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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第1章 アルミナ編
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第41話 次の目的地と連射魔法杖・改

 そんなわけで、俺はテレポータルをくぐり、ディアーナの領域へと引き返してきた。

 と、その直後、なにやら後方――テレポータルの向こう側から何かの駆動音が聞こえてくる。

 何かと思い振り向くと、テレポータルを通して例の昇降機が来た道……というか、魔障の消えた通路を戻っていっているのが目に入った。

 

「誰もいないから戻り始めたんですかね?」

「おそらくー。まあー、あの遺跡に関しては謎が多いのでー、私にも良くわかりませんけどー」

 手を広げて首を左右に振るディアーナ。

  

「わからないと言えば、森もそうですね」

「ああー、そっちは今ちょっと感知を飛ばしてみた感じですとー、魔獣の反応は確認出来ませんでしたねー。念の為にー、後でちょっと目視で確認して貰えればー、と」

「わかりました、後で少し確認しながら歩いてみます。……それにしても、やはりあの化け物が原因だったんですかね……」

 と、そこまで言ってふと思う。奴は例の現象――この世界に転生するはずだった者が他の世界に転生してしまう現象――と何か関係があるのではないか、と。

 

 なにしろ奴の封印を強化した事で、この世界と異界とを隔てる次元境界とやらが正常化したのだ。だとしたら、奴が次元境界に異常をもたらす――歪める事によって、例の現象が起きている可能性もなくはない。

 

 その事をディアーナに話すと、ディアーナはしばし思考を巡らせた後、

「可能性自体はありますがー、世界全体で見るとー、あの1体だけではそこまでの影響力はありませんねー。……ただー、他にも封印されていれば別ですねー。あの遺跡自体がー、私が生み出されるよりも前の時代の物であるせいかー、情報が皆無なのでー、他に同じような遺跡があってもー、おかしくはありませんからー」

 と、見解を述べてきた。

 

「なるほど……。となると、やはりあの遺跡が作られた時代の記録――手がかりを探す必要がありますね」

「はいー、そうなりますねー。……頼ってしまって申し訳ありませんがー、よろしくお願いしますー。私も別の方向から調べてみますー」

 俺の言葉に対し、そう返して頭を垂れるディアーナ。

 

 ……ふむ、そうなってくると、首都――ルクストリアへ行った方が良さそうだな。さすがにアルミナの町じゃ、その辺りの情報は得られそうにないしな。

 と、ルクストリア行きを決めた俺が頭を垂れているディアーナに対し、気にしないでいいと言おうとした所で、ディアーナがふと何かを思い出したかの様に顔を上げる。

 

 そして、俺よりも先に言葉を紡いできた。

「っと、それはそうとソウヤさんー、あの遺跡に行く前にー、報告と相談があるとー、言っていましたよねー? 相談の方というのはー、なんなのでしょうー?」


 ……あ、そう言えばそうだった。あの化け物のせいで、すっかり忘れていたなぁ。

 

 ……というわけで、俺は例の『連射魔法杖試作型』について、ディアーナに説明をした。

「なるほどー、魔法を連射出来る杖ですかー。なかなか面白いですねー。問題はー、魔力の供給……ですかぁ……むむむぅー」

 こめかみを人差し指を当て、考え込むディアーナ。

 

 そのまま数分程待っていると、突然ポンッと手を打ち、

「――アポートとー、アスポートでしたっけー? ソウヤさんの持つー、物質転送の異能をー、利用してみるのがー、いいかもしれませんねー」

 なんて事を言ってきた。どうやら、何か思いついたらしい。……は、早いな。

 

 まあ、例の現象やあの化け物みたいなのじゃなければ、大半の情報はすぐに得られるみたいな事を言ってたしな。

 ……ん? って事は……その手の物以外なら、ディアーナに相談すれば、割となんでも解決するっていう事なんじゃ……?

 

 などと思いつつ、問いかける。

「アポートとアスポートを利用……ですか?」


「えーっとですねぇ……って、説明するよりもー、試した方が早いですねぇー。これを腕にはめてくださいー」

 そう俺に言葉を返しながら、8と∞を重ねたような刻印がされている銀色の腕輪を、差し出してくるディアーナ。

 

 なんだかよくわからないが、とりあえずそれを受け取り、そして眺める。

 腕輪の下部がスライドする仕組みになっており、腕時計の様に輪の幅を調整出来るようだ。なかなか不思議な感じだな。

 

「これは?」

「それはー、極小のテレポータルをー、生成する事が出来るー、腕輪ですー」

「へぇ……極小のテレポータルを生成出来るんですか」

 俺はそう返しつつ、輪の幅を調整しつつ、右腕に腕輪をはめる。アクセサリーとしても十分かっこいい気がするな、コレ。

 

「そうですー。まあ……とはいってもー、生成出来るテレポータルがー、小さすぎるのとー、条件が必要なせいでー、あまり使い道がなかったのですがー、今回は多分ー、それでいけますー。よいしょっとー」

 そう言うなり、俺の右腕を左手で抑えてくるディアーナ。

 

 と、その直後、ホログラムを思わせる魔法陣が腕輪の紋様部分に現れる。

「まずはここをこうしてー、次はこっちをこうしてー、っと」

 ディアーナがそんな事を言いながら、その魔法陣を右手の指で何度かつつくいたり、なぞったりし始める。

 

 ……なにかを作動させているんだろうか?

 って、そう言えば宿で飲んだ缶ジュースとか、おいてあった時計とかも、紋様をつついたりなぞったりすると、動作していたっけな……

 

 ――とまあ、そんな事を思い出しながら、ディアーナの指の動きをしばし眺めていると、

「はいー、これで腕輪の方はオッケーですー。ではー、次の準備に移りますのでー、その魔力供給装置とやらをー、全部出してくださいー」

 と、告げてきた。

 なんだか良く分からないが、その言葉に促されるまま、とりあえず、魔力供給装置を全て次元鞄から取り出す事にする。

 

「あややー? 思ったよりもー、小さいですねー」

 全部取り出し終えた所で、そんな言葉を投げかけてくるディアーナ。

 

「えっと……そう見えるのは多分、このだだっ広い空間に設置しているからではないかと……」

 というか、汎用のデカイ方でも、無限に広がっているんじゃないかと思う程に広大な、この空間に設置したら小さくみえるような気がするぞ。


「あー、たしかにそうですねー。納得ですー。……っとと、それはそれとしてー、たしか供給に時間がかかるんですよねー? エネルギーラインを繋げてー、圧縮充填が可能かどうか試してみますねー」

 と、ディアーナ。何を言っているのか良く分からないが、とりあえず相槌を打つ。

 すると、ディアーナは魔力供給装置1つ1つに、何やら印を刻み込み始める。

 

「杖の魔力をー、空にしてみてくださいー」

 印を刻み終えたディアーナがそう言ってきたので、俺は一般的な槍の穂先より一回り大きな、鋭く尖った氷柱を飛ばす『蒼氷の飛槍』と呼ばれる魔法が撃てる杖を取り出すと、その先端を前方へと向けた。

 

 連射魔法杖というだけはあり、ほんの一瞬で回路が光り始める。

 それを確認した俺は、魔法――氷柱を発射する。もちろん、一発ではなく連射だ。

 

 魔法杖によって生み出された無数の氷柱が、前方へ向かって一直線かつ高速で乱れ飛んでいくその様は、まるでマシンガンの如き凄まじさであった。

 なんというか、並の害獣や魔獣であれば、これだけで瞬殺出来そうである。

 

 しばらくの間、氷柱を連射し続けていると、回路が徐々に光を失っていき、遂に光が完全に失われたその瞬間、氷柱もまた発射されなくなった。

 

「どうやら魔力が尽きたようです」

「はいー。ではそれをくださいー」

 言われるまま、俺は魔力切れになった杖をディアーナへと手渡す。

 

「で、これをー、ここに設置してー、っと」

 俺から受け取った杖を、魔力供給装置に設置するディアーナ。

 

 と、自動的に魔力供給装置が稼働し、杖に魔力を供給し始める。

 ……そして、10秒もしないうちに杖が光を放った。これが魔力の充填が完了したという合図である事は、エステルの店で確認済みだ。

 だが、充填までの時間がかなり短い。エステルの店で実際に試した時と比べても、異常だというべき程の早さで充填が完了していた。

 

「あっさり充填が完了したようですが……これが、圧縮充填とやら……なのですか?」

「その通りですー。魔力供給装置の供給魔力をー、一点に集める事でー、通常以上の魔力回復量とー、回復速度を得る……というのがー、圧縮充填ですからー」

 俺の問いかけに対し、杖を手に取ってあれこれと確認しながら、そう返してくるディアーナ。

 

「うんうんー、大丈夫そうですねー」

 しばらく杖を確認していたディアーナが、首を縦に振りながら言う。

 

「大丈夫、というと?」

「過剰魔力を吸収出来ないタイプのー、魔煌具もあるのですがー、どうやらこれはー、過剰魔力を吸収出来るようなのでー、一安心、という事ですー」

 と、ディアーナ。ふむ……どうやら、圧縮充填に対応している魔煌具と、対応していない魔煌具があるっぽいな。まあ、こいつは対応しているっぽいので、問題はないみたいだが。

 

「さてさてー、それでは、その腕輪の出番ですねー」

 そう言いながら、テレポータルを開くディアーナ。繋いだ先は例の夜明けの巨岩だ。……って、なんだか、随分と薄暗いな。

 

「それではー、向こう側へ行ってみてくださいー」

「えーっと……とりあえず、向こう――夜明けの巨岩へ行けばいいんですね」

 相変わらず良く分からないが、促されるままテレポータルをくぐる俺。

 

 夜明けの巨岩の上に立ち、周囲を見回すと、丁度太陽が登ってくる所だった。

 ……いつの間にか、夜になるどころか一晩が過ぎていたようだ。どうやら俺たちは、一晩中あの遺跡の中にいたらしい。

 それにしては、まったく眠くないのが不思議だが、まあ……戦闘やらなにやらで、気分が高揚していたからかもしれないな。地球でも経験あるし。

 

 なんて事を考えていると、後ろから、

「一旦閉じますのでー、閉じたのを確認したらー、例の引き寄せでー、杖を引き寄せてみてくださいー」

 というディアーナの声が聞こえ、テレポータルが閉じる。

 

 この状態でアポート? 普通にやったら無理な気がするが……。まあ、なにか考えがあるのだろう。

 ならとりあえず、やってみるとするか――

もうあと2話くらいで、第1章は完結する予定ですっ!

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