第5話[表] アズマにて
<Side:Akari>
「思った以上に馴染みのある料理ばかりだったわ……。味付けも」
私はそんな感想を口にしつつ、肉豆腐定食――の肉に箸を伸ばすと、
「そうですね。このきつねうどん、お揚げの甘辛さが絶妙で最高ですね」
と、返しながら大きな油揚げを口に入れるユーコ。
「……ユーコぉ、それ3品目だよねぇ?」
「月見そばに、ひもかわうどんのせいろときて、きつねうどん……。見事に麺類ばっかりだな」
アリシアと蒼夜がそんな風に言う。……たしかに麺類ばっかりねぇ……
「なんというか、その……ひさしぶりに見たら、どれも食べたくなってしまいまして……」
そう答えるユーコに対し、マーシャちゃんが、
「よく入るねー。私なんてひとつでお腹いっぱいだよー」
なんて言葉を投げかける。
「そう言われてみるとそうね。ユーコ、いつもはそんなに食べないわよね?」
「ええ、そうですね。でも、なんというか……その、今日は全部食べられる気がしたというか、食べないともったいないと思ったというか……」
私の発言に、そう返してくるユーコ。
う、うーん……。どういう事なのかしら。
「……久しぶりに懐かしい食べ物を目にして、食欲が底なしになったとか? アストラル体の不思議って感じがするわ……」
「うん、たしかに食べた物がどこに消えていくのか気になる。うん」
「多分、アストラル体の構成要素……霊力的なものに変換されているんじゃないかなー」
ロゼの疑問に、そんな推測を口にするマーシャちゃん。
……時々、さらっと凄い事言うわよね……マーシャちゃんって。
ヴァロッカでの出来事を、この目と耳で直に見聞きしていなかったら驚いている所だわ。
「というか、こっちもこっちでバッチリ食べてるよねぇ」
アリシアがそんな風に言いながら、ロディの方を見る。
そのロディはというと、
「バッチリというか……大盛りが想定以上に大盛りすぎた……というのが正しいな」
なんて事を言いつつ、大盛りの鶏の唐揚げと格闘していた。
そう……。大盛りなのはご飯ではなく、鶏の唐揚げだったりする。
塩をかけたり、レモンをかけたり、そのまま食べたり……と、少しずつ味を変えながら、次々に鶏の唐揚げを食べるロディ。
そして、
「たしかにこいつはウマい。ウマいが……チキン系はしばらくいいな……」
と、そう呟いた。
……ま、まあ、この量を食べたらそういう感想になってもおかしくないわね……。うん。
などと思った所でアリシアが、
「ところで、明日はどうしようねぇ?」
と言って私たちを見回す。
それに対して、蒼夜が顎に手を当てながら、
「そういや、エステルが午後に戻ってくるって言ってたな」
なんて事を告げてきた。
「あ、それなら大工房を覗いてみたいぃ」
「大工房……。私も気になるわね」
アリシアに続く形で、そう口にする私。
そして、
「ああ、俺もちょっと覗いてみたいな」
「そうですね。どういう所なのか気になります」
と、ロディとユーコも続く。
「うん? そうなると……午前中は適当に過ごして、うん、昼食の後、大工房へ行く感じ? うん」
「そうだな。そんな感じでいいと思うぞ」
首を傾げるロゼにそう返す蒼夜。
午前中は適当に……と言われても、どうしたものかしらねぇ……
ロゼの家でのんびり……というのも何か違う気がするし。
うーん……。グランテール百貨店――百貨店という名称ではあるけれど、ショッピングモールみたいな広さを誇っているらしい――へ行ってみるのもいいかもしれないわね。
なにか面白い物が見つかるかもしれないし。
次回はグランテール百貨店です。……ここも久しぶりですね……
といった所でまた次回!
次の更新は、平時通りの間隔となりまして……3月17日(金)を予定しています!




