第37話[表] 浮遊甲冑と紋様
<Side:Akari>
「――というわけで、ユーコがアレな事になっているんだけど、そろそろ何か分かったかしら?」
「何が『というわけ』なのか『アレな事』とは一体なんなのかとか、突っ込みたい所じゃが、大体把握しておるゆえそこは敢えて問わぬわい」
私の問いかけにそう返してくるクレリテ。
問わぬと言いつつ、既にそれは問いかけてきているのと同じなのでは? と、思わなくもないけれど、話が進まなくなりそうなので何も言わないでおく。
「結論から言うとじゃな、倒した時に青い光の波紋が広がるじゃろ? あれは『スキャン』なのじゃ」
「スキャン? つまりー、あの甲冑が倒された時に何かを調べてる……って事ー?」
クレリテの発言に対し、小首を傾げながら問うマーシャちゃん。
「うむ。お主らが何度も発動させてくれたお陰で判明したのじゃが、どうやら『倒された時の位置』をスキャンしておるようじゃな」
「倒された時の位置……。という事は……どこか、決められた場所で倒さないと駄目って事か?」
そんな風に問い返す蒼夜に、クレリテは頷いてみせる。
「まあ、そういう事になるのぅ」
「でも、どこで? 最初に居た場所……じゃないわよね? そこだったら、私が最初に倒した時に何らかの反応があっただろうし」
「そうじゃな。……良く見てみると分かるのじゃが、この部屋には色々な紋様があちこちに描かれておる。そして、それらは全て異なった形状じゃ」
クレリテにそう言われた私は、部屋の中を見回してみる。
すると、たしかにそこら中に描かれている紋様は、どれもこれも違う形状で、同じ物はひとつもなさそうな感じだった。
「あ、なるほど……たしかに」
「ゆえに、これらの紋様の『どれか』じゃとは思うのじゃが……」
「……試していくしかないってわけか」
クレリテの返答に対し、ロディがそう返しつつ肩をすくめてみせた。
そして私はというと、そのロディの言葉に続く形で、ユーコの方を向き、
「――というわけで、ユーコ! そいつらを紋様の上に誘導して!」
と、声を大にして呼びかけた。
……こんな事をしても、一向にこっちに向かって来ないあたり、やっぱりヘイトの類で攻撃対象を決めている気がするわ……アレ。
「ど、どの紋様ですかーっ!? というわけでと言われても、回避に集中してたので分からないんですがーっ!」
「謎! とりあえず近いのからよろしく!」
「それ、当たりを引くまでずっと誘導しろって事ですよねっ!? なかなかキツいんですけどっ!? うひぃ!」
浮遊甲冑の攻撃を回避しながら抗議めいた言葉を口にするも、ユーコは一番近くの紋様へと移動していく。
「き、来ましたよ!」
「ん、倒してみる」
ユーコの言葉に反応するようにして、ロゼが急接近して霊力の刃を生み出し、そこにいた浮遊甲冑を纏めて斬り刻んだ。
すると、見慣れた青い光の波紋が広がり、浮遊甲冑が復活する。
「……ハズレ……っぽい?」
首を傾げるロゼに、蒼夜が顎に手を当てつつ、
「いや、1体だけ消失したな……。もしかして個体ごとに場所が決まっている……のか?」
と、そんな風に言った。
「……たしかに1体減ったわね。……とりあえず1回全部倒してみる?」
「そうだな。やってみるか」
私の提案にロディがそう返事をして剣を浮かせる。
蒼夜とロゼも返事こそなかったが、同じように得物を構えた。
「ユーコ! もうちょい紋様の上に纏めて!」
「む、無茶言いますね!?」
私の言葉に対してそんな風に言ってくるも、きっちり全ての浮遊甲冑が紋様上に乗っかるように位置を調整するユーコ。うーん、さすがね。
「んっ」「い」「ま」「だー!」
ロゼ、蒼夜、ロディ、そして私がそんな事を言い放ちながら、一斉に攻撃を叩き込む。
全ての浮遊甲冑が纏めて消え去り――そしてすぐに復活してくる。
……ただし、
「2体減っておるの」
そうクレリテが言った通り、さっきの浮遊甲冑と合わせて合計3体の浮遊甲冑が復活してこなかった。
「うん。これを繰り返していけば、全部消せそう。うん」
「そうね。なんとなかりそうだわ」
「私が物凄い大変なんですけどね!?」
ロゼと私の発言に、そんなツッコミを返してくるユーコ。
でも、そう言われても、ユーコにしか一切興味を示さないのだから仕方がないというものよね。
というか……どういう仕組み、理由でユーコからターゲットが外れないのかしら……?
そこが少し気になる所ではあるのよねぇ……
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