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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第163話[裏] ガルディエナ地下城塞と門

<Side:Souya> 

「……ああ。――エステルは一応『ドラグーン・セブンス』だ。まあもっとも、幹部というよりは……技術顧問に近い立ち位置だけどな。でまあ、そんな立ち位置な事もあって、おおっぴらには言っていないから、なるべく秘匿しておいてくれると助かる」

 そう言って肩をすくめてみせる俺。

 

「なに、俺はこれでも警備隊の所属だからな。秘匿情報を無闇矢鱈(むやみやたら)に言いふらしたりなんてしやしないさ。だから、そこは安心して欲しい」

 と、そこで一度言葉を切り、ジャンの方を見てから言葉を続ける。

「まあもっとも……俺だけじゃなくて、ジャンも気づいているとは思うけどな。……アリシアやエリスは気づいていないだろうけど……」


 直後、ロディの視線に気づいたらしいジャンが無言で頷いてきた。それは『全て承知している』という意味であろう。

 ……少し前にジャンについて調べてみた所、以前のエレンディア政府の中枢――というか、トップの懐刀的な存在だったというのが判明したが……どうしてそんな人物が広捜隊に所属しているのだろうか……?

 まあもっとも……それを言ったら、オルティリアの名家であるクランバート家の令嬢――エリスについても、何故に広捜隊に所属しているのかって話になるが。

 

 なんて事を思っていると、とても質素なメイド服に身を包んだセレリア族の女性が部屋に入ってきて、

「皆様、お食事の準備が整いました」

 と、頭を軽く下げながら告げてきた。

 

「おや、準備が整ったみたいだ。話の続きは一旦(いったん)後回しにして、まずは昼食にしようじゃないか」

「そうですわね。皆さん、移動しますわよ」

 パウルさんの言葉に頷いたエリスが、先頭に立つ形で俺たちを誘導。大広間らしき所へと場所を移した。


                    ◆


 ――そして、高級レストランで出てきそうな実に豪華な昼食が一段落した所で、俺は話の続き……というか、俺達がオルティリアに来た理由についてパウルさんに説明した。

 

「なるほど……このオルティリアとその近郊で、『竜の御旗』が何らかの作戦の準備を行っている……と。たしかにそれは由々しき事態であると言えますな。私に出来る事なら、なんでも協力いたしましょう」

 説明を聞き終えた所で、パウルさんがそんな風に言ってくる。

 オルティリアで発言力のある人が全面的に協力してくれるというのは、とてもありがたい話だ。

 

「しかし……警備隊の規模だけで言えば、エレンディアに次ぐほどであるこのオルティリアで、よくもまあ『竜の御旗』の連中は、警備隊の目から上手く隠れながら作戦とやらの準備が出来るものだ」

 と、そう言って肩をすくめるエメラダ。

 

「オルティリアとその近郊を含めたこの辺り一帯の地下には、古代と中世の間ぐらいの時代に作られた『ガルディエナ地下城塞』の遺構が存在しておる。大半はクシフォス帝麾下(きか)の軍勢によって破壊されてしまったが、それでもなお、使える通路や部屋がかなり残っておるそうじゃ。そこを利用しておるんじゃないかのぅ?」

「……たしかにあそこの構造に関しては、警備隊でも全容を解明出来ておりません。『竜の御旗』がなんらかの方法で構造を熟知しているのであれば、警備隊に一切気づかれる事なく活動する事も容易いように思えますね」

 アーデルハイドの推測に頷き、そんな風にジャンが言う。

 

「ふむ……地下城塞の遺構、か……。もしかしたら、そこに眠っている大昔の『何か』を利用しようとしているのかもしれないな」

「たしかに、クシフォス帝はガルディエナの破壊に妙に力を入れていた……と、歴史書に記されていやがりますし、何かヤバいモノがあるのかもしれねぇですねぇ」

 俺の発言に同意するようにそう口にするティア。

 

「ふむ……ヤバいモノ……か。例えば……その地下城塞の更に下に、ルクストリア――というか、アルミューズ城の地下にあった古代の遺物……例の『門』と同じ物がある……とかだったりするのだろうか?」

 アーヴィングが少し軽い感じで口にした推測に、アーデルハイドがハッとした表情をしてみせる。

 そして、

「……いや、案外可能性としてはありえるやもしれぬな……。アルミューズ城の地下は、イルシュバーンの国軍と我らで多重の防衛網を敷いておる状態じゃ。『竜の御旗』や『銀の王(しろがねのおう)』の連中であっても、あそこを奪取するのはかなり厳しいじゃろう。他に同じ『門』があるのなら、そこを確保しようとしていたとしても、なんらおかしな話ではないわい」

 なんて事を言って顎を撫でた。

 

「でも、彼の『門』を確保するためだけに、ここまで大規模な動きをするとは思えねぇんですけどねぇ」

「まあそうだな……。実際、アルミューズ城の地下の『門』には、単独で現れたしなぁ……。もっとも、あいつが『銀の王(しろがねのおう)』のひとりだったのか、それともそれ以外の人間だったのかは、未だに分かっていないが」

 俺がティアに同意する形でそう言った所で、

「ねぇ、さっきから言ってるその『門』ってのは、なぁにぃ?」

 という、もっともな疑問を口にするアリシア。


「ああそうだな。それについて話しておくとしよう」

 俺はそう切り出し、広捜隊の面々とパウルさんに対し、アルミューズ城の地下にある『門』――『裏位相(うらいそう)コネクトゲート』について説明する事にした。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「――とまあ、そういう代物だ」

裏位相(うらいそう)コネクトゲート……。そんなものがあるのか」

「異次元空間に存在する遺跡に入る為の門、ねぇ……。『条件』を満たさないと開かないとか、なかなか面倒くさそうだねぇ」

 俺の説明を聞き終えたロディとアリシアがそんな風に言ってくる。

 

「そうなのじゃよなぁ……。『条件』を無視してどうにか開けぬかと、わざわざクレリテの力を借りたりもしたのじゃが……どうにも無理そうでのぅ」

 そう言ってため息をつくアーデルハイドに続き、

「妾も、ディアーナ様が解析した術式データをもとに、『ディスペラー』を作ろうと試みてみたのじゃが……一定時間ごとに可変するパスワードのような術式がどうにもならず、諦めるしかなかったからのぅ……」

 と、エステルもそんな事を言って、やれやれと首を横に振ってみせる。

 

 そう……。1年程前に、ディアーナによってあの門の術式は解析が終わっており、『条件』のについて判明したのだが……強引に開けるのは、いわゆる『ワンタイムパスワード』のような構造をしている、厄介な術式が組み込まれているせいで不可能に等しかった。


 つまり、あれを開くには『条件』を満たすしかないのだが……その条件がなかなか面倒なんだよなぁ……

『裏位相コネクトゲート』という名称、何気に久しぶりの登場ですね……


といった所でまた次回! 

次の更新は、平時通りの更新間隔となりまして、7月13日(水)を予定しています!

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