第46話[表] ユーコVSカローア
<Side:Yuko>
「ルゥウウゥゥゥウウウッッ!!」
カローアが唄うような声を発する。
と同時に、長い髪が触手の如く更に伸び、私へと迫ってきます。
切っても無駄な事は分かっているので、カローアを視界に入れたまま、横へスライドするように移動して、それを回避していきます。
そして、「《玄キ徹甲ノ連魔弾》!」と言い放ち、漆黒の魔弾を連射し始めました。
……なんでしょうね? なんというか、ボスをロックオンした状態で横移動しながらショットを撃ちまくっているような、そんな感覚がありますね、これ。
なんて事を思いつつ魔弾をカローアに向かって乱射する私。
当たってはいるものの、あまり手応えがないような……?
影っぽいせいですかね? それとも属性の相性……でしょうか?
疑似融合魔法という性質上、複合属性なので相性が悪いという状況にはなりづらいのですが、それでも『複合になっている属性全てに対して強い』とかだと、威力が下がってしまいますからね。
まあ、普通は疑似融合魔法クラスになると、魔獣程度の属性力であれば、相性が悪かろうと無視出来るのですが、そこは魔王クラス……というべきですかね。
……魔王クラス? 何故、私は今、そんな事を……?
唐突に湧いてきた疑問でしたが、カローアが翼を大きく広げたのを見て、思考を中断。私は一気にカローアに向かって接近します。
直後、右側の3つの翼が横薙ぎに払うかのように動き、私の後方――先程までいた位置に赤黒い衝撃波『3つの爪で引っ掻いたかのような形状』で奔りました。
次は……と、そこまで考えた時点で既に私は急停止していました。
今度は左側の3つの翼が同じように動き、私の前方――私とカローアとの間を同じ衝撃波が奔ります。
つまり、ここが安置――この攻撃を食らわない場所――という事です。
何故、こんな隙間が生じるのかというと、カローアの翼の大きさと骨格にあったりします。
実は右と左で僅かに大きさが違うんですよね。
その影響なのか、骨格も少し違っていて、それがこのような『攻撃範囲の差』を生み出すんです。
……まあ、どうしてそんな事を知っているのかは私自身、謎ですが……
そんな事を誰にともなく心の中で呟いた私は、衝撃波の脅威が去ったのを確認すると、即座にカローアの懐へと踏み込み、アストラルエッジを4連続で叩き込みます。
擬音で表現するなら、ザンザン! ドスズバッ! ですかね? ……と、ともかく、連続で撫で斬りにした後、突き刺してそこから真上に上昇しながら斬り上げる、という動きです。
「ロロロロロロロロロロロロロロロロロォォッ!」
そんな奇怪な苦悶の咆哮と共に、カローアの身体から、アストラルエッジの軌道に合わせて薄緑色の『傷』が生じ、更にそこから黒い粒子が大量に噴き出します。
この感じ……明らかに融合魔法よりも効いていますね。
ならば、このままアストラルエッジを主とした接近戦に切り替えるのが良さそうですが……カローアと近接状態で交戦し続けるのは少々骨が折れるんですよね……。まあ、私に骨はないですけど。
私がそんな事を思考し、心の中でやれやれとため息をついたのとほぼ同時に、触手の如き髪が一斉に私を突き刺そうと襲いかかってきました。
更にカローア自身がグルリと一回転。凄まじい赤黒い羽根の竜巻が発生します。
さすがにその場に留まるのは不可能な為、一気に後退する私。
……やはりというかなんというか、カローアは近接攻撃の方が手数が多いですね……
近接状態を維持するとなると、あの猛攻をどうにかしなければなりません。
ううーん……。どのように攻撃を仕掛けていくべきか悩みますね……
どうにかして、カローアにアストラルエッジを連続で叩き込んでいきたい所ですが……
今回は、カローアとの戦闘が思ったよりも進まなかったです……
とまあそんな所でまた次回! 次の更新はお盆前にやらないといけない事が多い関係で、申し訳ありませんが、平時よりも1日多く間が空きまして、8月10日(木)を予定しています。




