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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第180話[Dual Site] 別邸、そして彩香とシズク

<Side:Akari>

「――凄くキレイな砂浜ですね。さすがはリゾート地といった感じです」

「ええ、私もそう思うわ。夏だったら泳ぎたいくらいよ。というか……随分と白い砂ね、これ」

 リグノルド海岸――の砂浜――の光景を眺めながら、そんな感想を口にするユーコと私。

 

「この白い砂は、元々は海底にあった光属性と幻属性の魔晶や魔石だったそうなのです。それがなんらかの衝撃で砕け、海の水と混ざりあった事で融合反応が生じ、『属性の力』が失われた事で『色』もまた失われて、こういう形になった……らしいのです」

 という説明を、横にやってきたクーさんがしてきた。

 

 ゆ、融合反応って……

 なんというか……白い砂が出来た理由が実にファンタジーって感じだわ。

 いやまあ、ファンタジー世界だから当然なのかもしれないけど……


「それで、別邸というのはどれっすかね? 別荘と思しき家が、海岸沿いの道にずらーっと並んでるっすけど……」

 額に手をかざしながら、道に並ぶ家々を眺めつつ、もっともな問いを口にするツキトに対し、

「地図のガイドだと、この道の一番奥っぽいねぇ」

 と、携帯通信機の地図アプリ的なものを見ながら告げるアリシア。

 

「なら、とりあえずそっちへ行ってみましょうか」

 私はそう言って海岸沿いの道を歩き始める。

 にしても、大きい家が多いわねぇ……


 ……

 …………

 ………………


 ――なんて事を思いながら歩いていたが、エリスの家の別邸は、大きいどころの話ではなかった。

 これまで見てきた家が小さく見える程に大きい。

 しかも少し高い丘にあり、見晴らしも抜群そうだった。

 

「凄くデカいわね……」

 それ以外の感想が出てこない私に、

「そうですね……。別邸と言っていましたが、これで別邸ですか……」

 という同意の言葉を返ししつつ、別邸を見回すユーコ。

 

「丘の向こう側がプライベートビーチになっているみたいだねぇ」

「ウチの実家と同じくらいあるっすね……。本邸はどれだけ大きいんすかねぇ……」

 アリシアとツキトが、私たちに続くようにしてそんな風に言う。

 ……って、ちょっと待って。

 

「――ツキトの実家って、こんなに広いのぉ?」

 アリシアが私の思った事を、私よりも先に口にする。

 まあそうよね、そう思うわよね。

 

「あー……アカツキ皇国は上に向かって広げないで、横に向かって広げる傾向にあるんすよ。なので、必然的に広くなりがちなんすよ」

 と、ツキトがそんな風に頭を掻きながら答えてくるが、それにしたってこれと同等の広さっていうのは相当な気がするけど……なんて思う私。

 

「それより……呼び鈴の類がないっすけど、どうすればいいんすかね?」

 話題を変えるかのようにそう言いながら周囲を見回すツキト。

 

「たしかに何もありませんね……。門が開いていますし、勝手に入ってしまって良いという事なのでしょうか?」

「どうなんだろうねぇ? ……って、あ、誰か来たよぉ」

 ユーコに対してアリシアがそんな風に返したように、正面を見ると、執事風の男性がこちらに向かって歩いてくる所だった。

 

 そのまま待っていると、その執事風の男性が、

「――エレンディアからお越しになられたエリスお嬢様のご同僚の方々でございますね? ようこそおいで下さいました」

 と、そんな風に言ってくる。

 

 ……エリスお嬢様……

 うんまあたしかにその通りなのだけれど……改めてそう言われると、なんだか妙な感じがするわねぇ……

 

                    ◆

 

<Side:Souya>

「結局、珠鈴は来なかったのか」

「話はしたんだけどね。他にやる事があるからって言われて無理だったよ。……正直、そのやる事って、今すぐどうにかしないといけない件じゃないから、単に逃げただけな気しかしないけど……ね」

 俺の発言に対し、そんな風にぶっちゃけてくるシズク。

 ……逃げたのか……。まあいいけどさ……

 

「それにしても……なんとなくそんな気はしていたけど、やっぱりキミは『青虎(せいこ)』の一派に属する『蒼葉月家(あおはづきけ)』の出だったんだね」

 彩香がそう言いながらシズクへと視線を向ける。

 

「ま、あんな腐った家はとっくの昔に捨てたけどね。『技』だけは、『奥義』も含めてありがたく使わせて貰ってるけど」

 そう言って肩をすくめるシズクに、

「奥義……ね。蠱毒(こどく)の如き方法を用いた末に伝承する者が決まるアレを使えるという事は、『そういう事』なわけだね」

 なんて事を言う咲彩。

 

 蠱毒の如き方法……か。

 要するに『奥義を伝承するに値する候補』同士で殺し合わせて、最後に残ったひとりに伝承する……とかそんな感じなんだろうな。なかなかにエグいやり方だ。

 

「そこまで分かるなんて、さすがは現・巫皇(かんなぎのおう)サンだね」

「ま、巫皇じゃなくても知ってる人間は多いと思うけどね? もっとも……私はあのやり方が正しいとは思えなくてね。今回の内乱のついで……というのもあれだけど、家ごと『潰させて』貰ったよ」

「いいんじゃないかな? あんな腐った家は根から焼き払った方がいいと思うし。むしろ、その『潰す』のに私も参加したかったくらいだよ」

 彩香に対し、シズクが残念そうな表情でそう言って笑う。それはもう愉快だと言わんばかりに笑う。

 そして、一呼吸置いてから、

「それで? 奥義を継承している者のひとりである私も『消す』つもりかな?」

 と、彩香に対して殺気を込めた視線を向けながら問いかけた。

 

「――今もあの家と繋がりがあるのならそうするかもしれないけど……どうやら繋がりがあるわけじゃないみたいだし、好きにすればいいと思うよ。私は奥義を消したいわけじゃなくて、あの家を消したいだけだしね」

 彩香はやれやれと首を横に振りながらそう答えると、腰の刀――彩香が本来使う武器は変形する斧……のような代物だが、さすがに普段から持ち歩いていると邪魔なので、こういう所では刀にしている――に手を置きながら、

「むしろ……キミさえよければ、私の直属の手下にならないかい?」

 などという誘いの言葉を投げかけた。

 

 そんな風に言われたシズクはというと、唐突な誘いの言葉に理解が追いつかず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして硬直していた。

 

 それを見ながら俺は、まあ……普通に考えれば、唐突すぎてそうなるだろうなぁ……なんて思うのだった。

海の水と混ざり合うと何故属性力が失われるのかは……まあ、この世界の『海』には『船を出す事が出来ない理由』(なので、船は空を飛ぶ形となったわけですが)と関係があったりします。


とまあそんな所でまた次回! なのですが……すいません、次も平時よりも1日更新間隔が空きまして、9月10日(土)の更新を予定しています!

なお、次の次か更にその次あたりまで、この間隔での更新となりそうです…… orz

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