第49話[表] 2億年前の存在
<Side:Akari>
「――というわけなんですよ」
「カローア……ねぇ。言われてみると、たしかになんだか若干聞き覚えがあるというか、『良く知っている名前』のような気が、こう……心の底から湧き上がってくる感じがあるわね」
ユーコの話を聞き終えた私は、顎に手を当てて考え込みながらそう口にする。
そして、
「というか、攻撃が全て分かるとか何気にチート級よね」
と、そんな風に言葉を続け、肩をすくめてみせた。
「まあそうですね。もっとも『カローアだから分かった』という感じですが」
「魂の記憶……とやらか。俺にはそう言われてもサッパリだが、蒼夜たちなら何か分かるだろうな」
ユーコに対してロディがそう言いながら腕を組む。
「そうね。ここに供給されるはずのエネルギーも、あそこからどうにか出来る可能性もあるし、偵察――というには随分色々やりすぎた気がするけど――ともあれ、一度あそこまで戻ってみるのが良さそうね」
私がそんな風に言うと、ユーコとロディが同意するように首を縦に振ってみせた。
◆
<Side:Akari>
――そんなわけで、蒼夜たちの元へと戻った私たちがこの先について話をすると、
「カローアにヴィストリィ家……か。冥将カローア=ヴィストリィというのは、ヴィストリィ家の者かなにかだった……のか?」
と、蒼夜がそんな風に呟くように言った。
「ん。ユーコとアカリは、うん、カローア=ヴィストリィとアルチェムの魂が融合した存在。うん、だからその記憶があっても別におかしくはない? うん」
首を傾げながらそう口にするロゼに対し、
「ま、たしかにそうですわね。しかし、ヴィストリィ家というのは私も聞き覚えがありませんわね。ただ、冥界と呼ばれているあのコロニーが今のような状態へ変わってしまう前の時代……と言っても、今から約2億年も前ですけれど、その頃、あそこは7つの『王国』が存在していて、そのひとつが『ヴィストリィ王国』なる名前だったという話は、以前『異界解放同盟』の者から聞きましたわね」
なんて事を頷きながら言うリリア。
「2億年前って……。また随分と大昔ねぇ」
「――例の地下神殿遺跡で見つけた『プラネタリウム』は、2億年前の代物だったから、大体同じくらいの時代だな」
肩をすくめる私に続くようにして、蒼夜がそんな風に言ってくる。
あー……そう言えば昨日、大工房でそんな話をしていたわねぇ。
「しかし、そうなると……じゃ、ここはその頃はまだ普通に『通路』として使われていたという事になるのぅ」
「だねー。リリアの推測通りって事になるねー」
クレリテとマーシャちゃんがそんな風に言うと、
「だとすると、こいつを動かせば、あのコロニーへいつでも行く事が出来る様になる……という事だな」
と呟くように言いつつ、周囲の機械を見回す蒼夜。
「そうですわね。エネルギー供給が寸断されているのは、ここが原因だというのは分かりましたわ。あと、どうすれば動くかも」
「え? どうすれば動くのか分かっているんですか?」
リリアの発言に驚きの表情を見せながらそう問いかけるユーコ。
というか、私も驚きだわ。
「ええ。貴方たちが奥に行っている間にバッチリ解析して、判明済みですわ」
「だが、判明しているのにまだやっていないという事は、何か問題があった……という事か?」
リリアに対し、腕を組みながらそんな問いの言葉を口にするロディ。
「あ、たしかにそうね……」
と私がロディに続くと、
「その通りですわ。ちょっとばかし厄介な感じなんですのよ……」
なんて事をため息混じりに返してくるリリア。
……ちょっとばかし厄介って、どういう事なのかしら……?
よくやくというかなんというか、『2億年前の代物』の伏線回収を始められる所まで辿り着きました……
ここに来るまで、随分とかかった気がします……
とまあ、そんな所でまた次回! 次の更新も申し訳ありませんが、諸々の都合で平時よりも1日多く間が空きまして……8月22日(火)を予定しています。




