表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
572/764

第27話[表] アルミューズ城と幻燈壁

<Side:Akari>

 ――大工房の見学の翌日……私たちは当初の予定通り、アルミューズ城へ向かっていた。……というか、船に乗っていた。

 

「湖のほとりからも見えていましたが、実際にこうして近づくと大きいですね……」

「そうねぇ……。まさにファンタジー世界――それも中世ファンタジーなお城って感じよねぇ」

 ユーコに対してそんな風に返す私。

 近くにはユーコしかいないので、敢えてそんな言い回しをしてみた。

 

「ええ、そうですね。このルクストリアはエレンディアと比べて中世時代からある建物が多いので、そういった印象を抱く場所もまた多いですが、ここは特にそう感じますね」

「まあ、この船自体は現代的だけどね」

「そこは仕方ありませんね。以前、湖に魔獣が現れた事件を受けて、船の防御面を強化する事になった結果、どうしてもこうせざるを得なかったようですし」

「魔獣ねぇ……。……今日は出てきたりしないわよね?」

「そうそう出てきたりはしないと思いますよ? その一件に関しても、『竜の御旗』として纏まる前のイチ犯罪組織による工作――犯行だったようですし。それに……今この船には私たちが乗っているわけですし、もし魔獣が出てきたとしても文字通り『秒殺』かと」

「あー……うん。それはまあ……たしかにそうね」

 

 なんていう会話をしている内にも船は城へと近づいていき、桟橋に到着した。

 さすがに魔獣は出てこなかったわね。別に出てきて欲しいわけじゃないけど。

 

 ――それはさておき、城内はいかにも観光地といった感じで『順路』と記された立て札や『関係者以外立入禁止』と記された立て札があちこちにあった。

 私たちは、その『順路』という立て札に従って城内を見て回りつつ、城の最上階にあるバルコニーへと移動した。

 

「うわぁ! これはまた結構良い景色ね!」

「ルクストリア全域が一望出来るな。いや、全域というのは正しくないか。『幻燈壁』があるからそこまでしか見えないし」

 私に続く形でロディがそんな風に言うと、

「そう言えば……この『幻燈壁』がなかったら、この世界――コロニーの形状からして、『遥か上空に』陸地が見えたり、世界の果てとも言うべき壁……コロニーの外壁が見えたりしてしまいますね」

 と、そう頭上へと顔を向けながら言うユーコ。

 

「つまり、これって『それら』を隠す為の代物だった……ってわけね」

「ま、地平線も水平線もない世界だからな。遠くが見えてしまうのは、色々と都合が悪いんだろう」

 私に対して肩をすくめながらそんな風に言ってくるロディ。

 私はそれに「たしかにそうね」と返した所で、ふとエレンディアで見た景色を思い出し、新たな疑問の言葉を紡ぐ。

「……って、あれ? エレンディアの高層ビルとかから海を見ると、少しそれっぽいものが見えなかったかしら……? あれは一体……」


「それは『蜃気滝』の亜種とでもいうべきものである、『幻燈(ファンタズマ)位相(フェイズ)歪曲(ディストーション)』という現象だな」

 そんな風に言ってきた蒼夜に、私は小首を傾げながら問う。

「蜃気滝って言うと、海辺で幻燈壁の代わりに見える……というか、幻燈壁に映し出される『海』の事よね?」


「ああ、その通りだ。そもそも幻燈壁ってのは、太陽光――無論、太陽も人造だから、この光も人工的に模倣された代物ではあるんだが――が、魔煌波の粒子に当たった際に発生する『幻煌(ミラージュ)反射(リフレクション)(ウェーブ)』と『幻煌(ミラージュ)散乱(スキャタリング)(ウェーブ)』というふたつの波動が引き起こす現象なんだが、エレンディアの高層ビルのような高所になると、上空にある人造太陽とウェザーシステムの回路のようなものの影響を受けて、視認出来る『幻燈壁の縁部分』に僅かだが『歪み』が生じるんだ。で、その『歪み』が地平線や水平線のように見える……ってわけだな」

「まあ、本当に歪んでいるわけじゃなくて、人造太陽やウェザーシステムの発している『魔煌波とは別の波動』が重なり合う事で、『そんな風に見えているだけ』なんだけどねぇ」

 蒼夜の説明に付け加えるように、マーシャちゃんがそんな風に言ってくる。

 

「じ、人造太陽にウェザーシステム……ですか」

「……この世界自体が人工的に作られている以上、太陽や天気もまた人工的なものだというのは、まあ当然の話ではあるが……改めて考えてみると、とんでもない技術だな……」

 ちょっと呆れ気味にそう口にするユーコとロディ。

 

 でもまあ……たしかに人工的に昼夜、そして天気を作り出し……いえ、究極的な事を言えば、『魔法』を生み出しているわけだから、そう考えると凄まじいわよね。

 さすがは、何億年経過しても異常ひとつ発生させずに『世界』として存続し続けているだけはある……といった所かしらね。

 なんて事を思う私だった。

幻燈壁について、これまでは軽く説明していただけでしたが、今回は全員『竜の座』に到達済みという事もあり、ガッツリ説明する形にしました。

……もっとも、その結果、説明が思ったよりも長くなってしまいましたが……


とまあそんな所でまた次回! 次の更新は前回記載しました通り、申し訳ありませんが諸都合により、平時よりも1日多く間が空きまして……6月3日(土)を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ