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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第16話[表] 魔力スポットと魔獣とタイミング

<Side:Akari>

「――確認してみましたが、幻影舞台に使われている装置で失われた物――故障、行方不明、盗難といった類の物――は、存在しないようです」

「まあ……あの魔煌具は、類似の物が作られ始めてはいるものの、あれと同等の物は未だに存在せず、なおかつあれ自体が古代遺物……古の時代の技術を今に伝える遺産でもあるがゆえに、管理も護民士が出張っておるくらい厳重じゃからのぅ。やはり、そうそう失われたりはせんよのぅ……」

 カリンカの報告に対して、頬に拳を当てながらそう返すクレリテ。

 

「でも、色々と改めて話を聞いてみたものの、有力な情報はこれといって得られなかったのよねぇ」

 そう告げて私が方をすくめてみせると、ユーコがそれに頷き、

「そうですね。この現象が発生し始めたのが最近である事を考えると、発生し始めた頃に何かが起きたと考えるのが自然ですが、この現象以外には、これといって以前と変わった所はないようですし……」

 と、そんな風に言う。

 

「その最近というのも、具体的にどのくらい前なのかが不明瞭なんだよなぁ……。目撃した者たちが『最初に目撃したタイミング』がマチマチすぎるし……。一応、一番最初に発見されたと思われるのは、今から11日前っぽいが、その一番最初に発見した人物は、その前日と前々日は休んでいたようだから、『確実にその日から発生し始めた』とは言い難いな」

「うーん……。そうなると、11日前から13日前の間に何かあった……と考えるのが妥当なのかしらね?」

 ロディの告げてきた内容に対し、私が顎に手を当てて考えながらそう口にすると、ロディは

「そういう事になるが……単に気づかれていなかっただけで、それよりももっと前から発生していた可能性自体も捨てきれないからなぁ……」

 と腕を組みながら言い、首を横に振ってみせる。

 

「12日前に、この辺りの『魔力スポット』――魔獣誘引地点に魔獣が出現し、それを討伐した記録はありますが……それが関係しているかどうかと言われると……」

 カリンカが携帯通信機の画面を見ながらそんな風に言ってくる。

 

 魔獣誘引地点……たしか、都市部では魔煌具の多用によって魔煌波の歪みが酷くなりやすくて、結果的に魔獣も生まれやすい状態になっているって事で、意図的に魔獣が生まれやすい地点を作って、そこに魔獣を敢えて出現させて討伐する……という手を取っているのよね。

 エレンディアでも『集魔ゾーン』という名前でいくつかあったけど、まだ数が少ないのよねぇ……。お陰で想定外の所に魔獣が生まれる事がたまにあるし……

 このルクストリアは、そんなイレギュラーが全く起きないくらい半端じゃない数の魔獣誘引地点が存在しているって話を昨日の夜にロゼから聞いた気がするわ。

 

「ふーむ……。まあたしかに、それによってこんな現象が発生するとは考えにくいのぅ」

「……ですが、その時期に他に何もなかったとすると、その魔獣出現地点が直接的な原因ではなくとも、なんらかの間接的な原因――遠因になっている可能性もまたあり得るのではないでしょうか?」

 クレリテに対してユーコがそんな風に言うと、クレリテは、

「間接的な原因……。遠因……。たしかにあり得ぬと断言する事は出来ぬな。念の為、その魔獣誘引地点へ行ってみるのも良い気がするのぅ」

 と、呟くように言った後、カリンカの方を見た。

 

「そうですね……。一応行ってみるとしましょうか。対象となる魔獣誘引地点『魔力スポット・ポイント25』は、地下トラムの保線用通路を利用する事ですぐ到着出来るので、一度地下トラムの乗り場へ戻るといたしましょう」

 クレリテに対して頷きつつ、そんな風に返すカリンカ。

 

 それを聞いた私は、地下トラムというと……大昔の建造物の一部を流用しているって話だったけど、その魔獣誘引地点も、大昔の建造物の一部……とかなのかしら? なんて事を思いながら、地下トラムの乗り場へ歩を運ぶのだった。

かなり久しぶりに『魔力スポット』の登場です。

前回に登場した時は、ルクストリア単体での話だった事もあり、『魔獣誘引地点』という共通名称は出さずに、ローカルな名称だけ出していましたが、今回は既にルクストリア以外にも話が及んでいる状態なので、共通名称を出す形にしてみました。


とまあそんな所でまた次回! 次の更新も少々予定が詰まっている事もあり、平時よりも1日多く間が空きまして……4月23日(日)を予定しています(なお、その次の更新からは平時通りの間隔に戻る事が出来る想定です)

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