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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第222話[表] ノイズとゼクタ渓谷

<Side:Akari>

「いきなりそろってノイズ混じりの言葉を口にしましたわ!? 実は割と分かりやすい言葉だったりするんですの?」

「まあ……ある意味、分かりやすいな。俺たちは……だが」

 エリスに対してロディがそう答えた所で、

「……なるほど。なんとなくロディの言う事が理解出来たぜ。つーか、『銀の王』と同等レベルの奴らが他にもいるって事に驚きだ」

 と、そんな風に返し、私とロディを交互に見るゼル。

 

 『銀の王』と同等レベル……。つまり、『別の世界にも存在する敵』であると言いたいんでしょうね、きっと。

 まあ、ゼルは私たちがこの世界とは別の世界の人間である事を知っているし、名前までは分からなくても、そういう存在であるという事までは分かる……って感じかしらね。

 

「う、うぅん……。なんなのか気になるぅ……。ぐむむむむぅぅっ!」

「まあ……この問題に関しては、近い内に纏めて解決するようですし、あまり気にしても仕方がないと思いますよ」

 唸って考え込むアリシアの方を向き、メガネをクイッと押し上げながら宥めるジャンさん。

 

「よぉぉし、それならさっさと行こう! 今すぐに行こうぅ!」

「……ですから、さすがに今すぐは無理ですと……」

 立ち上がって拳を上に突き出すアリシアに対し、ジャンさんが呆れ気味にそう言いながら、更に宥める。

 

 ……でも、この感じだと行くのが少し早まりそうね……

 

                    ◆


<Side:Akari>

 ――そして予想通りというべきか、ジャンさんの調整によって、あの集まりから3日後……

 私たちはゼクタ渓谷へとやってきていた。

 

「ヴァロッカへ行く途中で、列車内から見えた光景も凄かったけど、こうやって飛行艇で谷間を進んでいくと、更に凄い光景よね……」

「たしかにそうですね。所々狭い所があって、ぶつからないのかとちょっと心配になりますが……」

 甲板から渓谷を見回しながら口にした私の感想に続き、そんな事を言うユーコ。

 まあたしかに結構狭い所――船体スレスレの場所もチラホラあったわね。

 

「何、少しくらいぶつかった所でウチのフネは何ともねぇさ」

 と、この飛行艇の艇長でもある蓮司が、欄干に背を預ける格好で空を見上げながら言ってくる。

 そして「それよか問題なのは……」と、言葉を続けた直後、

「グギャァァァアァァァァアァァッ!」

 という咆哮が響き渡り、それに続くかのように同じ咆哮が連なっていく。

 

「ワイバーンね」

「ワイバーンですね」

 私とユーコはそう言って、こちらに向かって飛翔してくるワイバーンを見据えつつ、得物を構える。

 

 古今東西、重要な会話の邪魔をするのは大体ワイバーンなのよ!

 まあ……私たちの会話は、別に重要な会話とかじゃないけれど……

 

 そんな事を考えていると、その思考と意図が伝わったのか蓮司が肩をすくめ、次元鞄から得物――大剣を取り出した。

「正式な名称は違うが、まあ見た目はワイバーンだよなぁ、アレ」

 

「蓮司さんの武器って大剣なんですね」

「いや、刀剣なら大体どれでも使えるが……ああいうのを相手にするにはこいつが一番だから……なっ!」

 ユーコの問いかけにそう返しつつ、剣に炎を纏わせ、それをワイバーン――正式名称を忘れたのでこう呼ぶ事にした――が群れている方へと向かって突き出す蓮司。

 

 と、次の瞬間、大剣の切っ先から、まるで火炎放射器の如く炎が噴き出す。

 

「ゲギギャアアァァアァッ!?」

 ワイバーンの数体がその炎の直撃を喰らい、炎に包まれながら落下していく。

 

「凄い火力ねぇ……いろんな意味で。――っと」

 そんな事を口にしつつ、吸引チャージショットを放つ私。

 

「いや、その敵を引き寄せつつぶち破るチートショットも大概すげぇぞ?」

「チートショットて……。いやまあ、私的にもそう思うけど……」

 蓮司に対してそう返した所で、横に居たはずのユーコの姿が見えない事に気づく。

「って、あれ? ユーコは?」

 

「ギャギィィィイイイィィッ!?」

 うん? と思いつつ、その苦悶の叫びの方へと顔を向けると、空を飛び回りながら接近戦をしているユーコの姿があった。

 

「……そうよね、空を飛べるなら、空中戦を仕掛けた方が楽よね……」

 なんて事をため息交じりに呟いている間に、残っていたワイバーンはユーコの手によって倒された。

 

「魔獣とはいえ、ザコだから大した問題じゃあねぇが……こう度々襲って来られると面倒なのはたしかだな」

「魔獣って魔煌波の強い所……魔煌具が多用されているような場所以外でも、こう群れて出てくるものなのね」

 やれやれと言わんばかりの表情で首を横に振る蓮司に対し、私がそんな風に言うと、

「いや、この辺はヴァロッカで見た『水晶の滝』のような感じで、魔晶がそこかしこにあって、魔獣が出現しやすい状況になっているんだ」

 という声と共に、甲板にある階段を登ってくる蒼夜。

 

「あー……。言われてみると、あの辺とかちょっと色の違う場所があるわね……」

 そう口にしつつ、周囲と少し色の変わっている岩壁へと視線を向ける私。

 と、そこで、

「属性の力で変色しているんですね。あの色は……風……でしょうか」

 と言いながら、私の横に戻ってくるユーコ。

 

「風ねぇ……。いかにも空を飛ぶ魔獣が好みそうな属性よねぇ……」

「それだけじゃなくて、妙な気流を発生させやがるせいで、昔の飛行艇は、ここを通るのが難しかったそうだぜ。ま、今の飛行艇はそんなもんの影響はほぼ受けねぇけどな」

 私の呟きに対し、そんな説明を蓮司が返してくる。

 そしてそれに続くようにして、

「ま、今や、世界の果てだなんて言われてきた岩塊群ですら、やすやすと突破出来るような時代だしな」

 と、蒼夜。

 

「世界の果て……ね。東西は行き来出来る事が分かったけど、南北はまだ無理なのよね? というか、そもそも南極とか北極とかにすら辿り着けていないんだっけ?」

「南極に北極ねぇ……」

 私の問いかけに対し、顎に手を当てて含みのある言い方で返事をしてくる蓮司。

 

「? なんなのよ、その妙な含み……」

 更に問いかける私に、蓮司と蒼夜が、

「言ってやりたい所だが、『制限』があるからこれ以上は言えねぇな」

「ま、そのあたりについても、もうすぐ分かる事だ」

 なんて返答をしてくる。

 

 ……どういう事かしら? 南極とか北極とかにも何か秘密があるって事……?

というわけで(?)舞台が変わって『ゼクタ渓谷』再び、です。

前に来た時は通過するだけ、みたいな感じでしたが……実は今回も通過するだけ、みたいな感じだったりします(何)


といった所でまた次回! なのですが……次の更新も諸都合で平時より間隔が1日多く空く形となりまして、2月19日(日)の更新を予定しています。

なかなか平時通りの間隔で更新出来ず、申し訳ありません……


※追記

誤字を修正しました。

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