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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第199話[Dual Site] 拠点同時攻略作戦 Phase4

<Side:Rose>

「何奴っ!?」

 攻撃に気づいた内通者たちがこちらを向きながら、各々の得物を構える。


 うん、警戒しつつ戦闘態勢へ移行する速度も悪くない。

 でも、うん、この時点で周囲を警戒しているようじゃ遅い。

 もしこれが生死を問わずに掃討する状況だったのなら、うん、今頃は一掃し終わっている。うん。

 そんな事を思っていると、内通者たちに対して、ウル隊長が律儀に「俺だ」と短く告げた。


「た、隊長!? な、何故!?」

「それはこちらのセリフだ。上に連れて行けと言ったのに、何故拘束を解こうとしている?」

 驚愕と共に問いかけてくる内通者に向け、静かな怒りを込めながら問い返すウル隊長。

 

「そ、それは……」

「ああ、答えずとも構わん。問いかけておいてなんだが、既に答えは知っている。――お前たちが、竜の御旗に内通していた事は、な」

 返答に困って口籠る内通者に、ウル隊長がそう告げつつ背中に背負った大剣を抜き放つ。

 

 ウル隊長は他の武器も扱えるが、うん、これの腹で殴れば殺さずに気絶させられるからと、保安隊でこれをメインにしているらしい。うん。

 ううーん……。それならば、棒術具とかハンマーとかでいいんじゃないかと私は思うけど、うんまあ……敢えてそこに突っ込むつもりはない。うん。

 

「な……っ!?」

「そ、そんな事は……」

 内通者たちが狼狽する。

 それはもう肯定しているも同然だと思う。うん

 

「隊長は私たちを疑っているのですね。……それでしたら――」

 先刻、部下を代表して承諾の言葉を口にしたドルモーム族の内通者がそんな事を言ってく……って、甘い。うん。


 言葉を発しながら一斉に放ってきた魔法を、霊力の刃で纏めて叩き斬る私。

 この程度の魔法でどうにか出来ると思っているのだろうか。うん。

 そう思ったが、内通者たちはその場から離脱し始めた。

 

 ……なるほど。今のは単なる目くらまし……と。うん。

 

「ま、さすがにアレでロゼや俺をどうこう出来るたぁ思っちゃいねぇようだな。ある意味、良い判断だぜ」

 なんて事を言って笑うウル隊長。


「ん、たしかになかなかやる。うん。でも――」

「――状況判断がアメェといつも言ってんだがなぁ……」

 私とウル隊長がそう口にした直後、私たちから見て、内通者たちを挟んだ反対側から保安隊の『第2部隊』が迫ってくる。

 

「挟撃の可能性を考慮していないとか、致命的。うん」

 私はやれやれと首を横に振りながら内通者たちの後をゆっくりと追う。

 

 これでこっちは片づ……。……っ!?

 

「おいおい、マジかよ……」

 ウル隊長が面倒くさそうに内通者たちの方をみて呟く。

 

 それもそのはず。

 内通者たちが獣――いや、魔物へと転じ始めたのだから。うん。

 

「例の『薬』が、ここで出てきやがるとはな」

「うん。5人とはいえ、ああなると結構厄介かもしれない。うん」

 得物を構えたまま首を横に振ってみせるウル隊長に対し、私はそう返す。

 

「……!? なん……だ? 動く気が起きない……? 何故俺は戦いを観戦しようとしている……? いや……戦おうと思わなければ、他の事は出来る……?」

 ウル隊長が、自分の身に唐突に起こった違和感を、驚愕と困惑の入り混じった声でそんな風に口にしてくる。

 だけど、私の方は特に何ともない。

 

 ……それはつまり――

「うん……これは……『ターン制』とかいう術式……!」


 こちらの方が人数的に有利な状況ではあるが、この術式を使われると、同時に動ける人間が制限されてしまう為、その数的有利がかなり失われてしまう。

 数の少ない方は、1対多の戦いよりも1対1の連戦の方が遥かに楽なのだから。

 こんなもの、いつの間に仕掛けられていたのか……


「ううん……。ちょっとばかし時間がかかりそう……」

 私はやれやれだとため息をつきながら、円月輪を構えた――

 

                    ◆

 

<Side:Akari>

「――ターン制の術式……!?」

 蒼夜が携帯通信機への着信を確認しながら、そんな風に言ってくる。

 その情報は、どうやらロゼとウルからもたらされたものらしい。


「ここでそれが出てくるとはな……」

「……もしや、拠点に踏み込まれた時の為に仕掛けられていた……のでしょうか?」

 ロディの言葉に対してそんな推測を口にするユーコ。


「かもしれないね」

 そんな同意の言葉を口にしたシズクに続く形で、私はこれからの行動方針についての意見を述べる。

「だとしたら、まずは術式を無効化するのが良さそうね……。この術式、放っておいたら面倒だし」

 

 それに対してロディが腕を組み、

「そうだな……そうするのが良いだろう。問題は術式の展開規模だが……さすがにオルティリア全域だとか、そんな広範囲に渡って展開出来ているとは思えない。であれば、術式はあの時と同じ規模……か?」

 と、思考を巡らせながら言ってきた。

 

「だろうな。ま、とりあえず例の術式の魔法陣が周囲にないか、ちと確認してみるとするか」

 そう言って周囲を見回し始める蒼夜。

 もちろん、ただ見回しているだけじゃなくて、クレアボヤンスを使っているのだろう。

 そんな蒼夜の様子を見ながら、ユーコが告げる。

「近くにあるようならば、私が破壊してきますね。壁も天井も私にとっては障害たり得ないですし」

 

 うーん……。こういう屋内では蒼夜のクレアボヤンスとユーコの機動力は抜群のコンビネーションって感じよね……

 

 なんて事を思っていると、

「……周囲にそれらしいものはないように見えるな……。何かで隠蔽されているのか、離れた場所にあるのかは不明だが……」

 と、蒼夜がそんな風に言ってくる。

 

「離れた場所だと、厄介ね……」

 そう口にした私に続くようにして、

「ひとつでも見つけられれば、以前と同じように《玄キ影身ノ幻舞闘》の幻影体を利用する事で、他の魔法陣を探知出来るのですが……」

 などと言って、ため息をつくユーコ。

 

「ま、奥へ進みながら探すしかないな……。無論、『竜の御旗』の連中にも注意しつつ……な」

 というロディの言葉に私たちは頷き、まだ残っている『竜の御旗』の奴らを警戒しながら、ターン制の術式の魔法陣を探すべく、足早に歩を進めた――

リアルタイムな戦闘を『ターン制』にしてしまう無茶苦茶な術式と、魔物化の薬が久しぶりの登場となりました。

そして、これを『竜の御旗』が使っているという事は……?


といった所でまた次回! 次の更新は平時通りの間隔となりまして、11月15日(火)を予定しています!

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