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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第224話[表] 聖女と地底湖

<Side:Akari>

「掃討完了なのです」

 周囲を確認しつつ、クーさんがそう言うと、

「といっても、放っておいたらまたいずれ復活してしまいますわね」

 と、ため息交じりに口にして、首を横に振ってみせるエリス。


「というわけで、私の出番ですねぇ。ちゃっちゃと浄化しちまいましょうかねぇ」

「……『元』とはいえ、さすがは『聖女』だな。言葉遣いからは、まったくそんな感じはしねぇが」

 浄化――アンデッドの出現する根源を断って、アンデッドが再度姿を現すような事をなくす術式……と言いつつ、最近はその代用となる魔煌具とか薬品とかもある――の準備を始めたティアさんに対し、蓮司がそんな事を言って肩をすくめる。

 ……まあ、それは私もちょっと思ったわ……

 

「前にも言った事がある気がしますけどねぇ、私はちょっとばかし『荒っぽい所』で育ったんで、こればかりはどうにもならねぇんですよねぇ。……それとも、レンジは『それでは、速やかに浄化するといたしましょうか』みたいな感じの丁寧な喋り方をする人間のほうを好みやがるとでも言うんですかねぇ?」

「俺自身の好み? んー、俺自身は別に言葉遣いに対する好き嫌いはねぇな。……ウチの連中は、全般的にそういう所いい加減だし、それでいいと俺も思っているからな」

「なら、なんの問題もねぇですねぇ。このままいきますねぇ」

 なんて会話をしながらも、浄化の準備は進んでいき、そのまま浄化も文字通りサクッと終了した。

 

 ユーコいわく、薄ら寒く、なおかつ纏わりつくような、そんな空気が一気に穏やかなものになったらしい。

 うーん……私にはその辺り感じられないからなんとも言えないけど、ティアさんの方は、なんというかこう……普段と違って神々しささえあるかのような、そんな雰囲気の立ち居振る舞いだったのは、私にも感じられたわ。

 やってる事自体は、魔煌具や薬品による浄化と大差がないのに不思議だわ。

 

「――さて、浄化もばっちり完了しやがりましたし、奥へ行くとしましょうかねぇ」

 というティアさんの言葉に従うような形で、私たちは廃墟洞窟の更に奥へと歩を進める。

 

 そして、人の住んでいた痕跡が完全になくなった所で、正面に湖――地底湖が見えてきた。

 

「大きさはそれほどでもないですが……随分と深い地底湖ですね。底が見えません」

 ユーコが地底湖を覗き込みながらそう言うと、アリシアがそれにつられるようにして、同じように地底湖を覗き込むも、

「なんだかこう……凄く不気味だねぇ……。まさに深淵って感じだよぉ」

 と、そんな風に言ってすぐに覗き込むのを止めた。

 

「まさか、ここを潜るとかじゃないですわよね?」

「潜りはしないが、この湖に用があるのはたしかだな」

 エリスの問いかけに対してそう返事をしつつ、近くの岩壁を調べ始める蒼夜。


 ……潜りはしないけど、用があるってどういう事かしら……?

 特に周囲には何もなさそうだけど……

 と、そんな事を考えながら周囲を見回すように光を照らしていると、

「……ここだな」

 と言って、岩壁に手を突っ込む蒼夜の姿が目に入った。

 

 あ、その部分、すり抜けるようになっているのね。

 そう思った所で、

「ふむ。たしかに広捜隊の面々が居るのに、ジャマーが動作しねぇな。普通ならすり抜けなくなったりするもんだが。いや……そもそもこの発言すら制限されるか」

 と、肩をすくめながら口にする蓮司。

 

「……『制限』って、そんな感じで働くものなのね」

「そんな感じでやがるんですよねぇ、これが。どうやってるのかとかは、まったくもって理解不能でやがりますけどねぇ」

 私の呟きに対して、ティアさんがそう答えた直後、ウイィィンという機械音と共に、湖の縁から、ヴァロッカの水晶の滝に隠されていた昇降機と同じ材質の床がせり出してきて、地底湖の湖面を覆い始める。


 そして、それから数分後……湖全体がせり出してきた床によって完全に覆われる形となり、湖だった場所の中央には、20人くらいは余裕では入れそうな大きな光の輪が、等間隔に天井まで縦に連なる形で出現していた。あれって……もしかしてテレポーターの類?

 

「湖の上に床……。もしかして、湖自体が人工……?」

「この仕掛け、さっきの里の人間は知っていたんですの?」

 ロディとエリスがそんな疑問をそれぞれ口にする。

 

「実の所、ここは湖ではないんだが……ま、そこは追々分かるから今はいいか。とりあえず、人工的なものである事は間違いない。そして、湖がこういう代物で、こんな仕掛けがあるという事自体、あの里の人間は知らなかったはずだ。もし知っていたら、全滅なんてしないだろうからな」

 そう答えると、両手を左右に広げて首を横に振る蒼夜。

 

「見た感じ、テレポーターの類に見えますが……」

 顎に手を当てながらそんな風に言ったジャンさんに、ティアさんが、

「その通りですねぇ。あれはテレポーターですねぇ」

 と、そんな風に返した直後、

「テレポーター! 凄く興味深いなぁ。どういう仕組みなのか詳しく知りたいかもぉ」

 なんて事を言って、食い気味にティアさんに近づくアリシア。

 

「そ、その辺りは後で自分で調べるといんじゃねぇですかねぇ。もうすぐ、そう言った事も簡単に分かる場所につきやがりますからねぇ」

 ちょっと後退りながらそう返したティアさんに、

「なら、さっさとそこへ行こうぅ!」

 と言いながら、光の輪――テレポーターへと駆けていくアリシア。

 

 いやいや、気持ちは分かるけど少し落ち着きなさいよ……と、その背を見て思う私だった。

次回の舞台は『竜の座』です。もう行きます! 

これまでのストーリー展開と比べると、進展の速度が大分ハイペースになっているのではないかと思います。


とまあそんなわけでまた次回! 

……次回も平時より1日多く間が空きまして……2月27日(月)を予定しています。

一応、来月上旬くらいには平時の間隔に戻せる想定でいますがそれまでこの間隔での更新になりそうです。申し訳ありません……


※追記

サブタイトルに[表]と付いていなかったので追加しました。

また、後書きが前書きになっていたミスを修正しました。

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