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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第203話[裏] 絶対防御陣

<Side:Coolentilna>

「――絶対防御陣!? 完成していたですか!」

 私がエリスさんの展開する蒼く輝く障壁を見ながらそう叫ぶと、

「つい先日、組み込み終わった所ですわ。まさか、いきなり使う場面があるとは思ってもいなかったですけれど」

 なんて返事してきたのです。

 

「オルティリアに来る時に、エステルがそんな事を言っていやがりましたねぇ。本当に組み込んだんですねぇ」

 と、ティアさん。

 そ、そう言えば、オルティリアに先行した際に同行したエステルさんが、そんな話をしていたと蒼夜さんが言っていたですね……

 

「何にしても、良いタイミングで来やがりましたねぇ」

「たしかにその通りなのです」

 ティアさんの言葉に同意し、

「そのまま爆炎を防ぎながら前に進めるですか?」

 という問いの言葉を続ける私。

 

「ええ、問題ないですわよ。まあ……本来は構えている間――この障壁を展開している間は動く事が出来ない代物だったそうですけれど、構えたまま無理矢理動けるように改造した……と、エステルさんはそう仰っていましたけれど」

 そんな風に返答してくるエリスさん。

 

 む、無理矢理動けるように改造したですか……

 まあ……動けないようでは、掻楯(かいだて)と大差ないですし、どうにか構えたまま動けるように改造したくなるのも分からなくはないのです。

 

「ただ、動けはするものの展開中は動きが異様に鈍くなるので、あそこまで踏み込むには効果時間が足りないですわ。無論、両手でこれを持っている以上、攻撃など出来ませんわよ」

 そう言いつつ、ゆっくりとこちらへ近づいてくるエリスさん。


 ……なるほどなのです。効果中に移動速度が落ちるという欠点がある……と。

 無理矢理動かせるようにした弊害……といった所なのですかね? どういう理由でそうなるのかが謎すぎるですが……

 

 それはそれとして――

「攻撃は私たちがするので問題ないのです」

 そう返事をしつつ、並の魔法では爆発ひとつ程度で相殺されてしまって、あの異形まで到底届かないだろうと考える私。

 

 そして、それならばどうすればいいのか……なのですが……

 ううーん……。ここは先程と同じように……いえ、それだけではおそらく足りないのです。

 となると……

 

「1回ぶつかりあった程度で相殺されてしまわねぇような高威力の魔法を、目眩ましおよび体勢崩しの為に使いつつ、直接踏み込んで叩く……くらいしかねぇですねぇ。相手の頭上や足元から攻撃する魔法もさっき試してみたんですけどねぇ。どうも誘導が乱されて当たらねぇんですよねぇ」

 まるで私の思考を読んだかのように、私と同じ考えを口にするティアさん。

 そのティアさんに対して頷く私。

「はいです。そうするのが最良だと思うです」


 そして、魔法が当たらないという件について、言葉を続けて説明したのです。

「それと……頭上や足元から攻撃する魔法は、この爆発を生じさせている魔煌波の調律――それを異形自らが行っているせいで、あの異形に届く前に、一緒に調律されて掻き消されているのだと考えられるのです」


「なるほどですねぇ。面倒ですねぇ……」

「はいです。面倒なのです……。だからこそ、最後は直接踏み込んで叩くしかないのですよ」

 そんな風に話をしている間に、私の近くまでエリスさんがやってきて、

「さあ、来ましたわよ! 私の後ろにいてくれれば、しっかりと障壁で防ぎますわ!」

 と、そう言ってきたのです。

 

「わかったのです!」

 私は返事をするなり、エリスさんの後ろへと即座に移動。

 

 絶対防御陣によって爆炎はかき消され、こちらまで届かないものの、正面でドカンドカン爆発している中を前へ進むのは、なかなか勇気がいるのです。

 効果時間がある事を考えると、なおさらなのです。

 そんな中を突き進める辺りは、さすがはエリスさんと言った感じなのです。

 

「これはまた、なかなかに落ち着かない光景でやがりますねぇ……」

 私たちの所へと合流してきたティアさんは、そんな風に呟いた後、

「あと、どのくらい持ちやがる感じですかねぇ?」

 と、エリスさんに対して問いかけたのです。

 

「障壁のオーラの強さからすると……おそらくあと30秒といった所ですわね」

「それなら、急いで仕掛けるのです! ――《冥キ重圧ノ穿閃》!」

「そうですねぇ! ――《翠風の疾駆》! 《銀幻の避膜》!」

 エリスさんの言葉に対し、即座に魔法を発動させる私とティアさん。

 

 ティアさんのは……素早く動けるようになる魔法と、魔法攻撃――正確には変異した魔煌波の攻撃に対して、代わりに弾け飛ぶ形で、一度だけ無効化する魔法なのです。

 これなら、一気に踏み込める上に爆発も一度なら防げるのです。

 

 そう考えながら、《冥キ重圧ノ穿閃》の魔法によって生み出された黒い螺旋状のビームが、爆発を貫き、異形の眼前へと迫ったのをこの目で確認。

 と同時に私は再度変化。一気に天井まで跳躍したのです。

 

「グガァッ!?」

 掻き消しきれなかった黒い螺旋状のビーム――と言っても、かなりか細い物になってしまっていたですが――が、異形に命中。

 大幅に減衰されてしまっている為、ひるませる程度の威力しかなかったものの、これで十分というものなのです。

 

「はっ!」

 という掛け声と共に私は天井を蹴り、一気に急降下。

 ローリングしながら異形に激突したのです。

 

「ガッ!?」

 大きく仰け反る異形。

 私は変化を解除し、ハンマーを縦に振るう。

 

「グガァァッ!?」

 ハンマーの一撃をまともに食らった異形を床に叩きつけ、そこに更に追撃の一打。

 

 連続して大きなダメージを食らいながらも、バク転するかのような動きで後方へと飛び退――

「逃しませんわよ!」

 という声と共に、いつの間にかそこにいたエリスさんが斧を振るい、それを阻止。

 

「ガアアアァァァァァアァァァアアァァァッ!」

 斧によって深々と斬り裂かれた異形が、苦悶の咆哮を発する。

 

「あの爆発ブレスのようなものを防ぎ、更にスピードで負けないようにすれば、数的に有利なこっちが圧倒出来てしまいやがるんですよねぇっ!」

 そんな風に言いながら、異形へ魔法で追撃を加えるティアさん。

 

 まあ、一見すると2対1から3対1になっても、戦力が5割増しになる程度に感じるですが、私たちのこの構成なら、実際にはそれ以上――それこそ2倍以上の戦力増加となるので、圧倒出来るようになるというのは、ある意味、もっともな話ではあるのです。

 

 ……なんにせよ、これで思ったよりも苦戦させられてしまったこの異形を、どうにかこうにか倒せるというものなのです――

というわけで、あの時(オルティリアに来る際の列車内で)話をしていた絶対防御陣の登場となりました。

絶対防御と言いつつ、実の所防げない物もあるので、完全無敵というわけではないですが……


とまあそんな所でまた次回! 次の更新ですが、再び所々諸々の事情により、平時よりも1日多く間隔が空きまして……11月30日(水)を予定しています……。申し訳ありません。

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