第48話[表] ハイバネーションとリブート
カローアを倒せたのかどうか、完全にカローアのその姿が消え去ってもなお、半信半疑だったのですが、しばらく待っても復活してきたりするような事はなかったので、私は『倒したと考えて間違いない』と判断しました。
……ですが、カローアを倒したのに何も変化がありませんね……? 障壁も出現したままですし……。ここから更になにかしないと駄目なんでしょうか?
そんな事を考えながら、もしかして門に何らかの変化が生じているのではないかと思い、門の方へと歩み寄ってみます。
すると、門そのものに変化はなかったものの、門に手を触れた時に文字が浮かび上がってきたその場所に、いつの間にか『判定終了。ヴィストリィの血統と判断。再度、アストラルパターンの認証を行ってください』などという新しい文字が出現していました。
判定終了……ですか。
どうやら今の戦闘で判定されていたようですが、一体あの戦闘で何をどう判断して判定したというのでしょうね?
『倒す』という判断基準では、『ヴィストリィの血統』ではない者も血統を持つ者であると判定してしまう可能性が普通にありますし。
まあもっとも、判定が終了した以上、考えても仕方のない話ではあるのですが……
なんて事を考えながら、表示されている通りに門に触れてみる私。
『アストラルパターンの認証』とやらは、おそらくこれでいいはずです。
触れたまましばらく待ってみると、『アストラルパターン、データベース登録完了。アクセス権限、一部開放』などという文字が追加されるように浮かび上がってきました。
そして、それと同時にこの広間全体を覆っていた障壁が消え去ります。
アクセス権限の一部開放……ですか。
何かにアクセスする事が出来るようになったみたいですが、どこからどうアクセスすればいいのでしょうね? 試そうにも、そこが良く分かりませんが……
と、そこで、そもそも判定の為にカローアと戦う事になったのは、門に触れたからだという事を思い出した私は、アクセスとやらも門に触れれば良いのではないかと考え、門へと手をのばしてみます。
すると、『コネクトゲート・リンク……ハイバネーション』という文字が浮かんで来ました。
そして更にそれに続くようにして、その下に『リブート』と『キャンセル』という文字が、左右に少し離れた形で並んで浮かび上がってきます。
……これ、文字の所に触れて『選択』するとかなんでしょうかね……?
それと、その上の表示は門の状態を現していると考えて良さそうですね。
ハイバネーション……。たしか、直前の状況を維持したまま動作を停止させる、いわゆる『休止状態』を示すものだったような気がしますが……
……そう言えば、この空間に入る時に使った門も、この空間内の各種装置も、全てすぐに動作する状態でしたね。
もしや、この門も『リブート』すれば、すぐに再度どこかへ……いえ、冥界と呼ばれるコロニーとの接続が復活するのでしょうか?
私はそう考えつつ、『リブート』の文字へと手を近づけます。
すると、浮かんでいる文字が、
『要求を確認。……実行』
という、一文のみへと変化します。
しかし、程なくして、
『……エラー! リブートに失敗しました。リブートに必要なエネルギーが不足しています。エネルギーの供給状態を確認してください』
などという文字が表示されました。
ま、まさかのエネルギー不足ですかっ!
……あ、いえ、先程転送されてきた場所……。あそこにあった機械がどれも動作していなかった事を考えると、特におかしな話ではない気もしますね。
……なんにせよ、ここに居ても状況が改善するわけでもないですし、ここは一度引き返すのが良さそうです。
そう考え、建物の外へ出た所で、「あ、ユーコ!」という私を呼ぶ灯の声が聞こえてきました。
その声の方へと顔を向けると、そこにはある意味予想通りと言うべきか、灯とロデリックさんの姿がそこにはありました。
何故ここへ? と思っていると、
「ブロックの動きが完全に停止したから様子を見に来たんだが……まさか、こんな遠くまで繋がっているとはな……」
と、そんな風に言ってくるロデリックさん。
なるほど……そういう事ですか。
「それで、その建物は一体なんだったの?」
灯がそんな風に言いながら、私と私の出てきた建物を交互に見ます。
それに対して私は、
「あ、はい。実はですね――」
と切り出し、カローアの事も含めて、ふたりに説明し始めました――
思ったよりも長くなってしまいましたが、どうにか灯やロデリックと合流する所までは入れる事が出来ました……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は、お盆前後の諸々の都合により誠に申し訳ありませんが、再び平時よりも1日多く間が空きまして、8月18日(金)を予定しています。




