゃろう。……というより、何の情報も準備もなしに探索出来るような場所でもないしのぅ」
ロゼの問いかけに対し、クレリテが窓から外を眺めながらそんな風に言う。
まあたしかに、このまま探索するってのはちょっと無茶な気がするわね。
それに……
「他の異界――コロニーに繋がる門とかもありそうだし、こっちよりも裏位相の方を、もう少し探索した方が良い気がするわね」
と、私。
「そうですわね。もし、鬼哭界へと続く門を発見する事が出来て、なおかつそれを開く事が出来たりした日には、『銀の王』に対する『一手』が得られますものね」
腕を組んで門へと顔を向けつつ、そう同意するリリアに対して、蒼夜が肩をすくめながら返事をする。
「ま、そうそう都合良くはいかないだろうが、ここは『竜の御旗』も狙っている場所なわけだし、しっかりと調べ尽くしておけば、奴らの先手を取る事も可能になるのは間違いないな」
「それじゃあ、戻ろー」
というマーシャちゃんの声に私たちは頷き、再び門をくぐって裏位相へと戻る。
――そして、そのまま隠し通路の入口まで戻ってきた。
「さて、ここまで戻ってきたが……今度は本来のルートを進んで行く感じでいいんだよな?」
「そうですね。ちょっとすり抜けてみましたが、それしか道もなさそうです」
ロディとユーコがそんな事を口にした通り、隠されていない方の通路へと歩を進める私たち。
しばらく進むと、今度は階段が上と下、双方に伸びている場所に突き当たった。
「……これって、上と下、どっちへ行くのが正解なのかしら?」
「ううーん……何とも言えないですわね。そもそも、どちらも正解な気がしますわ」
私の問いかけに対してリリアがそう返してきた所で、ユーコが正面の壁から顔を出し、
「正面の壁をすり抜けてみたら、上は再び神殿のような建物が見えて、下はさっきの門があった建物と同じような建物が見えましたね」
なんて事を言ってきた。
「ん? この階段を降りていくと、うん、その建物の場所に行ける感じ?」
「おそらく行けると思います。この階段の先は塔を逆さまにしたような感じになっていて、そこからその建物へ繋がる渡り廊下みたいなのがありましたし」
小首を傾げながら問いかけるロゼに、ユーコがそんな風に答える。
「ふぅむ。それなら下へ行ってみるのが良さそうじゃのぅ。またどこかの異界へ繋がっている門があるかもしれぬしの」
というクレリテの発言に対し、私たちは特に異論もなかったので、早速、下へ行ってみる事にした。
しかし、階段を降りきった所は小部屋になっており、行き止まりだった。
……って、そんなわけないわよね。
「これ、また隠し通路があってそこから先に進めるってオチよね、間違いなく」
と、そんな風に私が口にすると、
「その通り、正解だ。ここの壁がすり抜けられる」
なんて事を言いながら壁に手を突っ込んでみせる蒼夜。
見つけるの早いわねぇ……。まあ、クレアボヤンスを使ったんだと思うけど。
などと思いつつ、私はその隠し通路へと足を向ける。
「それにしても、ガーディアン的なのが全く現れないな……。まあ、現れない方が楽でいいが」
通路を進みながら、ロディがそんな事を言ってくる。
言われてみるとたしかに全然出てこないわね。
「隠し通路の先には配置されていないのかもしれませんわね」
「そうだな。こっちは『試練の場』ではなく、『各コロニーを繋ぐ道』として使われていた所だと考えると、配置されていなくてもおかしくはないな」
リリアに対して蒼夜がそんな風に返事をした所で、ユーコが見たという渡り廊下っぽい通路と、冥界への門があった建物にそっくりの外観をした建物が見えてきた。
「たしかに門がありそうな雰囲気がするねー、あそこ」
「でもこの渡り廊下、妙に横幅が広くて嫌な予感がするんだけれど……」
マーシャちゃんの発言に続く形で、そう口にする私。
「そうですね……。なにかボス的なものが現れそうな雰囲気しかしませんね」
「うん、たしかに。だけど、うん、このまま進む以外に道はない」
ロゼがユーコに対して頷き、そんな風に答えながらそのまま前進。
と、案の定というべきか、ブォォンという低い音が響き渡り、白い石で作られた4つの翼を持つワイバーン……と表現するのが適切そうな奇妙な『魔物』が5体、一気にその姿を現した。
冥界滞在時間が短すぎる気がしますが、まあ現時点では何もないもので……
といった所でまた次回! さて、次の更新ですが……前回記載した通り、月末月初の諸々の都合により、平時よりも1日多く間が空きまして……9月1日(金)を予定しています。




