第220話[裏] グインデュロムとの決着
<Side:Souya>
しっかし、この世界でここまで『完璧なまでに竜だと言える存在』に出会ったのは、何気に初な気がするな。
一体どういう事なのか気になるが……ユーコやシズクが何か聞いていたりするんだろうか?
さすがにあの竜に問いかけても、もう答えてくれそうな雰囲気じゃないしな。
というか……七聖将はどうしたんだ?
あの竜の声からすると、七聖将が変身したとかじゃないのは確実だし……
まあ……既にユーコとシズクが倒したか、あの竜が倒したと考えるのが妥当だが、もし後者だとするならば、何があったのかが気になる所だな。
なんて事を考えていると、
「――『元凶』は全て片付いたぞ。……もっとも、警備隊の人間としては、別の方法で『救って』やりたかったが……な」
「……ま、傭兵をしてりゃあ、トドメが『救い』になるような場面もあるし、そういう事をした事もあるけどよ。それでも、さすがに今回はちぃとばかしアレだったぜ……」
という声と共に、ロディとウルが姿を見せる。
元凶……。あの人造生命体の少女たちか……
どことなくマーシャに似てる所があったのは気のせいなのか、それとも……
……いや、やめよう。それは今考えても詮無い事だ。
「……後味の悪い役を任せてすまなかった」
「気にするな。任せろと言ったのは俺だしな」
俺の発した言葉に対し、ウルがそう返してくる。
ロディの方も声には出さないものの、ウルに同意であるらしく頷いてみせた。
そしてロディはそのまま、
「それより、まさか竜なんてものがここで現れるとはな」
と、そんな風に言ってくる。
「あれが竜か……。物語や伝承では良く聞くが、実物を見たのは何気に初めてだな」
なんて事をウルが言った直後、
「いくら数が増えようとも無意味! 我が咆哮を聞け!」
と、そんな事を竜が言い放ち、咆哮を発した。
「――ウヲヲヲヲヲヲヲンンッ!!」
刹那――
「っ!?」
急激に全身に異様な重さを感じ、俺は片膝を付かずにはいられなかった。
「ぐぅっ……! また……重力増加っ!? でも、魔法陣も何もないし……。まさか……咆哮だけで……重力を増大させた? は……ははっ、面白い事をする……ね」
近くにいるシズクがそんな事を言って楽しげな表情で笑う。
……なんでそこで笑うんだ……。これだからバトルマニアは……
「我が力は炎だけではない! ルオオオオオオオンンッ!!」
再びの咆哮。
と同時に、周囲がバチバチとスパークし始め、雷撃がデタラメにばら撒かれる。
「ん……これは……霊力でも……消し飛ばせない……。うん。厄介すぎる……」
ロゼがそんな事を言った直後、
「それなら……こっちを直接狙うのが……良い……わよね?」
なんて声と共に、灯のチャージショットが竜の右翼へと直撃。
翼の半分以上を消し飛ばした。
「ガアアアァァァアァァァァアアァアァァアァァァッ!?!?」
苦悶の叫びと共に地上へと落下してくる竜。
「重力で……動きにくくなった所で……弓なら……問題ないのよ。特に魔煌弓は……普通の弓と違って……引く力もいらないし……ね」
と、肩をすくめながら言う灯。
「無論……魔法も……な」
「俺の剣も……そう……だな」
俺とロディが同時にそんな風に口にし、俺は融合魔法を、ロディは自身の剣を、それぞれ竜へと叩き込む。
っていうか……ロディの剣、一体何本あるんだ……。めちゃくちゃな数の剣が突き刺さったぞ……
あんなにいっぺんに飛ばせるとは思わな……いや、違うか?
俺の高速レベルアップ――戦闘能力を急成長させる力でサイコキネシスが強化――進化した……のか? それも、剣の数自体が増える形で……?
そんな事を考えていると、竜が尻尾を振り回しながら暴れまわり、
「お……の……れ……! おのれおのれおのれぇぇぇぇぇっ!」
などと怒りの叫びを上げつつ、あちこちにある良くわからない装置を破壊していく。
無論、装置を破壊しようとしているのではなく、こちらを狙っての攻撃なのだろうが、怒りで視野が狭くなっているのか、その攻撃はほとんどが重力増大の影響を受けていないらしいユーコにばかり向いていた。
そして、ユーコの方も「おっと、危ないですね」なんて事を言いつつ、床下に潜ったり、壁をすり抜けたりして回避し続けている為、結果的に装置が破壊されていくだけであった。
というか、相変わらずユーコの回避能力は高すぎだな……
「ぐっ、ぬぅっ!」
珍しく……というか、偶然振り回す尻尾に巻き込まれる形になったウルが、ガードしつつも、その勢いに押されて少し後退する。
……重力の増加があるとはいえ、あの巨体の攻撃を食らって少し押される程度って辺りは凄いな……
などと思っていると、唐突に全身の重さが消える。
咆哮の力が失われた……? 効果時間のようなものが過ぎたのだろうか?
まあ良く分からないが、重力の増加がなくなったのなら好機と言うもの。
……勝手に暴れて勝手に全て壊してくれるなら、それはそれで楽だが……重要な情報が得られる装置も壊されてしまいかねないからな。一気に叩き潰してしまわないと。
そう考えた俺は、即座にスフィアを全て展開し、融合魔法をありったけ叩き込む。
無論、装置を壊さないように注意しつつ、だ。
「相変わらずとんでもないわねぇ……」
呆れ気味にそんな事を口にしつつ、再びチャージショットを放つ灯。
「こっちも行くぜ!」
「ん、合わせて仕掛ける。うん」
ウルとロゼが同時に竜へと踏み込む。
「私も攻撃に転じますね!」
「今度こそ斬るよ!」
ユーコとシズクもまた、そんな風に言いつつ竜へと攻撃を仕掛けた。
それはまさに一斉攻撃。あるいは飽和攻撃。
その圧倒的な火力の前に、さすがの竜も耐えきれず、
「グガギャァアァァアァァァアァアアァァッ!! し……真なる竜の力を得た我が……こうも……容易く負ける……? 敵の数が……多いから……か? 否……。竜の力は……何千何万もの……人間を……相手に出来る……はず……。ならば……何故……だ……? もしや……力が……不完全……だった……の……か……?」
などという言葉を残し、その全身が崩壊。灰と化して消えていった。
「それはそうでしょう。こちらには一騎当千が複数いますから。……って、もう聞こえていないですね」
と、そんな事を呟くユーコ。
その呟きに俺は、まあたしかにそうだな。ちょっと竜の力が足りていなかったのは間違いないな。
なんて事を思うのだった。
今回、普通にやると2話どころか3話くらいになりそうな感じだったので、さすがにそれは冗長すぎると思いまして、大幅に圧縮して1話に収めました……
さて、そんなこんなで決着がついたわけですが……前々回の後書きに書いた通り、物語が全体的に間延びしてしまっているので、現在ラスト(この章のラストではなく、この物語全体のラスト)までの全プロットを見直して修正しております。
その為、平時の更新間隔で2回分お休みいたしまして、9日後の2月11日(土)が次の更新となる予定です(プロットがかなり長く、修正に時間がかかってしまっており申し訳ございません……)




