第13話[表] ゴーストハウス
<Side:Akari>
「……いかにもって感じの外観ですね」
辿り着いた『ゴーストハウス』とやらの外観を見回しながらそんな感想を口にするユーコ。
そんなユーコに対し、私は同じく外観を見回しつつ返事をする。
「そうねぇ……たしかに怖そうな雰囲気があるわ」
私の視線の先には、蔦があちこちに巻き付いた、朽ち果てた洋館があった。
無論、そう見えるように作られているだけであって、本当に朽ち果てているわけでも、蔦が巻き付いているわけでもないのだけれど。
「ま、とりあえず入ってみるとしようかの」
クレリテがそう言いながら、入口の扉を開ける。
と、その直後、キィィという扉の軋む音が響いた。
って……。え? わざわざ扉が軋む状態にしてるの?
なんて事を思った所で、
「ほほうなるほどのぅ……。扉の所に音を鳴らす魔煌具が設置されておるのか。たしかにこれなら、扉自体が軋んだかのように聞こえるのぅ」
というネタバラシをサラッと告げてくるクレリテ。ま、まさかの魔煌具!
「この音の演出の為だけに魔煌具が使われているとは……」
「なんとも贅沢な使い方ですね」
ロディとカリンカがそんな感想を口にする。
「なんだか小さくて淡い光球が大量に舞っていますね……」
建物内に大量に舞っているそれを見回しながら、そう言ってくるユーコに、
「オーブ……だっけ? でも、これって肉眼では見えないはずじゃ……」
と、そう返す私。
「まあ、これは単なる幻影魔法と光源魔法を組み合わせたものじゃからのぅ」
「そう言われると、不気味さがまったくなくなるな……」
クレリテの説明に対して、一番後ろにいたロディがゴーストハウスの中へと足を踏み入れつつ、そんな風に言って首を横に振ってみせる。
そして、全員が完全にゴーストハウスの中へと入った瞬間、バタンッ! という音がして、入口の扉が閉まった。
「……演出が細かいわね……」
内心では大分驚いたが、それは表に出さず、それだけ声に出す私。
「床に感知する仕組みが施されておるのぅ。扉の周囲に誰も居ない状態になると、自動的に閉まるようになっているようじゃ」
床をインスペクション・アナライザーで確認しつつ、そんな風に言ってくるクレリテ。
そのクレリテに続くようにして、
「これ、内側からは開かなくなるとかなんですかね?」
と言いつつ、扉に手をかけるカリンカ。
すると、特に何の問題もなく扉は開いた。
「え? えええ?」
あまりにもあっさりと開いてしまった事に拍子抜けなのか、カリンカがそんな困惑の声を発する。
「ま、あくまでもアトラクションだからな。開かなくなるのは色々とまずいんだろう」
ロディが、肩をすくめながらそういうと、カリンカは納得がいったと言わんばかりの表情で、
「あ、あー……たしかにそう言われるとそうかもしれませんね……」
と、そんな風に返す。
「……なんにせよ、入口で止まっていても仕方あるまい。奥へ進むとしよう」
「そ、それもそうね……」
私はクレリテに頷き、ゴーストハウスの奥へと向かって歩き出す。
急に額縁がガタンと音を立てて傾いてきたり、いきなり窓ガラスの外を黒い影が駆け抜けるのが見えたり、いつの間にか後ろから人形が付いてきてたりしながら、ゴーストハウスの中を進む事しばし……
「――なんというか……全て魔煌具による仕掛けだと分かっていても、普通に怖いわね……」
階段のある広間まで来た所で、そんな感想を口にする私。
「そうですね。よくまあここまで作り込んだものです。あそこの明滅している青白い影とか良く出来てますね」
なんて事を言って、ロウソクの火がギリギリ届かない暗がりで、蹲るような感じでゆっくりと明滅している青白い影を指さすカリンカ。
たしかにそうね。わざわざ明滅させるとかよくやるわねぇ……
と、そう思った所で、
「……うん? あれはインスペクション・アナライザーに引っかからぬな……」
なんて事をクレリテが告げてきた。
……え? ちょ、ちょっと待って……
そ、それって……つまり……
なにやら怪しいものが現れましたが……?
といった所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、4月12日(水)を予定しています!




