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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第2章 遙かなる古の遺産編
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第9話[表] アルケインスターと魔女

<Side:Akari>

「それはそれとして……皆さんは本を買いに来たのですか?」

「いや、特に本を買いに来たわけじゃないというか……これを買おうと決めてやってきわけじゃないわね。何か良さそうな物があれば買おうかなーって感じで見て回っているのよ。……というか、逆にカリンカさんはどうしてここに?」

 百貨店内の移動しながら――さすがにいつまでも立ち止まっているのもどうかと思ったので、気になる本だけ購入して移動する事にしたのだけど――問いかけてくるカリンカさんに対し、私がそう返すと、

「実は……『アルケインスター』という娯楽施設から、最近、施設内で幽霊を見たと言ってくる利用者が多いという相談ありまして、その確認にきたんです」

 なんて事を言ってきた。……幽霊? 娯楽施設?

 

「ああ、そういや巨大な娯楽施設が新しく出来たという話を、前にオルティリアでチラッと聞いたなぁ……。もしかして、ここにあるんですか?」

 ロディがそんな風にカリンカに問いかけると、

「いえ、施設自体は別の所――大工房に近い場所にあるんですが、この百貨店からは最近作られた地下トラムで繋がっていまして、討獣士ギルドの本部からだと、その地下トラムを使った方が早いんですよ。地下トラムは地上のトラムと違って、一直線ですし」

 と、説明してくるカリンカ。

 

 地下トラム……。要するに地下鉄よね……

 そんなものまであるなんて、さすがって感じだわ。

 

「なるほど……。たしかに地上のトラムは結構ウネウネしている感じでしたね」

「はい。ルクストリアは元々防衛用に敢えて道を入り組ませていたという歴史がある街なので、どうしてもそういう構造になってしまうんですよ」

 ロディに対し、軽く肩をすくめながらそう返すカリンカ。


「そう言われてみると……たしかに乗っている間、狭い道を避けるようにして、何度も大きく曲がっていたのを感じましたね」

「ま、トラムを通すにはそれなりに道幅が必要だしな。……それにしても、娯楽施設で幽霊騒ぎとはな……」

 そんな風に話すユーコとロディに続く感じで、

「……幽霊ねぇ。ユーコみたいなアストラル体の存在が他にもいるとか?」

 と、呟くように言う私。

 

「……自分で言うのもあれですが、アストラル体の存在はかなりレアという話ですし、私以外にはそうそういないのでは?」

「ふーむ……。単なるアンデッド……の可能性は低いか。アンデッドならもっと明確に『そうだと分かる』から、『アンデッドが現れた』という相談になるだろうし」

 ユーコの返事に対し、ロディが顎に手を当てながらそんな風に言う。

 

「ええ。なので、確認しにきたんです。一応、アンデッド以外だった場合にも、『害』があるのなら、何らかの対処が必要ですし……」

「なるほど……。カリンカさんも除霊の類の術なりなんなりが使えるんですか?」

「いえ、残念ながら私は使えませんね。アルミューズ城の地下にある門の監視と調査の為に、アルヴィンスさんが呼び寄せたクレリテさんという魔女の方がおりまして、その方に協力を依頼しているんです」

 ユーコの問いかけにそう説明してくるカリンカ。

 

「そう言えば、その名前もオルティリアでアーヴィング氏がチラッと口にしていたな……」

「魔女ですか……。ちょっと興味深いですね」

 ロディに続く感じでこめかみに人差し指を当てながらそんな事を言うユーコ。

 

「それでしたら会ってみますか? クレリテさんとは地下トラム乗り場で待ち合わせしていますし」

「いいんですか? でしたら是非!」

 カリンカに対してユーコが即答する。

 ……そんなに興味があるのね。

 

「まあ、別にこれといって百貨店自体に目的があるわけじゃないし、行ってみるのもいいかもしれないわね」

「そうだな。個人的にもたしかにどういう人物なのか気にはなるしな」

 私とロディもそう告げ、全員で地下トラム乗り場へと向かう事にするのだった――

前章のオルティリア編で、ちょっとだけ話題に出ていた『娯楽施設』と『クレリテ』のふたつに、ようやく辿り着けました……

本来はここまでもっと長かったのですが、色々と圧縮した事で、このタイミングでの登場となりました(これでもちょっと遅い感じはしていますが……)


といった所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして……3月30日(木)を予定しています!

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