第28話[表] アルミューズ城の深奥へ
<Side:Akari>
「さて、これで一通り一般公開されている範囲の城内は見終わったな」
一通り城内を見て回り、『出口』付近までやってきた所で、蒼夜がそんな事を言ってくる。
「うん。『観光名所としての城』はここまで。ここからは『観光名所ではない城』……。うん。というわけで戻る。うん」
そう言って、来た道を引き返すロゼ。
「ここまでは知ってるけど、ここからは知らないからちょっと楽しみぃー」
と言いながら、マーシャちゃんがロゼの後に続く。
私たちもまた、それに続くようにして来た道を引き返していくと、ロゼが城の最上階へと続く階段の近くで立ち止まった。
「ん、こっち」
そう言いながら、『関係者以外立入禁止』と記された立て札の方へと歩み寄り、そのままその奥へと進むロゼ。
「入って大丈夫なの?」
「ああ。俺たちは全員『関係者』扱いになっているから、立ち入っても別に問題ないぞ」
私の問いかけに対し、そう返事をしながらロゼに続く蒼夜に従う形で、私たちも『関係者以外立入禁止』の立て札を無視してふたりの後を追う。
すると、程なくして『魔法障壁』と共に、中世ヨーロッパ風の城に似つかわしくない『カードリーダー』が見えてきた。
「エレンディアで良く見かけるカードリーダー式の魔法障壁ですね」
「う、うーん……。一気に中世感がなくなったというか、いきなり現代の技術が出てきたわねぇ……」
ユーコの言葉に続くようにして、そう口にする私。
まあ、『現代の技術』と言っても、あくまでもこの世界の――言ってしまえば、魔法的な代物ではあるのだけれど。
「普通の観光客に対しては立て札だけで十分だが、中には『普通じゃない客』もいるからな」
なんて事を言いながら、カードキーをかざして魔法障壁を解除する蒼夜。
すると、魔法障壁の先にあった古い木製のドアが視界に入る。
こっちは普通に中世時代の物って感じね。……ドアノブは現代の物になってるけど。
「ん、中に入る」
と言ってドアノブを回し、ドアを開けるロゼ。
「ここは……城の管理事務室……か?」
ロディが開かれたドアの先――部屋の中を眺めながら、そう口にする。
たしかにその部屋は、これまた中世ヨーロッパ風の城に似つかわしくない、今風の事務机とか棚とかが置かれており、ロディの言うように、いかにもオフィス――事務室ですと言わんばかりだった。
「ま、管理事務室兼監視部屋って所だな。この先の部屋に地下へ続く隠し階段があるんだ」
と言いつつ、その部屋の奥――棚によって入口からは見えない場所にある扉へと移動する。
「入口からは見えないようになっている辺りがさすがですね」
「ん、これなら誰かが『迷い込んできたとしても』この扉が見えなければ安心。うん、ただの管理事務室にしか見えない。うん」
ユーコに対してそんな風にロゼが答えた所で扉が開かれ、その部屋の中央――地下へと続く階段と思しきものが視界に入った。
「ここから下へ降りていく感じだ」
「まさか、地下への階段がこんな上層のフロアにあるなんてね……」
私が、蒼夜に対してそんな風に言うと、
「そうだな。その『まさか』を狙ったものなんだろうな、これは。もっとも、これだけじゃなくて、『すり抜ける壁』や『穴の先に設置された霊力で動作させる紋章』といった仕掛けもあったから、この城を作った者が、どれだけ厳重に地下の遺跡――門の存在を隠蔽したかったのかってのが良くわかるってもんだ」
なんて話を返してきた。
うーん……。それってつまり、そこまでするようなものってわけよね。
さっきから『普通じゃない客』とか『迷い込んできたとしても』とか蒼夜やロゼが言ってる事からしても、ここへ忍び込もうとする人間がいるって事だろうし。
なんだかより一層、どういう代物なのかが気になってきたわ……
今回はちょっと足踏みした感がありますが……次の話はキッチリ『門』の所の話です。
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、6月6日(火)を予定しています!




