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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第207話[表] 3度目の正直

<Side:Akari>

「――ここかしら?」

 私はそう問いかけながら、レンガ造りの大きな倉庫を眺める。

 倉庫と言っても、昔近くにあった工場で造られた飛行艇――それも戦艦級――を保管しておく場所として使われていたらしく、かなりの大きさがあったりする。

 

「ん、間違いない。本来の目的地が制圧された事で、慌ててここに移動したっぽい。うん。隠蔽が下手すぎだったし」

「敢えて追いかけさせてきた可能性は……いえ、さすがにないですね」

 ロゼに続くようにユーコがそう言って頭を振る。

 

「そうだね。わざわざこんな方法で待ち伏せするくらいなら、素直にさっきの車両基地で待ち伏せしている方がよっぽど効率的だしね」

 シズクが首を縦に振って同意しつつ、肩をすくめてみせると、

「もう少し早く作戦を決行していたら、地下城塞か車両基地で決着をつけられたかもしれないが……ま、どうにかギリギリセーフって所か」

 なんて事を腰に手を当てながら言ってため息をつくロディ。

 

「まあたしかに、なんだかんだで2回も空振ったしね……」

 私がやれやれと首を横に振ってみせると、

「――2度ある事は3度あるじゃなくて、3度目の正直である事を願うぜ」

 と、そんな事を言ってくるウル隊長。

 

「まったくだね。ちなみにまた逃げられる可能性はないのかい?」

「ああ、そこは大丈夫だ。拠点Bの制圧を終えた蓮司たちの部隊が周辺を封鎖するように動いている所だ」

「なるほどね。またもぬけの殻じゃなければ、取り逃がす心配はなさそうだね」

「それに関しては、あの中に『怪しい奴ら』がいるのをクレアボヤンスで確認済みでな、今度こそ確実に決着を付けられるはずだ。……ただ――」

 シズクの問いかけに対し、蒼夜が頷いてそう答える。

 うん? なんだか歯切れが悪いわね?

 

「ただ?」

 私が首を傾げながら問いかけると、

「――倉庫内に置かれている『コンテナ』の中が、どういうわけか『視えない』んだ」

 なんて返してきた。


「クレアボヤンスで透視出来ないモノってあるの?」

「……先日の深層とかみたいに、『ぼやけて視える』事はあっても、ここまで視えなかった事はないな」

 再び問いかけた私に対し、そんな風に答える蒼夜。

 

「異能を封じる、あるいは遮断する力……ねぇ。珠鈴のテレポートを封じる装置とやらをどこかが開発しているという話はあったけど……もしかしたら、それが完成していて使われているのかもしれないね。アレと同種の力なんだよね? それ」

 シズクが顎に手を当てて思考を巡らせながら、そう問いかけると、

「ああ、同種といって問題ないだろう。しかし……『竜の御旗』は、そんな物を作っていたのか……」

 と、返す蒼夜。

 

「……実の所、珠鈴の動きを警戒している『銀の王』ってのがそれなりに居てね。もしもの事が起きた際にテレポートを無力化すべく、そういう代物を開発している……って前に私と繋がりのある『銀の王』から聞いたよ」

「そうなのか。しかし、珠鈴が警戒されているとはな……」

 シズクの説明を聞いた蒼夜がそんな風に言って腕を組んだ所で、

「まあ? 主に君たちのせいなんだけどね?」

 と、呆れた表情で返して肩をすくめるシズク。

 

「ん? それはどういう事だ?」

「君たちが『黄金守りの不死竜』なんて組織を立ち上げて、何かの目的に向かって大規模な行動を開始したじゃない? だから、珠鈴がそれに繋がりがあるんじゃないかって思われたってわけさ」

 首を傾げる蒼夜に対し、シズクがそう説明する。

 

 うーん……。たしかに『同じ出身地』で『何度か接触している』という事を考えたら、そう思われてもおかしくはないわよね。状況的に。

 なんて感じでシズクの説明に納得していると、

「なるほど……言われてみるともっともだな。珠鈴が何をしようとしているのかは知らないが、間接的に妨害してしまった感じがあるな……」

 と言って、申し訳無さそうに頭を振る蒼夜。

 

「ま、君たちが大規模な行動を開始しなかったとしても、いずれ警戒を強められていたとは思うけどね。珠鈴って、作戦の方針に反対したり、方針通りに動かなかったりする事が多かったし。……まあもっとも『人道的』に見たら、珠鈴の言動は正しいんだけどさ」

 シズクが頬に手を当てながらそんな風に言う。

 

「それはまた実に珠鈴らしいな。……だがまあ、そうであれば……その装置――とりあえず『サイキックジャマー』とでも名付けるか――を奪取しておきたい所ではあるな。解析して、可能なら無力化する手段を生み出したい所だし」

 と、そんな風に言った蒼夜に、

「いわゆるジャマーキャンセラーを作るわけね。でもたしかにそのジャマー、私たちにも大いに影響がありそうだし、対策出来るのであればそれに越したことはないわよね」

「だな。俺もサイコキネシスが使えなくなるのは少々面倒だ」

 と、そう返す私とロディ。

 

「ん。レンジから封鎖の為の配置が完了したって連絡が来た。うん」

「お、そうか。それなら早速踏み込むとしようか」

 携帯通信機を見ながら告げてきたロゼにそう返し、倉庫へと視線を向ける蒼夜。

 

「ようやくこの作戦も大詰めですね」

「そうね。まあ、蒼夜のクレアボヤンスで視えなかった代物が何なのか不明な以上、気は抜けないけど、それでもようやく終わりが見えてきたわね」

 ユーコの問いかけに対してそう返事をしながら、私もまた蒼夜に続くようにして、今回の作戦における、最終決戦の場となるであろう倉庫へと視線を向けた――

というわけで(?)思ったよりも長引いている制圧作戦も大詰めです。


……が、申し訳ありません。

次の更新も平時より1日多く間隔が空きまして……12月15日(木)を予定しています……

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