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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第1章 アルミナ編
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第35話 ディアーナ再び

 シャルロッテを交えて食事をしながらあれこれと雑談をしているうちに、あっという間に列車の時刻が近づいてきた。

 駅へと移動してまだ来ていないエステルを待つ事にする。……って、エステルは何をしているんだ? 予定より随分と来るのが遅い気がするが……

 

「す、すまぬっ! 思いっきり寝坊したのじゃっ!」

 息を切らせながら駅へとやってきて、遅れてきた理由を告げるエステル。……寝坊かい。


 ともあれ、寝坊してギリギリに駅へとやって来たエステルのせいで、駅構内を全力疾走する事になったりしたものの、どうにか9時発の発車時間には間に合った。先にエステルの分も含めて切符を買っておいてよかったというものだ。

 いやまあ、正確に言うと、エステルは駅まで走ってきた上に構内も全力疾走した為に、体力切れでヤバそうだったから、最後は俺がアスポートで車内へ飛ばしたんだけど。

 

 俺の『サイキック』を知らないシャルロットが驚いていたが、まあ……あとでアリーセが、さっきみたいに説明してくれるだろう、多分。

 というか、シャルロットは先に乗っていてもよかったのに、わざわざエステルが来るのを駅構内で待っていた。何気に律儀な性格のようだ。

 

 そんなこんなで実に慌ただしい感じになったが、プラットホームで4人の乗った列車が去っていくのを見送った俺は、その足でウェルナット装備品店に立ち寄り、呪紋鋼製の投げナイフ100本セットを2セットばかり購入する。

 本当は昨日買おうと思っていたんだけど、色々あったせいで、気づいた時には店が閉まっていたんだよなぁ……

 

 とまあそういうわけで、チート級の剣以外の武器を確保した俺は、早速とばかりに森へとやってきていた。

「さて、それじゃ魔獣を探すとしようかね。魔獣が出没し始めてからまだ日は浅いし、そこまで多く生息しているとは思えないが――」

 

 ――なんて思っていた時期もありました。って奴だな……

「……エンカウント率、高すぎじゃね……?」

 倒したばかりの魔獣が残していった魔石を拾いながら、そんな事をつい呟く俺。

 

 これで今日――正確には午前中だけで、だが――拾った魔石は100個を超えた。

 それはつまり、それだけの数の魔獣と遭遇しているという事でもある。

 2~3体固まっているのを見つけた時も何度かあり、その時は買っておいた投げナイフが役に立った。

 

 もっとも、まだこの世界に来て日の浅い俺には、何が害獣で何が魔獣なのかが良くわかっていない。なので、とりあえずヤバそうな見た目をしているのや、こちらに殺意を向けてくるのを片っ端から倒していたりする。

 

 ……とまあ、そういった大雑把な判断で倒しているため、魔獣だけではなく害獣の方も、結構な数を倒している。……合計すると何体になるのやら。

 討獣士ギルドにある専用の魔煌具を使う事で、撃破した魔獣や害獣の数や名前がわかるらしいので、報告するのがちょっと楽しみではあるな。

 さて……そんなわけで、これだけ倒しておけばとりあえずは十分だろう。そろそろ『夜明けの巨岩』の方へ向かうとしようかね。


 ――一休みした後、俺は夜明けの巨岩へ向かって森を進む。

 その途中でも、幾度か害獣やら魔獣やらに遭遇したが、それら全て撃退し、2日ぶりにあの始めて降り立った場所へと戻ってきた。

 

 しっかし、こっちの世界に来てからまだ3日目なんだよなぁ……。なんだかんだと色々あったせいで、もっと経過しているように感じるけど。

 と、そんな事をふと思いながら、次元鞄から例のディアーナと会話が可能だというオーブを取り出す。

 

 ……使い方が良く分からないというか、これといって起動の為のスイッチや紋様などは見当たらないので、オーブに向かって話しかればいいという事なのだろうか?

「ディアーナ様ー? 聞こえますかー?」

 俺はオーブを両手で持ち、試しにそう呼びかけてみる。

 

 と、その直後、オーブに染みのような物が浮かび上がったかと思うと、それが徐々に広がりながら人の姿を形作っていく。そして、

「はいはいー、どうかしましたかー?」

 という声が聞こえてくると同時に、俺がイメージを固着させた、あのピンク髪のツインテール妖精の姿をしたディアーナがオーブに映し出された。

 

「えっと……ディアーナ様に報告したい事と相談したい事がありまして……」

「報告とー、相談、ですかー? それでしたらー、テレポータルを開くのでー、こちらに来て貰っていいですかー?」

「あ、はい。構いませんよ」

 俺がそう答えた直後、目の前に例のテレポータルの渦が出現する。

 

 オーブを次元鞄にしまい込んで少し待っていると、渦の代わりにディアーナのいる場所が見えるようになる。

「どうぞー」


 再びテレポータルをくぐると、そこにはディアーナが待っていた。

「それでー、報告とー、相談というのはー、なんでしょうかー?」

「まずは報告ですが――」


 俺はとりあえず、エステルから聞いた2つの霊的な力が云々といった話や、地下神殿遺跡で遭遇した冥界の悪霊などについて報告する。

 すると、ディアーナが、

「ふむふむー。それはー、凄く気になりますねー。遺跡の最深部ですかー。ちょっと覗いてみますかー」

 と、そんな事を言って目を瞑る。

 

「ふむー、なるほどー、これは確かにー。……んー? んんー?」

 ……急に首をかしげ始めたが、何かあったのか?

 

「どうかしたんですか?」

「ああー、いえー、次元境界の歪みを感じるんですよー」

 閉じていた目を開き、俺の問いかけに対しそう返してくるディアーナ。

 

「次元境界の歪み……ですか?」

「ええー。こういう『霊的な力に満ちた場所』では良くある事なんですがー、この世界と異界とを隔てる次元境界に歪み……一種の穴が生じている感じですねー。この現象が起こっているとー、異界の存在がー、その穴を通してー、こちらの世界に顕現――這い出してきてしてしまう事があるのですよー」

「なるほど……。それが冥界の悪霊が出現する理由というわけですか」

 ……もしかして、魔煌波がかき消されていたのも、それか?

 

 そう考えて、その事について尋ねると、

「うぅん……? 歪みでそんな現象が起きるというのはー、見た事も聞いた事もないですねぇ……。そもそも歪みの影響はー、そこまで大きくないですしー。というのもー、顕現した異界の存在はー、歪みのない場所に出るとー、存在を維持出来なくなって消滅――異界へ即時送還されますからねー。もしかしたらー、遺跡にある何かの装置が稼働状態になっていてー、それと歪みとがー、干渉しあってしまった事で、そういう風になったのではないでしょうかー」

 と、そんな事を言ってくるディアーナ。 

 ふーむ……。たしかにあの遺跡、まだ『生きて』いる感じだったしな。そういう現象が起きるのもありえなくはないか。


 それと、今の話で例の車輪を次元鞄から取り出したら、一瞬にして霧散した理由が判明したな。そう、当然ではあるが、アルミナの町は次元境界が歪んでいる領域の外だ。だから、異界の存在である車輪は、その存在を維持出来なくなったってわけだな。

 

「まあ、それはそれとしてー、それよりももっと気になるのはー、どういうわけかー、その遺跡の最深部がー、良く見えないという事ですねー」

「えーっと……良く見えないというのは、最深部がどうなっているのかわからない、という事ですか?」

「はいー、そういう事ですねー。うーん……こうなったらー、直接行って見て来るのが早そうですねー」

 そう言うなり、テレポータルを開くディアーナ。

 

 開かれたテレポータルを覗いてみると、例の地下神殿遺跡の魔煌波がかき消される通路が見えた。

 まさか、直接あそこへ接続出来るとは思わなかったから、少し驚きだ。でも、最深部ではなさそうだが……

 

 その事を問いかけると、

「この通路がー、私の力で見えるギリギリの場所でしてー。テレポータルはー、私の力で見える場所にしか開けないのでー、とりあえずここに開いたのですよー」

 そう答えながらテレポータルをくぐるディアーナ。

 

「あ! 見に行くのでしたら、俺も行きます!」

 ディアーナを追いかけるようにしてテレポータルをくぐり、再びあの真っ暗な通路へと舞い戻る俺。

 

「ではではー、奥に向かって出発ですよー」


 ……とまあそんなわけで、期せずして改めてあの通路の奥へと向かう事になったが……はてさて、奥はどうなっているのやら、だな。

なんだかんだでアポートとアスポートの両方を経験したエステルでした。

さて、次回は先日撤収したあの遺跡の奥へと進みます。

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