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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第185話[表] 分かたれる通路、分かたれる戦力

<Side:Akari>

「……ふと思ったのじゃが、こっちは7人いるとはいえ、二手に別れたら向こうより戦力が落ちる気がするのぅ。あ、いや、別に妾やお主らが弱いと言いたいわけではないぞい」

「いえ、どう考えてもあちらの4人と比べたら、私たちは弱いと思いますよ」

 エステルのフォローの言葉に対し、サラッとそんな風に返すユーコ。

 

 一見すると自虐の言葉に感じられるけど、客観的に見た事実なのよねぇ……これ。

 なので――

「そうね。それについては否定出来ないわね。戦闘力という面では、ロゼとシズクのふたりがいる時点で高すぎるし……」

 と、そう同意の言葉を述べる私。

 そして、そこにツキトが続く。

「同感っす。聖上もシズクに近い戦闘能力を持つという話っすから、あっちはあの4人だけで、こっちの1.5倍近くの戦力だと考えて良いと思うっす」

 

「あと、蒼夜さんも物理的な戦闘能力や霊力まわりは他の3人に劣るですが、魔法と異能というふたつの特徴を加味した場合、同等以上な気がするのです」

「そうですわね。あんな超弩級の融合魔法を使える人間は他におりませんわね」

「同じ融合魔法でも、どういうわけか威力が段違いじゃからのぅ……。サイキックという異能が魔煌波に影響を与えて、魔法の威力を増幅しておるんじゃないかと妾は思っておる。……まあ、本人は良く分かっておらぬようじゃがな」

 クーさん、リリア、エステルが、蒼夜に関してそんな風に言った。

 

 サイキックが魔煌波に影響を与える……ねぇ。

 たしかに私の使う魔煌弓の威力も、蒼夜の力による補正を抜いてもかなり上がっているし、なんらかの影響を与えている可能性は否定出来ないわねぇ……

 

 なんて事を、通路脇の水路の見ながら思考しつつ歩いていると、

「早速、通路が分かれているっすけど、どうするっす?」

「しかも、3つもあるねぇ……」

 というツキトとアリシアの声が聞こえてきた。

 うん? と思い、視線を向けてみると、たしかに通路が3つに分かれていた。

 

「これ、それぞれの通路を同時に進むとなると……2人、2人、3人に分けるしかないわよね……」

「そうですね。一気に戦力がダウンしてしまいますね……」

 私の言葉に同意しつつ、そう返してくるユーコ。

 

「ま、今日の所は偵察がメインみたいなものじゃし、ある程度通路の先を見たら一度ここまで引き返してきて、7人全員で進む通路を決める方が良い気がするのぅ」

 顎に手を当てながらそんな風にエステルが言うと、

「それなら、アカリとユーコで1組、エステルと私で1組、クーとツキトにアリシアで1組とするのが妥当な気がしますわね」

 という提案をリリアがしてきた。

 

「そうっすね。その組み合わせが一番良さそうっすね」

「だねぇ。アカリもユーコも今や私たちより強いし、クーさんがこっちに居る方が助かるよねぇ」

 ツキトとアリシアがそんな風に言ってくる。

 

 それに対して、これって……肯定しても否定してもツキトやアリシアが弱いって言ってる事になるんじゃ……? と、そんな風に思った私は、

「――私は特に異論ないわね。この組み合わせでいいんじゃないかしら?」

 という感じで、強さ云々の所には触れずに返事をして、ユーコの方を見た。

 

「そうですね。それで良いと私も思います」

 頷いてそう告げてきたユーコに続く形で、

「了解なのです。それで……それぞれどの通路に行くのです?」

 と言って、3つの通路を見回すクーさん。

 

「ふむ……。左右の通路は、正面の通路に比べて少し狭い感じじゃのぅ。こっちは妾たちかアカリたちが行くのが良さそうじゃな」

「でしたら、私は奇妙な意匠の施された壁が奥に見える左の通路が良いですわね。あの壁、ちょっと調べてみたいですわ」

 エステルに対してそう返すリリア。

 なるほど……。たしかに左の通路の奥に、奇妙な意匠の施された壁があるわね……

 

 まあ、そういう事なら、そっちは専門家に任せるとして……

「それなら、私たちが右に行くわね」

 と、ふたりに対して告げた。

 

「ありがたいですわ! さあ、エステル! 早速調べに行くとしますわよ!」

 リリアが私たちにそう返すなり、エステルを掴んで左の通路の先へと走って……じゃなくて、飛んでるわね。床スレスレを。

 と、同時に、

「そんなに慌てずとも、壁は逃げんじゃろうがぁぁぁ……!」

 という掴まれて引っ張られていくエステルの叫びが通路に響く。

 

 ……なんだか珍しい光景を見た気がするわねぇ……

 なんて事を思っていると、

「むむっ、負けてられないかもぉ。さあ、私たちは真っ直ぐ進むよぉ。レッツゴー!」

 などと言い放って、全力で走り出すアリシア。

 

「ちょ、ちょっと待つっす! 何に負けるって言うんすかぁ!?」

 と声を大にして呼びかけながらアリシアを追うツキト。

 そしてそれを見ながら人差し指で頬を掻いていたクーさんが、

「ま、まあ、こっちは任せるのです。灯さんとユーコさんも気をつけるですよ」

 と、そう私たちに告げるなり、犬の姿へと変化。

 ふたりを追いかけるようにして壁を駆ける。

 

 ……本当に、アリシアは何に対しての勝負をしているのかしらね……

 っていうか、クーさんもクーさんで、なんでわざわざ壁を走って……?

 

 なんて事をクーさんを見送りながら考えていると、

「……まあ、ここに立っていても仕方ありませんし、私たちも行くとしましょうか」

 と告げてくるユーコ。

 

「そうね……。幸い……というべきなのか、RPGとかに出てくる遺跡型のダンジョンと違って、ここはモンスターが彷徨いているって事はないっぽいけど、魔獣とか異界の魔物とかが突然現れる可能性が十分にあり得るし、一応慎重に進みましょうか」

「そうですね。このガルディエナの深層付近は、他の所と違って妙な力が働いているようですし、注意するに越した事はありませんね」

 私の言葉に対し、ユーコが頷いてそんな風に返してくる。

 

 そうなのよね……。こういった長い間、人が足を踏み入れていない遺跡って、どういうわけか魔獣や異界の魔物といった厄介な存在が出現しやすいって話だから、確実にどこかで遭遇する事にはなりそうな気がするのよねぇ……

なにやら不穏な事を考えていますが……?


といった所でまた次回! 次の更新は平時通りとなりまして、9月27日(火)を予定しています!

が……その次は諸々の都合により、再びいつもより更新間隔が空きそうな感じです……

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