第47話[表] ヒットアンドアウェイ
<Side:Yuko>
まあ……敵の攻撃を良く見て隙を突いて攻撃を仕掛け、ある程度叩き込んだらすぐに離脱……という、死にゲーで灯が良くやっていたヒットアンドアウェイで攻めるしかないですかね。幸いにも、相手の攻撃は大体把握していますし。
「ルゥゥゥゥォォォォォオオオォォンンッッ!!」
再び唄うような声と共に全ての翼をこちらへと向けてくるカローア。
これは……直線の……
私はそこまで思考した所で、即座に横へスライドするように大きく移動します。
と、その直後、先程まで私が居た場所を完全に飲み込む程の横幅と、天井まで到達する程の高さを持つ赤黒い『波』が、私の横をギリギリ掠めていきました。
ふぅ……。まともに食らっていたら、アストラルのこの身体でもかなりの大ダメージを受ける上に、荷重効果で動きを鈍らされてしまっていた所だっただけに、回避出来て良かったというものです。
こういうダメージだけではなく、デバフまで有しているような代物は、ちょっと当たるだけでも厄介極まりないですからね……
そんな事を考えたのとほぼ同時に、触手の如き髪の毛を床に突き刺すカローア。
なるほど……。今ので私を倒せるなどとは思っていなかったというわけですか。
そして、この攻撃は追尾型の……と、私はそう思考しつつ一気にその場から移動。カローアを中心に弧を描くようにして、大回りでジグザグの軌道を描きながらカローアの側面へと回り込んでいきます。
そんな私を追うように、次々に床から槍のように鋭く尖った黒い影が飛び出してきますが、ジグザグに動き続けている私に当てるのは難しいというもので、一発も当たる事なく、カローアの側面へと接近する事に成功。即座に連続で攻撃を叩き込み、そしてすぐにその場から離脱します。
もう少しいけそう……などと思っていると、攻撃をまともに食らう事になるというものですからね。一気に踏み込み一気に離脱。ただそれあるのみです。
直後、先程床から連続で飛び出してきた黒い影が、今度はカローア自身を守るように、カローアの周囲に一斉に出現します。
更に飛び出してきた黒い影を起点に、外側へ向かって床をまっすぐに這う赤黒い色の波――衝撃波が黒い影の数だけ発生しました。
しかし、私は既にカローアから距離を取っていたので、少しだけ横へ動き、黒い影と黒い影の間に入るような位置に移動します。
黒い影を起点に幾重にも衝撃波が放たれるというものである以上、距離が離れれば離れる程、衝撃波と衝撃波の間は広くなるというもので、衝撃波は掠る事すらなく私の左右を通り過ぎていきます。
私はそれを横目で確認しつつ、再接近と共に連続で攻撃を叩き込みます。
そんな攻防を何度も何度も繰り返していく私とカローア。
カローアは自身の攻撃がひとつも当たらない事に焦ったのか苛立っているのか、それとも私の攻撃で弱っているのか、その黒い身体からは掴みづらく良く分かりませんが、徐々に動きが荒くなっていきました。
大雑把かつ大ぶりの攻撃を回避した私はそのまま踏み込み、連続で斬りつけます。
普通ならここで後退するのですが、カローアの動きからこのまま押しきれそうだと判断。
そのまま更に斬りつけつつ真横へ移動。
私に向けて叩きつけるように振るってきた翼を回避し、その翼に一撃。いえ、二撃。
更に上昇しながら翼を引き裂くように斬り上げます。
「ヲヲヲヲヲ……ッ!」
昏い底冷えのするような、しかし勢いのない咆哮と共に触手の如き髪の毛を振るいます。
狙いをまったく定めていないデタラメすぎる振り回しというのは逆に回避しづらいものの、私は迫ってくる髪の毛を切り払い、再度伸びる前に移動する事で対処しつつ、更に連続で斬りかかります。
と、次の瞬間、
「ルロロロロロロンンンンンッッッ……!!」
という今までよりも大きな咆哮が発生られたかと思うと、仰け反った状態で硬直。
そのまま足元の方から、まるで崩れ落ちるかのように、ボタボタと黒い塊が落下し始め、その姿が消滅し始めました。
え、ええっと……。これは倒した……という事で良いのでしょうか?
なんだか唐突すぎて、倒した感みたいなのがあまりないのですが……
平時の更新時間よりも若干遅くなりました……
カローア戦、もう少し長かったのですが、ユーコは攻撃を完全に把握しているので、特にピンチになったりする事もないというのもありますし、今後の伏線的なものになる描写は既にほぼ終わっていましたし、カットしても問題ないというか、カットした方がテンポが悪くならずに済むと思いまして、あまり長くなっても仕方がないと判断して大きくカットしました。
(若干、その痕跡みたいなものが見えてしまっているのが難点ですが……)
ともあれ、そんなこんなでまた次回!
次の更新ですが、お盆の諸々の都合の為、申し訳ありませんが再び平時よりも1日多く間が空きまして、8月14日(月)の更新を予定しています。
(その次の更新も、また1日多く間が空いてしまうかもしれません……)




