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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第159話[裏] クランバート家の者

<Side:Souya>

「あ、そうよ! 私もアーティファクトメイカーズって名前、ヴァロッカでの聞き込み中に聞いたんだけど、知らない言葉だったからなんだろうって思ってたんだけど、そんな特殊な言語だったのね」

 灯の説明を聞いてそんな事を言うシャル。

 

 ふむ……。やはり『アーティファクトメイカーズ』は、俺が思った通り英語そのままだったようだ。

 なんとなく想定はしていたが、ディアーナから付与して貰っている『全ての言語を理解出来る力』によって、英語そのままなのか、それとも英語に翻訳されるこの世界の言語なのかの区別が、俺には出来なくなっているからなぁ……

 この力、普段は非常に便利な代物ではあるが、今回に関しては裏目に出てしまった感じだな。

 ……っていうか、灯やユーコも俺と同じく自動的に翻訳されているようだが、ディアーナに付与されたわけじゃないよな……? どうやってその力を得たんだ……?

 

 そんな別の疑問が新たに湧いてきたものの、どう考えても本人たちも知らなさそうな感じなので、とりあえず今は横においておき、

「となると……アーティファクトメイカーズのトップは、ちょっとばかし厄介だな……その言語の存在する世界――異界の技術や特殊な力を有しているというのが、大いに考えられるからな」

 と、そう口にする俺。

 

「ああ。それもあって、慎重に調査を進めるつもりなんだ」 

「なるほどな。……よし、アーティファクトメイカーズに関しては、『黄金守りの不死竜』から盛大にちょっかいを出してみるか」

 頷いてきたロディに対して俺がそんな風に返すと、その意図が分かっていないらしい灯が、首を傾げて問いかけてくる。

「え? なんで?」

 

「連中の目を俺たちの方に引きつけてやれば、広捜隊が少し動いたくらいじゃ気にされなくなるだろ? まあ……あれだ。陽動――あるいは、ヘイトコントロールって奴だ」

「あ、なるほど……。たしかにばっちりタンクがヘイトを稼げば、他の面々が少しボコったくらいじゃターゲットを変えたりしないわね」

 こっちの言い回しならすぐ分かる辺り、ある意味さすがだな……


「タンク? ヘイト? なんですのそれ」

「あー……敵と交戦する時に、延々と再生させる奴とかやたらと挑発してくる奴とかが居たら、鬱陶しいから、まずそいつから倒したいって思うだろ? その『鬱陶しさ』がヘイトだ。んで、敢えてそういう風に鬱陶しい事をして、敵のヘイトを高めて自分に攻撃を向けさせる役割の人間がタンクな」

 当然のように首を傾げるエリスに、そう説明するロディ。

 こっちも、さすがというべきだろうか……

 

「エリスがまさにその『タンク』だねぇ」

「たしかに、エリスは戦闘中に挑発するわ、派手に動くわで、『自我を持ってる奴』からは、狙われまくる事が多いな」

 アリシアの一言に、ゼルがそんな同意の言葉を口にしてウンウンと首を縦にふってみせる。


「むむむ……。も、もう少し静かに戦った方がいいんですの?」

「いや、エリスがそうやって敵の目を引きつけて守りに徹する事で、他の者が発動までに時間のかかる魔法を使いやすくなったり、奇襲を仕掛けやすくなったりするという大きな利点があるから、エリスはそのままガンガンやっていいと俺は思うぞ」

 考える仕草をみせるエリスに対し、ロディがそう告げる。

 そして、実際その通りではある。

 

「なるほどですわ! でしたら、これからは今まで以上に『ヘイト』を高めるように立ち回りますわ!」

「それならぁ、エリスの得物を防御に適した感じに改良するのも良さそうだねぇ」

 エリスの宣言を聞いたアリシアがそんな風に言う。

 

「……それは嬉しいですけれど、程々でお願いしますわね……?」

「オッケー、程々にバッチリ壁になるような感じにするよぉ」

「それは……程々……ですの?」

 アリシアの言葉に対し、何とも言えない困惑の表情を見せるエリス。

 

 うーん……。アリシアはエステルに近い思考だなぁ……

 なんて事を思いつつ、

「まあ、タンク云々はさておき……アーティファクトメイカーズに関しては、そんな感じでこっちが陽動するから、オルティリアの方は、代わりにそっちがメインに立ち回る感じ頼みたいんだが……警備隊内の縄張り争いみたいなのは、あったりするのか?」

 と、言葉を投げかける俺。

 オルティリアの警備隊に調査を邪魔されるようだと、意味がないからな……

 

「あー、そうだな……。残念ながら、そういうめんどくせぇ事を考える連中もいねぇわけじゃあねぇが……幸い、オルティリアの名家の人間がいるからな」

 なんて事を言って、エリスの方を見るゼル。

 

「……そうですわね。我がクランバート家は、オルティリアでは発言力の強い家ですわね」

「ええ。あの街でクランバート家の人間にちょっかいを出そうと考える者など、存在しないと言っても良いくらいです。なので、オルティリアに駐屯する警備隊の人間に、『その類の理由』で妨害される様な事はない……と、そう考えていただいても問題ありませんよ」

 不承不承といった感じで言うエリスに続くようにして、ジャンがそんな風に告げてくる。

 

 ……その類の理由で、ねぇ……

 列車強盗団が野放しにされている状態を考えると、オルティリア特有の犯罪組織、あるいは『竜の御旗』と繋がりを持つ人間が警備隊の中に存在するって所か。

 もっとも……そっちに関しては、むしろちょっかいを出して来てくれた方のが好都合なんだが。

 

「――なら安心だな。それで……急ですまないんだが、明日から早速動きたいと考えていてな。……対応は可能だろうか?」

 俺のその問いかけに対し、ゼルが頷いてみせる。

「ああ、それに関しては問題ねぇぜ」

 

 『それ』というのはどういう意味かと思い、問いかけようとした所で、

「ええ。どう人員を分けるか……それが問題ですね」

 と、そんな風にジャンが言い、メガネをクイッと押し上げた。

 

 ああなるほど、人員の分け方か……

 たしかに広捜隊にとっては問題――重要だな。

タンクやヘイトの説明の辺りが、思ったよりも長くなってしまったせいで、あまり進展しない話になってしまいました…… orz


ま、まあそんな所でまた次回! 次の更新は先日記載した通り、平時より1日間隔が空きまして……6月29日(水)の予定です!

そして多分、その次も同じ更新間隔になると思います……

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