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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第169話[表] 隠されし太古の遺産

<Side:Souya>

「まさか、蒼夜が来ているとはね。いや、アルミューズ城の一件を考えたら、やってくるのは当然なのかな?」

 地図を眺めながら、そう言ってくるシズクに続いて、

「アルミューズ城の一件? それは何ですの?」

 という、もっともな疑問を口にするエリス。


「昨日話した裏位相コネクトゲートの件だな。そこへ向かう為にひとりの男が、あれこれと問題を起こしてくれてな……。偶然観光で訪れた俺たちがそれに出くわして、討獣士として対処したんだ」

「ああ……。そう言えばこっちでも少しだけ話題になったな。途轍(とてつ)もなく強い討獣士の一団があっという間に事件を解決したとかで。まあ、その頃は今のように携帯通信機なんてまだなかったから、新聞記事程度の内容でしか、情報は入って来なかったけどな」

 俺の説明に続く形でロディがそんな風に言う。

 

 やっぱり、携帯通信機の影響力って凄まじいよなぁ。

 出回ってから2年もしないで色々なアプリや通信を利用したシステムが生み出されて、多くの人が所持しているのが当たり前に近い代物となったし。

 まあ、地球でもこれと似たような性能を持つスマホが普及した際は、その影響力は凄まじいものだったし、ある意味当然と言えば当然なのかもしれないけど。

 

 なんて事を思っていると、

「なるほど……そんな事がありましたのね。ちなみにその首謀者というのは?」

 という問いを口にするエリス。

 それに対して、俺が予想はついているが不明だと答えるよりも先に、

「今は『竜の御旗』に組み込まれている、イルシュバーンの共和制を廃して、王制復活を目論む亡霊連中のひとりだね」

 などとサラッと告げてくるシズク。

 

 ……やっぱり、その連中だったのか。

 しかし……なんとも唐突に予想から確定に変わったものだ……

 

「その言い方だと、なんだか敵意があるように感じるけどぉ?」

「あるよ? どうにかして潰したいと思っている連中だからね。まったく……力づくでどうにか出来れば楽なのにねぇ……」

 アリシアの問いかけに対し、ため息まじりに再びサラッと答えてくるシズク。

 随分と簡単にしゃべるな……

 

「……『竜の御旗』が一枚岩ではないのは知っていましたが……組織内でそこまで敵対している者たちがいるとは少し想定外ですね」

「そうかい? エレンディア警備局も似たようなものだと私は思うけどね?」

「まあ……実に不本意ですが、否定出来ませんね」

 ジャンは、シズクの返事に対してそう答えると、額に手を当てながら首を横に振ってみせた。

 

「ところでぇ……シズクは、こんな地図ばっかり用意して何をしようっていうのぉ?」

 シズクに対してド直球で目的を問うアリシア。ある意味、さすがというべきだろうか。

 

「そうだね……。クシフォス帝が隠した太古の遺産探し……みたいなものかな」

「太古の遺産? 隠した? どういう事ですかねぇ?」

 アリシアに代わる形でティアが問いかけると、

「クシフォス帝が、この街の地下――ガルディエナの破壊に力を入れていた……というのが歴史書に記されているのは知っているかい?」

 という問いの言葉を返すシズク。


「それはまあ、さすがに知っていますけどねぇ。それが何かに関係するんですかねぇ?」

「うん。実はそれはガルディエナの奥に存在している太古の遺産を隠すためだった……というのが、私たちの持つ『情報源』で分かっていてね。それの位置を特定したいのさ」

 ティアの返事を聞いたシズクがそんな風に説明する。


 なるほど……太古の遺産とやらがガルディエナの奥にあるのか……

 太古というくらいだし、そいつも俺が以前手に入れたミラージュキューブや、シャルの刀のように、ウン億年前の代物とかなのだろうか?

 

 俺はそんな思考を巡らせつつ、

「だが、隠したのなら、地図からも抹消されているんじゃ……?」

 と、そう口にした所でふと気づき、顎に手を当てながら推測の言葉を紡ぐ。

「……いや、待てよ。お前たちが持つ『情報源』とやらに残されている地図とここに保管されている地図を比べて、『差』がある場所を見つけ出せば……?」


 

「うん、そういう事だよ。そこが『太古の遺産の隠し場所』の候補になるって事さ」

 シズクが俺の推測に頷いて肯定し、そう返した所で、

「……なるほど。たしかに広大なガルディエナを虱潰(しらみつぶ)しに探すよりは、圧倒的に早いか……」

 と、ロディが呟くように言う。まあ、たしかにその通りだな……

 

「それにしても、そこまで彼の皇帝が徹底的にやりやがって隠そうとしやがった物とは、一体全体どんな代物でやがるんですかねぇ?」

「それは、私にも分からないんだよね。まあ……100年前に『とんでもない物』をガルディエナの奥で発見したと主張する考古学者がいたらしいんだけど、その発見した場所も、どんな物だったかも曖昧にしか覚えていなかったせいで、『新発見』とは認められなかったんだってさ」

「そんな事がありやがったんですねぇ。でも、100年前とはまた、随分と近い過去ですねぇ」

「……いや、ウン千ウン万ウン億という年月の経過した遺物や遺跡ばかりを見てきたり関わってきたりしたせいで、たしかに100年くらいだと近い過去になってしまったが、一般的な感覚で言えば100年でも十分かなりの時間経過だぞ?」

 ティアの発言に対し、呆れ気味にそう告げて肩をすくめてみせる俺。

 

 それにしても……100年前というと、俺がこの世界に来て最初にディアーナから聞かされた話――『この世界で死んだ者がこの世界に転生せずに、他の世界に転生してしまう』という事象が、突然起こり始めるようになった時期だよなぁ……


 これまで、『ホロウ・エクリプス』という現象が同時期に起こり始めた……というくらいしか手がかりがなかったが……もしかしたら、その考古学者が発見した『とんでもない物』とやらは、その事象の『原因』に繋がっている可能性があるな……


 ……無論、何の関係もない可能性も同じくらいありえるんだが……

 でも……なんとなく、今回は何かが進展しそうな雰囲気がしてるんだよなぁ……

 まあ、あくまでもなんとなく……ではあるけど。

この物語の冒頭から延々と謎のままになっている件が遂に進展! ……するかもしれません。


といった所でまた次回! 次の更新は平時通りとなりまして、8月1日(月)を予定しています!

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