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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第205話[表] 辿り着いた先には……

<Side:Akari>

「――ここが、『竜の御旗』が何かしていた場所?」

「ああ。蓮司の得た情報と照らし合わせてもここで間違いない。……が、特に何もないな」

 私の問いかけにそんな風に答えてくる蒼夜。

 

 そう……『竜の御旗が集まって何かをしていたと思われる場所』へとやってきたものの、そこには特に何もなかった。

 

「うーん……。『竜の御旗』の残党もいなかったし、既にここでの目的は達成し終えて撤収した後……って感じなのかな?」

 シズクがそう言いながら周囲を見回した後、

「あるいは、どこかに隠し通路がある……とか?」

 と、言葉を続けた。

 

「いえ、周囲の壁を全てすり抜けてきてみましたが、特に隠し通路のようなものはありませんでした」

 ユーコが壁から姿を現しながらそんな風に言ってくる。


「うーん……。壁をすり抜けられるとか、アストラル体というのは便利だね」

「こういう時は便利ですけど、不便な所も多いんですよねぇ……。慣れましたけど」

 羨ましそうに言ってきたシズクに対し、ため息交じりにそう答え、やれやれと首を横に振ってみせるユーコ。


 たしかにメリットとデメリットがあるわよねぇ……

 というか……この世界に来るまでは、デメリットの方が多かったような気がするわ……

 そういう意味では、この世界に来られたのは良かった事なのかもしれないわね。


 なんて事を思っている間に、

「まあ、『ここで何かをしていた』と言っても、単純に拠点――会合の為に集う場所として使っていたとか、別の場所で何かをする為の資材置き場や作業場として使っていたとか、そういう可能性も十分に考えられる話だしな」

 と、そんな風に言うロディ。

 それを聞いた蒼夜が、腕を組みながら、

「たしかにその可能性は十分にある。だがなぁ……」

 なんていう歯切れの悪い言葉を返した。

 うーん……。おそらくだけど、蒼夜の中に私と同じ疑念があるんじゃないかしらね?


 というわけで、

「でも、その為だけにターン制の術式やら機幻獣やらを設置したりするのかしら? ちょっと不自然というか、侵入者への対策が少し過剰すぎる気がするわ」

 という言葉を投げかける私。

 

「そう、そこだ。俺もそこが引っかかっているんだ」

「そうだな。言っておいてなんだが、俺としてもそこまでの防護策を講じておいて、会合の場や資材置き場として使っていたとは考えにくいと思っている。ただ、作業場という可能性だけはあり得るとも同時に思っているんだ」

 蒼夜の言葉に頷きつつ、そんな風に言うロディ。

 その意味がいまいち良く分からず、首を傾げる私。

「というと?」

 

「ここで作っていた物が『どこか』で使う『重要な物』であったのなら、それだけの防護策を講じていたとしてもおかしくはないだろう?」

「なるほど……。たしかにそうね」

 ロディの説明に納得してそう返した所で、

「だとすると、ここからその既に完成済みの『重要な物』とやらが、どこかへ運び出された……という事になりますね」

 と、顎を人差し指で軽く叩きながらそんな風に言うユーコ。

 

「他の拠点も同時に制圧中だから、仮に他の拠点へ運び込まれているのであれば、そっちで発見出来ると思うが……もし、完全に別の場所へ運ばれていたりしたら、ちと厄介だな……」

 蒼夜はそう言うと顎に手を当て、どうしたものか……といった感じで思考を巡らせ始める。

 

「追跡するにしても、この場所って広いからね。出口もあちこちにあるし、どこをどう通ってどこから外に出たのかを探るのは少々骨が折れそうだよ。――ああ、そもそも外に出ていないって可能性もあるね」

「そうねぇ。気絶させた奴らから、何らかの情報を引き出すという手もあるけれど……それをしている間に手遅れになるかもしれないって事を考えると、悠長にそうしているわけにもいかない状況よね……」

 シズクに対して頷きつつ、そんな風に告げる私。

 

「もっとも、『重要な物』を『どこかで使う』という話は、あくまでも俺の推測でしかないから、全然違うという可能性もあり得るけどな」

「かと言って楽観視して手遅れになったら、それこそ目も当てられないわよね」

 ロディの言葉に対し、私はそう返しながら肩をすくめてみせる。


「――とまあ、そういう感じなんだが、何か関係しそうな情報や物を見つけた所はあるか?」

 蒼夜がいつの間にか携帯通信機で話をしていた。

 

 他の部隊に聞いているみたいね。

 なにか良い情報が得られればいいのだけれど……と、思っていると、

「――鉄道の車両基地へ繋がるルート……? なるほど……。ちょっと気になるな。わかった、こちらで調べてみる」

 なんて事を言って通信を終了した。

 

「その感じだと、何か分かったみたいですね」

「うん。鉄道の車両基地とか言ってたよね」

 私とユーコがそんな風に蒼夜に言葉を投げかけると、

「ああ。クーからの情報だが、この場所から駅の近くにある車両基地の中まで繋がっていて、直接車両基地の中へ出られる所があるらしくてな。警備隊内の『内通者』たちが残していた記録の中に、そのルートについての詳細を記したものがあったそうだ。しかもいかにもな赤線と赤丸の書き込み付きで」

 と、そう説明してくる蒼夜。

 

「それはまた、いかにも『計画書』って感じだね……。魔法探偵シャルロットで何度か見た事あるよ」

 なんて事を言って、やれやれと首を横に振るシズク。

 

 ……そう言えば、魔法探偵シャルロットってどんなのか気になって、全巻読んだけど、そういう計画書が出てくる話が何度かあったわねぇ……

 物語としてみたら、同じネタ何回使うのよって感じだけど、実話が元になっている話だし、同じようなやり方をしている犯罪者が複数いたとしても、別におかしな話ではないわよね。

 

 なんて事を考えていると、

「正直、いかにもすぎて偽装である可能性も大いに考えられるが……他に有力な情報もないし、とりあえず調べてみるのが一番だろう」

 と、そんな風に蒼夜が言った。

 

「そうだな。で、どう進めばいいんだ?」

「うーん……。一応地図を写した物は送られてきているから、それをもとに進めばいい……んだが、これは一度外に出て直接車両基地へ向かった方が早い気がするなぁ……」

 頷いて問うロディに対し、そう言いつつ携帯通信機の画面を私たちの方へと見せてくる蒼夜。

 

 すると、そこにはたしかに地図を撮影したと思われる写真が映し出されていたが……

「……複雑すぎですね……。うっかり道を間違えそうです……」

 と、ユーコが口にした通り、その地図に記されていたルートはかなり複雑で、その通りにしっかり進めるのか、正直怪しい程だった。

 

「うん、明らかに一度外に出た方が早いね」

 腕を組みながらそう言ってくるシズクに対して私は、

「そうね。わざわざダンジョン攻略に付き合う必要はないわね。行き先が分かっているわけだし」

 と返しつつ、肩をすくめてみせる。

 ショートカット出来るならショートカットしないと、よね。

 

「ま、そういうわけで一度外に出るとしよう。車両基地に行くなら保安隊とも合流したい所だしな」

 という蒼夜の言葉に私たちは頷き、来た道を引き返し始めた――

ダンジョンの出口が複数ある場合、こういう手もありなんですよね。

……まあ、ゲームとかだと何故か出口だけ複数あって、入口はひとつしかないなんてのもありますが。


てな所で、また次回! 次の更新ですが、どうにか平時通りの間隔でいけそうなので、12月7日(水)を予定しています!

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