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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第189話[表] 離脱と新たな探索先

<Side:Akari>

「あわよくば、あの水の巨人も消えてくれぬかと思ったのじゃが、どうやら無理なようじゃのぅ……。ここは一旦撤退するとしようかの」

 そう告げるエステルに私とユーコは頷き、障壁の消えた通路へと全力で向かう。

 そして、障壁のあった場所を抜けた瞬間、

「あれ? 水の巨人が消えたよぉ?」

 というアリシアの声が耳に届く。

 振り向くと、たしかに水の巨人の姿は跡形もなく消えていた。

 

「でも、妙な『歪み』は残ったままのようなのです。多分、もう一度踏み入ったら出現すると思うです」

 そんな風に告げてくるクーさん。

 

「なるほどのぅ。あくまでも『トラップ』というわけじゃな」

 エステルが、顎に手を当てながらそう呟くように言うと、

「あ、あんなのもトラップなんすか……?」

 と、驚きと困惑の入り混じった表情でツキトが問いかけた。

 

「そうですわね。普通の遺跡ではあまり見かけないですけれど……万単位や億単位といった途方もないくらい過去の遺跡――いわゆる超古代文明の遺跡では、たまに幻獣や魔物が出現するトラップというのがありますわよ」

「それって、今回みたいに特定の場所へ足を踏み入れると発動するような感じかしら?」

 リリアの説明に対し、私がそんな風に問う。

 

「ええ、その通りですわ。他にも……そうですわね、変わり種のトラップではありますけれど、『宝箱』と見せかけて、開けた瞬間に魔法陣が起動して宝箱が幻獣や魔物の召喚装置に早変わり! なんていうのもあったりしますわね」

 なんていう説明を頬に人差し指を当ててしてくるリリア。

 

「うわぁ、なかなかイヤラシイねぇ……それ」

 アリシアがやれやれだと言わんばかりの表情でそう呟き、首を横に振ってみせた。

 

 ……要するに、見下ろしタイプのRPGでよくあった『宝箱の中には魔物が潜んでいた!』という奴ね。

 どうやってそんな所に潜んでいるのよ? っていう突っ込みを何度もした事あるけど、宝箱型の召喚装置だと考えたら納得出来なくもないわね。

 3Dの後方視点が主流になってからは、宝箱そのものが魔物の擬態の奴以外は、ほとんど見かけなくなったけど。


 と、そんな事を考えていると

「まあ……なんじゃ。SWゾーンブレイカーで消えなかった以上、ただの魔法ではない事は間違いないのぅ。――アカリ、ユーコ、すまぬがあの水の巨人について、詳しく聞かせて貰えぬかの?」

 エステルがそう言って私とユーコの方を見てくる。

 

「そうね。幾つか試した事も含めて話すわ」

 そんな感じで切り出し、私とユーコは水の巨人について説明し始める。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「――とまあ、そんな感じなのよ」

 そう言って私が説明を終えた所で、

「ふぅむ……凍らせても再生するとなると、なかなかに厄介じゃのぅ」

「完全に蒸発させてしまえば、復活しなさそうな気はするよねぇ」

 と言ってくるエステルとアリシア。

 

「そうっすね。逆に、おそらくっすけど……毒では駄目な気がするっすね」

「それはどういう理由なんですか?」

「凍らせても駄目だったわけっすから、毒で再生力が失われたりはしない気がするっす。むしろ、融合して逆にパワーアップする可能性すらあるっすよ。――そういう異界の魔物をアカツキ皇国で見た事があるっす」

 首を傾げるユーコに対し、そう答えるツキト。

 

「なるほど……。そのような魔物が……」

 と言って、ユーコが納得の表情をした所で、

「そうですわね。この世界の害獣や魔獣には存在しないですけれど、異界の魔物の中には『何かを取り込んで力を増す』という性質を持つものがいるんですのよねぇ。……というより、そういったこの世界の害獣や魔獣が有さないような、特異な性質を持つ奴が多いというべきかもしれませんわねぇ」

 なんていう説明を、補足するように言ってくるリリア。

 

 うーん……。良く分からないけど異界っていうくらいだし? その世界の環境に適応した独自の生態系……みたいなのがあって、そういうのが何か影響しているんでしょうね、きっと。

 

 私はリリアの説明をそんな風に解釈して飲み込むと、

「となると、一撃で蒸発させるしかないって事よね? あれだけの巨体を一撃で蒸発って出来るのかしら……」

 という疑問の言葉を口にする。

 

「ソウヤの融合魔法ならいけそうな気がするのぅ。さっきの巨人程度なら、軽く飲み込めるような物もあったような気がするしのぅ」

「相変わらず融合魔法は無茶苦茶な火力ねぇ……」

 私がそう言って肩をすくめてみせると、エステルが腰に手を当てながら、

「というより、ソウヤの融合魔法が高火力すぎるんじゃよ。さっきも言ったがの、妾たちが研究開発しておる疑似融合魔法は当然として、普通の融合魔法でもあんな威力にはならんのじゃからのぅ」

 なんて事をため息混じりに言い、首を横に振った。

 

「まあなんにせよ、こっちの道は一旦ここまでにしておくのが良さそうなのです。他のルートを調べるのです」

「そうだねぇ。あ、私たちが進んだ通路は、ある程度進んだ所で左右に分岐してたよぉ」

 クーさんの発言に同意するように頷き、そう告げてくるアリシア。

 

「こっちは例の壁が、なんらかの魔力が流れると『すり抜ける壁』になる仕組みになっておりましたわ」

「要するに、どこかの仕掛けを起動すると先に進めるようになるという事じゃな」

 リリアの説明に続くようにして、エステルがそんな風に言ってくる。

 

「……あれ? 壁をすり抜けるだけなら、ユーコでよくない?」

 話を聞いていて、ふとそんな風に思った私は、ユーコの方へと顔を向け、呟くようにそう問いかけながら首を傾げる。

 

「……そう言われるとそうですね。その壁の向こう側を覗いてみましょうか? その上で、どうするかを判断すれば良い様な気がします」

「ふむ、なるほどのぅ……。たしかにおぬしらの言う通りじゃな。壁の向こう側にあるものがわかれば、仕掛けを探してその先へ進むべきかの判断が出来るのぅ」

 ユーコの提案に対し、エステルが顎に手を当てながら、納得の表情でそんな風に肯定の言葉を返す。

 

「それなら、早速行ってみるとするっすかね」

「だねぇ。レッツゴーだよぉ」

 というツキトとアリシアの言葉に、私たちは頷き移動を開始する。

 

 はてさて、わざわざ仕掛けを施してまで隠すような通路の先には、一体なにがあるのやら……って感じね。

 まあもっとも……なんとなくではあるけど、この先もまだ迷路が続いているだけな気はしていたりするんだけど……ね。

ただの壁ならば、ユーコはすりぬけられますからね……


といった所でまた次回!

次の更新は平時通りとなりまして、10月12日(水)の予定です!

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