第7話[表] ハイエンドとマンガ
<Side:Akari>
「そうだな……。たしかにそこそこ良い値段だな、どれも。地球だったらハイエンドモデルが買えるくらいだ」
なんて事を言ってくるロディ。
ハイエンドモデルって、たしか超高性能すぎる代物の事……よね…?
「ハイエンドモデルのPCなんて使った事ないから、そう言われても良くわからないけど、こんなにするのね……」
「まあ……買えなくはないですが、貯金がごっそりなくなりますね」
私の呟きに続く形で、そんな風に言って額に手を当てて悩むユーコ。
……え? この値段でも買う気なの?
「……エステルとか蒼夜に話したら、1台くらい型落ちのとかを譲って貰えたりしないものかしらね?」
「うーん……。たしかに譲って貰えるかもしれんが、そこまでしたら『黄金守りの不死竜』との繋がりが強くなりすぎるような……」
私の発言に対し、ロディは顎に手を当ててそんな事を返してきた。
「それ、もう今更すぎる話じゃないかしらね……」
「……たしかに今更な感じはちょっとしますね……。既に『黄金守りの不死竜』の持つ道具、戦力、技術……ありとあらゆるものを、かなり借りてしまっていますし……」
私に続くようにして、ユーコが同意の言葉を口にする。
「……それはまあ……そうだな……。そう言われると否定は出来んな……」
そんな風にため息交じりに言うと、腰に手を当てて首を横に振るロディだった。
◆
<Side:Akari>
とりあえず、PCっぽい物を買うのは一旦保留にし、私たちは更に百貨店を進む。
すると図書館……ではなく、本屋が見えてきた。……ちょっと広すぎじゃないかしら……
私はマンガか小説――何故か普通にあるのが面白いわよね――しか買わないけど、辞書や実用書といったものも、随分と置かれているわね……。料理の本とかもやたらと種類あるし……
エレンディアで一番大きい本屋でも、ここまではないわよ……?
なんて事を考えつつ、マンガコーナーへと向かう。
すると、私が買っているシリーズのひとつが積まれていた。
「あ、『お忍び魔王女とお忍び魔王子』の最新刊がもう出てるわ。さすがイルシュバーン、エレンディアより早いわね」
「うん? マンガなのは見て分かるが、どんな代物なんだ?」
特に行く宛もないからとついて来たロディが、私に対して疑問を投げかけてくる。
「魔族の王女と王子のラブロマ……いえ、違うわね。ラブロマンスの皮を被ったギャグマンガ……と言うべきかしらね。いわゆる両片思い状態なんだけど……どっちも魔族嫌いでね、魔族の象徴的な部分を魔法で隠蔽した状態で一緒に会話したり行動したりするんだけど……まあ、それによって色々な騒動が巻き起こるのよ」
「……ふむ。なんとなく分かったが、それはラブコメとはどう違うんだ?」
私の説明を聞いたロディが、そう言って首を傾げる。
「うーん、そうねぇ……。ロマンスっぽいノリから一気にギャグに走るシーンが多い感じ? こう……定期的、かつ唐突にギャグに振り切った展開がやってくるような……。こう……なんでもあり感が、ラブコメよりも圧倒的に強い感じかしらね」
「そうですね。それこそシリアスなシーンで大怪我して死にかけていたキャラが、ギャグシーンに突入した瞬間、一瞬にして全回復したりしますからね……。世界観的にはダークファンタジー色が強いのに、ギャグシーンによってまったくそんな風に感じないのがちょっと面白いです」
私に続く形で、ユーコがそんな補足っぽい事を口にする。
「なるほど……。そんな風に言われると少し気になるな。っと、魔法探偵シャルロットのマンガ版なんてのもあるのか」
ロディが『お忍び魔王女とお忍び魔王子』の横に積んであった『魔法探偵シャルロット』に気づき、そんな事を言ってくる。
「そう言えば、これってシャルの実話をもとにあれこれ脚色した物語……って話だけど、国のお偉いさんの所に殴り込んだり、かなり無茶苦茶な事してるわよね……シャルロットって」
「……あれ、実話なんですかね……?」
「いや、さすがにその辺は創作じゃないか……?」
私たちがそんな事を口にした所で、
「いえ、あれ『も』本当にあった話なんですよ……。実は」
なんていう、ため息交じりの声が聞こえてきた。
……うん?
なんだか良く分からないサブタイトルになってしまった感が……
良い感じのサブタイトルが思いつかなかったもので……
まあそれはともかく、誰か来たようですね?
といった所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして……3月24日(金)を予定しています!




