表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
514/764

第195話[表] 動き出す竜の御旗

<Side:Akari>

 《竜の座》についての話をしてから2日後の朝……『竜の御旗』に動きがあった。

 

「――例のアパルトメントの連中が、全員地下に潜ったのを確認したよ」

「地上を警戒する必要がなくなった……つまり、地下で動き始めたという事だね」

 シズクの言葉に対し、顎に手を当てながら彩香がそう返す。

 

「地下城塞で何かしていた連中については、蒼夜たちの情報をもとにウチの隊の奴らを送り込んで、そのポイントを把握済みだぜ。全部で3ヶ所ありやがった」

「結構な警戒が敷かれていたはずだけど、よくもまあ見つからずに把握出来たものだね。さすが……というべきかな?」

 レンジの発言に、シズクが腕を組みながらそんな風に言うと、

「ああ、たしかに見張りが多くてちょいとばかし面倒だったが……ま、あのくらいならどうとでもなるさ」

 なんて事を、頷きながらサラッと言って返すレンジ。

 

 レンジの隊……多分、ヴァロッカの時に休暇と称して護衛に来ていた面々よね。

 シャルや広捜隊になる前のロディやゼルの上司とかが所属していた傭兵団の人間が、数多く所属する部隊……だったかしら。

 『ちょいとばかし面倒』で済む辺り、たしかに『さすが』と言えるわねぇ……

 

「警備隊内の不穏分子が動き出した事も掴んでいます」

 ジャンさんがメガネをクイッとお仕上げながらそう告げると、

「こいつぁもう、『作戦』が本格的に始動したと断定してよさそうだな」

 と、左の手のひらに右拳をパシンと打ち付けながら、そんな風に言うゼル。

 

「そうだな。これから速やかに部隊を編成して、昼過ぎには全拠点に同時突入出来る状態にするとしよう。ロゼ、鉄道運行保安隊に伝えておいてくれ」

 蒼夜がゼルに対して頷きつつ、そう言ってロゼの方へと顔を向けると、ロゼは「ん、了解」と短く返事をして、携帯通信機を取り出す。

 

 そんな様子を腕を組んで眺めていたエリスが、ため息混じりに呟く。

「……結局、あの者たちの動きこそ掴めたものの、『作戦』の全容については、全くこれっぽっちも掴めていない状態なんですのよね……」

 

 たしかにそうなのよねぇ……と、私が心の中で同意した直後、

「そうだね。広捜隊が南エレンディアで遭遇したっていう、小規模な悪党集団の『変異』や『霊体』――怨念を封じ込めていた術式、あれらを再び引き起こそうとしている……という所までは掴めたんだけど、結局あれも何を目的としていたのかが、私たちにもサッパリ分からなかったりするからね……」

 なんて事を口にして、やれやれと首を横に振るシズク。

 

 って、ちょっと待って――

「……え? あれって、今ここに来ている『竜の御旗』の連中が黒幕だったの?」

 私が驚きつつそんな風に問いかけると、シズクの代わりにロディが、

「……あの時の状況――『黄金守りの不死竜』の動きも踏まえて考えると、まあそんな事だろうとは思っていたが……よもや、このタイミングでサラッとそれが確定するとはな……」

 と、額に手を当てながら返事をして、ため息をついた。

 

 相変わらずというかなんというか……シズクからは、いきなり重要な情報が出てくるわねぇ……ホント。

 

「ちなみに、首謀者……というか作戦を主導しているのは、アレストーラ教国の崩壊時に、彼の地から逃げおおせた後、地下に潜伏している――いえ、潜伏していた七聖将たちの最後のひとり……でいいんですよね?」

「うん、そこは間違いないよ」

 ユーコの問いかけに対し、頷いてそう答えるシズク。

 

 そして、そのまま何故かユーコの方へと数歩ほど歩み寄りながら、その全身をじっと見つめ……いえ、舐め回すように見たと言うべきね。これは。

 

「ど、どうかしましたか?」

 シズクの行動の意味が理解出来ず、少し後ずさりながらそう問いかけたユーコに対し、

「あ、ううん。前に比べて大分強くなったなーと思ってね。その強さなら、あいつ――その七聖将も単独撃破も可能だと思うよ? 正直、七聖将なんていっても……先代と違ってザコだし……」

 なんて事を告げるシズク。

 

「ん、完璧にソウヤの『強化』の影響を受けている。うん」

「みたいだね。何故か私には影響が出ていないけど」

 ロゼの発言にそう返しつつ、シズクが蒼夜の方へと顔を向ける。

 それに対して蒼夜は、

「この力は、明確に『味方』だと俺が認識していないと効果が発生しないみたいでな。シズクは俺の中では、まだ敵でも味方でもない……そんな認識だから、そりゃ何も起きないだろうよ」

 と、そう言いながら肩をすくめてみせた。

 

「おや、それは残念。でもまあ、ユーコは私に近い戦い方をしている上に、私と違って上下にも動けるし、壁や床もすり抜けられる。私よりもトリッキーな戦い方が出来るという点では楽しみだね」

 全然残念そうじゃない表情でそんな事を言いながら、ユーコへと顔を向け直すシズク。

 

「え、えっと……。何が楽しみなんでしょう? あ、いえ、分かりますけど分かりたくないというかなんというか……」

 なんて事を言いながら、更に後ずさるユーコ。

 

 ……まあ、どう考えても『戦り合う楽しみ』よねぇ……

 いえ、もっと正確に言うなら、『殺り合う楽しみ』かしら…… 

 などと思っていると、

「まあ、そういう意味じゃあ灯の方も楽しみだけど」

 と、そんな風に言って、私を見てくるシズク。

 

 ちょっ!? 私の方にも矛先が向いた!?

 シズクの相手をするのは、面倒そうでちょっと……いや、かなり嫌なんだけど!?

 

 ……って、あれ?

 でも……そういえばなんだかんだで、シズクの戦闘能力って直に見た事が無いような……

 

 ――ま、今回の『竜の御旗』の一件で見られそうな気がするし、しっかり見ておきたい所ね。……もし、相手をする事になってしまった時の事を考えて。

というわけで(?)次回から『竜の御旗』制圧作戦です。

ここから《竜の座》『地下城塞深層の遺跡』と連続で展開していく形になります。


といった所でまた次回!

次の更新も申し訳ありませんが、平時より1日多く空きまして……11月2日(水)の予定です。

ただ、その次からは平時の通りの更新間隔に戻れると思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ