第41話[表] 神殿と門と道
「よもや、このタイミングで隠し通路が出てくるとはのぅ」
クレリテが私と同じ事を思ったらしく、そんな事を呟いた。
そして、その呟きを聞いた蒼夜が、
「このまま通路を進むよりも、そっちを先に調べて置きたい所だな。最深部へのショートカットになっているかもしれないしな」
と、顎に手を当てながらそう口にする。
「というかこれ、私が敢えてすり抜けなくても、普通にすり抜けられる壁ですね」
なんて事をユーコが言ってきたので、私はユーコの方へと歩み寄り、その壁に手を突き出してみる。
すると、ユーコの言う通り、あっさりと手は壁の中に吸い込まれた。
「あ、本当だわ。遺跡とかで見かけるのと同じタイプの隠し通路ね、これ」
そんな風に私が告げると、
「ふーむ……。これ自体は、『竜の座』のデータベースに記録されている『技術』のひとつだからな。古今東西、色々な所で――それこそ、アルミューズ城とかにも存在している代物ではあるが……」
と言ってくる蒼夜。
なんだか歯切れが悪いような……? と思っていると、
「――この空間へと繋がっておる門……裏位相コネクトゲートじゃが、あれは1億年以上前に作られた代物であるという事が、これまでの調査で判明しておる。そして……その当時の遺跡には、この類の隠し通路は存在が確認されておらん」
なんて事をクレリテが言ってきた。
「つまり……『この技術』が生み出されるよりも前に作られた場所なのに、『後の時代』の技術が使われている……と?」
そうロディの問いの言葉を投げかけると、クレリテは腕を組みながら、
「ま、そういう事になるのぅ。もっとも……ここはこれまでと違って、冥界や古代アウリアの雰囲気が漂っておる上、あの広間からの転移でしか来られないような場所じゃ。もしかしたら、ここら辺とあの転移装置は、後の時代に作られた――建て増しされた場所なのやもしれぬな」
と、そんな風に返事をして周囲を見回した。
「なるほど……最初は存在していなくて、後から拡張されたエリア……という可能性もあるってわけね。たしかにそう言われると納得出来る話ではあるわね。でも……そうなると、あの門は過去にも開いていた事になるわね」
「そうだな。まあ、作られたのが1億年以上前ってだけで、今のように閉じられた状態になったのは、もっとずっと後の時代だとしても、別におかしくはないけどな。っていうか、門まで参道のようなものが整備されているのにも関わらず、肝心のその門から先へは進めない……というのは、ここが神殿であった事が判明した今、不自然な話だし」
私の言葉に頷きつつ、そう言って肩をすくめる蒼夜。
「ふーむ、たしかにそうだな……。神殿まで続く参道であるのなら、その神殿が見える状態になっていないと……つまり、あの門が開いた状態になっていないとおかしいな」
ロディが蒼夜の発言に納得顔で、そんな風に言ってくる。
それに対して、私もまた納得しつつ言葉を紡ぐ。
「あー、なるほど、そう言われてみるとそうね。というか……通路の途中で襲ってきた敵も、ここを守る為に配置されていたというよりは、訪れた人間がそれを倒して進める力量があるかどうかを推し量るかのような感じではあったわね。一番最初に出てきたのが一番弱くて、徐々に強くなっていくような感覚もあったし」
「まあ、ほとんど一撃で消し飛ばしてきたので、あくまでもそういう雰囲気があった……っていう程度ですけれどね」
私の発言に続くようにして、ユーコがそんな補足を口にする。
と、そこで、
「――ここは元々、世界……いえ、このコロニーと他のコロニーとを繋ぐ『通路』のようなものだったのやもしれませんわね? そしてそれが、何らかの理由でどことも繋がっていない閉塞された空間になってしまった後――それよりも後の時代の人間が神殿……いえ、一種の試練の場へと作り替えた……とか、そういう歴史、流れであったとも考えられますわ。無論、それを裏付け出来そうなモノを発見出来ていない現時点では、あくまでも憶測の域を出ない話ではありますけれど」
なんていう声が聞こえてくる。
この声は……と思いながら声のした方へ顔を向けてみると、案の定と言うべきか、そこには女神ディアーナによって再び開かれたテレポータルと、そこから出てくるリリアの姿があった。
リリア登場までの会話が思ったよりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました。
本来なら所々諸々の都合で平時よりも更新間隔が開く形だったのですが、途中で区切った為、少しだけ余裕が出来た為、次の更新は平時通りの間隔でいけそうです。
といった所でまた次回! 次の更新は上に記載しました通り、平時通りの間隔となりまして……7月23日(日)を予定しています!(……ただ、状況によっては、平時よりも少し更新する時間が遅くなる可能性もあります……)




