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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第216話[表] 赤い鱗の竜、ファイアドレイク

<Side:Yuko>

「ふっ!」

 一気にグインデュロムへと肉薄したシズクさんが得物の双鎌を素早く振るいます。


 しかしその直後、ガキィンという甲高い音が響いたかと思うと、グインデュロムと双鎌との間に突然出現した青く光る盾によってその攻撃が弾かれてしまいました。

 

「っ!」

 即座に連撃を繰り出すも、全て盾によって弾かれてしまうシズクさん。

 

「……それのどこが似ているのだ?」

「そんなに焦らなくても、まだ準備中だよ」

 シズクさんはグインデュロムの問いかけにそう返しつつ、グインデュロムの周囲を飛び回るように移動しながら攻撃を仕掛けていきます。

 

 ですが、その全てが盾によって弾かれてしまいます。

 ……あの盾、一体どういう仕組みなのでしょう……?

 

 と、そんな事を思っている間に、シズクさんが大きく跳躍してこちらへ戻ってきます。

 

「はぁ、やれやれ……。全然攻撃が通らないだなんて……ねっ!」

 ため息混じりにそんな事を言った直後、グインデュロムを中心に無数の斬撃が発生し、グインデュロムを襲います。

 

「ほう、これは……。……むっ?」

 余裕そうな表情をしていたグインデュロムが何かに気づいたように視線を下に向けます。

 その視線の先では、白いコートの一部が深く斬り裂かれており、そこからコートの内側――肌が露出しているのが見えました。

 ですが、その肌は……

「……赤色の……鱗?」

 そう表現する以外に、表現のしようがない肌でした。

 

「ほう、盾の可動域を突破し、更に防刃障壁を埋め込んだコートを斬り裂くか。たしかになかなか面白いな。もっとも……我が変革せし肉体に傷を付けるには、今ひとつ足りなかったようだが」

 なんて事を言いながら、纏っている白いコートを脱ぎ捨てるグインデュロム。

 

「変革? その赤い鱗がかい?」

「然り。これこそは竜の鱗……。ドラグ族とは違う『真なる竜』の証だ」

 首を傾げながら問うシズクさんに、そんな風にグインデュロムが返した直後、唐突に空気が振動しました。

 そしてそれと同時に、グインデュロムの姿が白い光に包まれ、何かに変化していきます。


 この感じは……地球に居た頃に、何度も見てきた人がキメラへと変異する時の……?


「とりあえず斬ってみようか」

 などといいながら、シズクさんが巨大化を続ける白い光へと斬りかかりますが、その刃はまるで霞を斬るかの如く、白い光の中を通り抜けるだけに終わりました。

 

「……実体が……ない? いや、これはユーコと同じくアストラル体と化している……かな?」

 そんな風にシズクさんが言った通り、たしかにどことなく自分と同じアストラル体である事を感じ取る私。

 

「そうですね。多分、それで間違いないと思います」

 そう私が告げると、シズクさんは大きくバックステップしてこちらに戻ってくると、

「やれやれ、それなら変身が終わるまで待つしかないね」

 と、肩をすくめながら言いました。

 

 そうこうしている内に白い光が新たな姿を形作っていき……って、この赤い竜は……

「――ファイアドレイク……?」


「ほう、その名を知っているとは……。つまり、貴様は我と同じく『向こう』へ渡って戻って来たか、単純に『向こう』から渡って来た存在……というわけか」

 私の呟きを聞いたグインデュロムが、そんな反応を示してきます。

 

 向こうというのは地球の事でしょう。そしてそれは……

「――なるほど、貴方は『竜の血盟』の人間……というわけですか」

「いや、さっきからそう言って――」

 私の発言に対して、ちょっと呆れ気味な表情のシズクさんでしたが、そこまで言った所でなにやら納得したかのような表情へと変わり、一度言葉を切りました。

 そして顎に手を当てながら、

「ああそうか、まだこの辺りの言葉はノイズになるんだっけね。そうそう、あいつは『竜の血盟』さ」

 と、そんな風に言葉を続けてきます。

 なるほど……先程のノイズは『竜の血盟』でしたか。

 

「しかし、向こう側……か。つまりあいつは『異界渡り』とか『異界帰り』なんて呼ばれる連中だね。まあ、ユーコもある意味同じ様なものだけど」

 以前、ロデリックさんやゼルディアスさんから聞いた話では『異界』というのは、この世界の人々にとっては『良い印象を持たない言葉』との話だったので、これまで自分たちから異世界――地球からこの世界に来た事を話したりはしないようにしていましたが、シズクさんはあまりそういった印象を持っていないような感じだった為、なんとなく問いかけてみます。

「……『異界』というのは『良い物だと思われていないネガティブな言葉』というのが一般的ですが、シズクさんはあまり嫌悪しないんですね?」

 

「まあ、ミ――仲間も同じようなものだって言ってたし、そもそも私は『異界』が『■■■■』を模した、あるいは『■■■■』の文化や技術で生み出された、『■■■■』と呼ばれる物である事を知っているからね。嫌悪する理由など別にないよ」

「その通りだ。『異界』を嫌悪するのは、この世界の真実を――この世界の真の姿を何も知らぬ愚民どものみよ」

 ファイアドレイクの姿となったグインデュロムが、シズクさんに同意するようにそんな事を言ってきます。

 

 ミスズと言おうとして止めたのは、竜の御旗だと思われない為……ひいては、ミスズさんの行動に悪影響が出ないように……といった所でしょうか。

 

「そんな同意の仕方はしないで貰いたいものだね。私は何も知らない人間たちの事を愚民だなんて思っていないし。……ああ、ウチの家の人間とか貴方みたいな外道の事は、ある意味愚民だと思っているかも」

 なんて事を肩をすくめながら返すシズクさん。

 

 う、うーん……。なかなかの挑発というか、戦う為に敢えて煽っているというか……『バトルマニア』の顔が出てきていますね……これ。

 

「くくっ。この姿を見てもなお、そのような事が言えるとは面白い。良かろう、高次元の存在たる力、見せようではないか」

「そうそう、そうしてくれるかな。私も『竜』と一度やり合ってみたかったしね」

 人間体だった時よりも少し好戦的な感じで言ってくるグインデュロムに対し、そんな風に返しながら、双鎌を構えてみせるシズクさん。

 

 ……シズクさんひとりに任せるわけにもいかない為、私もまたアストラルエッジを生成し、構えを取りました――

竜という名の付く組織が多数ある割には、モンスターとしての『竜』は、ほぼ皆無と言ってもいいんですよね、この世界……(異界こと別のコロニーには居ますが……)


ちなみに、シズクのセリフの■■■■になっている所ですが……

「まあ、ミ――仲間も同じようなものだって言ってたし、そもそも私は『異界』が『別の文明』を模した、あるいは『別の文明』の文化や技術で生み出された、『コロニー』と呼ばれる物である事を知っているからね。嫌悪する理由など別にないよ」

という感じです。


とまあそんな所でまた次回! 

……なのですが、申し訳ありません……次の更新も平時より1日多く間が空きまして、1月21日(土)を予定しています。

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