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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第1話 雨のルクストリアと窓の外

4日ぶりの更新です……

第2章のスタートです!

「アルベルトさんが勧めるだけあって、たしかにおいしいお店でしたね」

 アルベルトの勧めた店から出るなり、エミリエルが傘を広げながら、満足気な表情でそう言った。ちなみに、俺とエミリエルの傘は駅で買ったものだ。

 

「だろ? なにしろ『月刊・空駆けるグルメ紀行』に掲載される程だからな。身内びいきだかもしれんが、俺の弟は俺と違って料理の天才だからな!」

 胸を張ってそんな事を言うアルベルト。

 

 そう、アルベルトにつれて来られた料理店『アズマ』は、アルベルトの弟であるフリッツさんが経営する店だったのだ。

 そして、心の中でも名称にさんづけしてしまうくらい、うまかった。さすがは例の雑誌に載るだけはある。

 なにより、アズマという名称どおり日本の料理そっくりなものがメインだったのが実に素晴らしい。米を食ったのは約1週間ぶりだ。

 もちろん、フリッツさんが日本人の転生者だとかそんな事はなく、単にアカツキ皇国の料理なのだが、元々アカツキ皇国が日本に近い――といっても、行った事などないので推測だが――からなのか、俺からすると日本の料理と大差はないように感じた。

 まあ、使われている食材の都合で少し違う所はあったけど、そこは別の世界である以上、仕方あるまい。とりあえず米……それも日本と同じタイプの物が普通にあっただけよしとしよう。

 

「料理が馴染みの物ばかりな上、どれもうまかったので、こっちで向こうの料理が食べたくなった時に、いつでも食べられる店があるというのは最高ですね」

 と、俺もエミリエル同様、満足気にそう言う。


「おう、アカツキ皇国の人間が食ってもうまいって思えるなら良かったぜ。フリッツの奴は常々、しっかりアカツキの味が維持出来ているのか気にしていたからな」

 そう言って笑うアルベルト

 

「ええ、完璧以上の再現度ですね。いい店を紹介してもらってありがとうございます。……しかし、フリッツさんはどこでアカツキの料理を?」

「ああ、フリッツの奴は、以前は酒場のマスターをやっていたんだが、客として来たアカツキ皇国と料理の話になって、話の流れでその人間が作った料理を食べたんだとさ。で、その料理があまりにも衝撃的で感動したらしくてな。その人から色々教わったんだとさ。で、それまでの酒場を辞めて、アカツキ料理の店に鞍替えしたってわけだ」

 俺の問いかけにそう答え、「いきなり何を言っているんだって感じだったがな」と苦笑した。どうやら、酒場も酒場でかなり儲かっていたらしい。

 

 まあ、たしかに儲かっていた酒場を辞めて、いきなり料理屋――しかも異国の――を始めるとか言われたら、何を言っているんだと思わなくもない。

 だが、そのお陰で俺はこうしてうまい飯が食える店を得たので、フリッツさんのその判断はグッジョブだったと言いたい。

 

「――さて、お前さんたちはこの後、討獣士ギルド本部へ行くんだろ? 俺が行く治安維持省はこっちだから、またな」

 そう言って治安維持省があるらしい方向を指さすアルベルト。

 

 どうやら、真逆の位置にあるらしい。

 そんなわけで、俺とエミリエルはアルベルトに再度礼を述べ、その場で別れると、討獣士ギルド本部に向かって歩き出す。

 

「本部ってどんな所なんだ?」

「討獣士の皆さんにとっては、基本的には支部と変わりませんね。ただ、支部に比べてかつての冒険者ギルド色が強いかもしれませんね」

「というと?」

「支部ですと害獣駆除や時たま出る魔獣討伐がメインで、依頼の対象範囲もその街の周辺に限られていますが、本部ですと、害獣や魔獣の生息範囲調査といった依頼もあったりしますし、別の国や別の大陸にまで及ぶような大規模な依頼などもあるんですよ。あと、単純に何かを取ってきて欲しい、護衛して欲しい、みたいなまさに冒険者ギルド時代っぽい依頼もありますね」

 俺の問いかけにそう答え、補足するように、支部ではまず見かけないお偉いさんからの依頼なんかもあると言うエミリエル。

 

 なるほど……それはそれで面白そうだな。

 それに、それだけ多岐に渡る依頼があるのなら、討獣士も多いだろうし、情報収集にももってこいだ。

 あと、日本の――日本風の飯が食いやすいってのもある。

 うーむ……これは、しばらくの間ルクストリアを拠点とするのが良さそうだぞ。

 

 ――そんな事を話ながら歩いていると、線路の敷かれた道へと出た。

 目の前には停留所の様な場所があり、数人がそこに並んでいる。


「あと数分でトラムが来るみたいですね。雨が降っていますし、歩きだと面倒ですので、本部までトラムを使いましょうか」

 時刻表を見ながらそう言って、停留所に並ぶエミリエル。

 

 エミリエルに続いて停留所に並びつつ、トラムについて話を聞くと、ルクストリア内を走る小型の鉄道で、都市間を繋ぐものに比べて速度は遅いが、歩きに比べて段違いに速く移動できる上に、料金は一律で100リムと格安なので、市民に良く利用されているとの事だった。

 地球にも似たような物がある街が存在した気がするな。まあ、俺の住んでいた所にはなかったし、そういう街に行った事もないから良くは知らないけど。

 

 そんなこんなで話をしていると、時刻表どおりにトラムがやって来た。

 良く利用されているというだけはあり、15分置きに走っている――朝のみ10分置きに走っている――上、時間も正確だな。

 

 停留所に止まった一両編成のトラムに乗り込むと、満員という程ではないが結構な数の人が乗っており、席は空いていなかったので、立っておく。

 そんな立ち乗りの乗客向けに、丸い輪っかの付いた吊り革があるあたりは、なんとも日本っぽい。

 

 なんて事を考えている内にトラムが動き出す。

 ルクストリアに使う時に乗った鉄道に比べて、たしかに速度はないが、窓の外に見えるレビバイクと並走しているため、あれと同じくらいの速度は出ているようだ。

 

 しばし、吊り革に掴まりながら窓の外を眺めていると、明らかに古そうな建物が並ぶ一画が見えてきた。エミリエルが言うには、このルクストリアが作られた当初からある地区らしい。

 老朽化ゆえに誰も使わなくなり、廃墟同然と化した建物が多いのだとか。……建て直したりしないんだろうか?


 ……うん?

 

 視界に、ふとシャルロッテらしき人影が裏路地へと入っていく姿が映った。……この雨の中、傘もささずに何をしているんだ?

 なんとなく気になってクレアボヤンスを使うが、建物が邪魔で良く見えない。

 そのまま透視を試みてみるが、手前の廃墟らしい建物の壁を透過した所が限界で、シャルロッテらしき人影の所まで透過させるのは無理だった。壁2つはさすがに厳しいか……

 

 ……って、誰かいるな。

 透過された廃墟の中には人影があった。

 俺はクレアボヤンスを使い、その人影へと視界を近づける。

 と、その人影はピエロみたいな格好をした二人組だった。


 ピエロみたいな格好をした誰がどう見ても怪しいそいつらは、どうも外の様子を伺っているように見えた。……いや、違うな。これは外と言うより――

 

 俺はクレアボヤンスを解除すると、

「エミリエル、悪いけど寄り道だ。次で降りる」

 そう告げた。

 

「え? 降りるのは構いませんが……なにか見えたのですか? ずっと窓の外を凝視していましたけど……」

 窓の外に視線を向けながら問いかけてくるエミリエル。

 

「ああ、例の――シャルロッテらしき人影が見えたんだ」

「あ、なるほど。もし本人でしたら、挨拶をしにいかないと駄目ですね」

 俺の言葉に対してエミリエルは頷き、そう言ってくる。


 もしかしたら、ちょっとばかり物騒な事になるかもしれないが、エミリエルなら大丈夫だろう、多分。

現在、第2話を準備中です……

明後日を予定しています!

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