第32話[表] 通路を塞ぐモノと謎のオブジェ
<Side:Akari>
「……広場じゃなくて、奥へ続く通路の方に足を踏み入れようとした所で襲いかかってくるだなんて、完全に想定外だわ」
やれやれと首を横に振ってみせる私に続く形で、
「この広場は『この先に進むな』って意味だったんですかね?」
「かもしれないな。なんにせよ、倒さないとヤバいのは間違いない」
と、そう言って得物を構えるユーコとロディ。
でも、直線上に突っ込んでくる敵ならば……
「――バーストォォォッ!」
私はチャージしておいた魔煌弓の弦を引きながら、先手必勝とばかりにそう言い放つ。
話をしながらも、しっかりバッチリチャージ済みだったりするのよねぇ、これが。
そして、私の放ったバーストショット――最早、極太のビーム砲みたいになっているので、バーストショットと呼んでいいのかは微妙な所だけれど――は、一直線に向かってくる戦車へと襲いかかり、一瞬にして光の奔流の中へと飲み込んだ。
その直後、光の奔流に飲み込まれなかった車輪とビームの刃が弾け飛び、底なしに広がる宇宙空間のような虚空へと落下していく。
「一撃……ですね」
「一撃……だな」
ユーコとロディがそんな風に呟いた通り、私の放ったバーストショットの一撃で、戦車は消し飛んでしまった。
「――見た目の割に強くはなかったというか、脆すぎね」
「バーストショットの威力がありすぎるだけだと思いますが……」
私の一言に対して、少し呆れ気味にそう返してくるユーコ。
……まあ、たしかに私もちょっとそんな風に思わなくもないけれど……
「ま、なんにせよガーディアン的な存在が健在だという事は分かったな。もっとも……大した障害にはならなさそうだが」
そうロディが言った通り、その先の通路でも何度かガーディアンのような存在が襲いかかってきたものの、全てあっさりと倒せてしまった。
うーん……。オルティリアのあの遺跡と違って、なんだかここの奴らからは防衛する気があまり感じられないわね……
性能が中途半端というかなんというか……。まるで、こちらの力量を推し量る為だけに存在しているかのような、そんな気もするわ。
なんて事を考えている間に、あっさりと通路を抜け、
「……通路は突破出来たようだな」
と、言ってくるロディ。
「そうね。いかにも神殿ですと言わんばかりの建物の入口まで来たけど……」
「特にこれと言って何もなさそうですね」
私とユーコがそう返事をしながら入口の周囲を見回す。
「中に入ってみるか、それとも周囲をもう少し調べてみるか……だが……」
そんな風に言いながらロディもまた周囲を見回し――
「ん? あっちに何か浮いてるな」
何かを見つけたらしく、そんな言葉を続けてきた。
ロディの視線の先へと顔を向けてみると、入口から少し離れた場所――今いる神殿前の広場からバルコニーのようにせり出している所――に、サイコロを幾つも連ねたかのような、なんとも言えないオブジェが浮いていた。
「とりあえず近寄ってみましょうか」
というユーコの発言に私とロディは頷き、そのままそのオブジェへと近づいてみる。
「……何を表しているのかサッパリなオブジェね……」
間近まで来たものの、やっぱり良く分からずにそんな感想を呟く私。
その私に続くようにして、ロディがオブジェの周囲を回りながら、
「そうだなぁ……。だがまぁ……なんとなくだが、鍵……のように見えなくもないな」
と言ってきた。……鍵?
「なるほど……。言われてみると、ヨーロッパの中世時代とかに使われていた感じの古い鍵に似ていなくもないですね……」
納得の表情でそう言ってくるユーコ。
それに対して私は、
「うーん、たしかにそう見えなくもないわねぇ……。でも、これが鍵だとしても、ここから持っていくのは無理そうじゃない? それとも、実は簡単に持てる……とか?」
と返しつつ、試しにオブジェに触れてみる。
その刹那、オブジェが急に光り始めた。
えっ!? な、何!? 急に何かが動作し始めた!?
「……未知の代物に対して、いきなり触るのはどうかと思いますよ?」
「……まあ、動作してしまった以上は仕方あるまい。見た所、危険そうな感じはしないし、少し離れて様子を見てみるとしよう」
私に対して呆れた表情と口調でそんな風に言いながら、少し距離を取るユーコとロディ。
そんなふたりに対して私は、
「ご、ごめんなさい……」
と、それしか返せる言葉がなかったのだった――
想定していたよりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました。
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして……6月20日(火)の予定です!




