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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第119話[裏] 情報と攻防

<Side:Charlotte>

 私が心中でため息をついていると、距離を取った女が、

「なるほどねぇ。ただでさえ硬い刃を霊力を込めて更に固くしている……と。これはさすがに『破刃の双鎌』でも砕けそうにないね。ふふっ、面白いよ」

 と、そんな風に言って獰猛な笑みを浮かべる。


「そうね。私の刀剣を折ろうとか思わない方が良いわよ? ――そのくらいじゃ刃こぼれひとつしないもの」

「ふむ、その刀……いわゆる超古代の遺物って奴だね? 一体何万年前の代物なのかな?」

 そう言ってくる女に対し、私は首を横に振って返事をする。

「ハズレよ。桁が4つ足りないわ」


「ははっ、そこまでの代物だとは思わなかったよ! つまり、その刀は古の錬金術と同レベルの技術で作られた代物だという事だね!」

「古の錬金術……ね。その言葉が普通に出てくるとか、最早自分が『竜の御旗』だと名乗っているようなものね」

 私がやや皮肉を含んだ口調でそう告げると、女は、

「ああ、それなんだけど……私は――私たちは正確には『竜の御旗』ではないよ。まあ、一応『竜の御旗』のもとに集った大小様々な組織のひとつとして、『竜の御旗』に協力はしているけど、それは『別の目的』の為に都合が良いからに過ぎないし、ね」

 なんて事を言って返してきた。

 

 ……それはつまり、あのランゼルトで遭遇したエルランの男やミスズも同様である、という事になるわね。

 ミスズが自分たちは「『真なる王』のもとに集った『現イルシュバーン共和国』の体制に反抗する大小様々な集団のひとつにすぎない」……みたいな事を言っていたとソウヤから聞いているし、『竜の御旗』に取り込まれているものだと思っていたのだけど……もしかして、その前提が違う?


 と、そんな思考を巡らせていると、

「そもそも『竜の御旗』の『真なる王』というのは、彼の組織で中枢的な部分を担う『銀の王』一派を束ねる存在……。私たちの求める『王』とは違うものだよ」

 などとサラッと告げてくる女。

 

 口が軽いのか、このくらいなら話しても構わないと思っているのかはわからないけど、良い情報を立て続けに喋ってくれて助かるわ。

 

「……『白き王剣の騎士団』の残党は、『エーデルファーネ』や『真王戦線』と同じく、『真なる王』の名のもとに『竜の御旗』に集い、取り込まれたものだと思っていたけど……そういうわけじゃない、って事かしら?」

 私が疑問に思っている事を口にすると、

「さてねぇ? 『竜の御旗』は、彼の『黄金守りの不死竜』と違って一枚岩ではないからね。中枢的な部分を担う『銀の王』たちの中でも色々あるみたいだし?」

 なんていう事を肩をすくめながら答えた後、

「ま、そんな事よりも……今はもっと殺り合おうじゃないか!」

 という言葉とともに問答を打ち切り、再び突っ込んでくる女。

 

 もう少し情報を引き出したい所だけど、そう簡単にはいかないわよね、やっぱり……っ!

 

「よっ!」

 女がそんな掛け声と共に、左手に持った鎌を放り投げてきた。

 牽制? それとも誘導?

 

 私はそれを回避し、更に突っ込んでくる女を待ち構え……ようとして、後方からの風を感じ取り、横へと飛ぶ。

 と、その直後、私の立っていた場所を鎌が通り過ぎていった。

 

「……サイコ……キネシス?」

「おや、初見でこれを避けたのは、私の仲間のミスズ以来だよ。……って、そういえばミスズもそんな事を言っていたね。そのサイコなんちゃらというのが、どういう代物なのか、ちょっと気になるかも」

 私の呟きにそう返しながら鎌をキャッチし、跳躍しながら振りかぶってくる女。

 

 鎌で振りかぶるってどういう事よ……鎌の刃は内側にあるのに……

 心中でそんな呆れた突っ込みを入れつつ、刃自体が回転しているのなら、外側にも刃があるという事だと認識し、更に横へ飛び、軸をずらす。

 そして、迎撃するように霊力の刃を放った。

 

 しかし、女は霊力の刃を振り下ろした鎌で消し飛ばすと、そのまま着地と同時に方向転換し、間合いを詰めにかかってきた。

 

 女の持つ双鎌は、両手持ちの鎌と違い、長柄ではない。

 しかも、刃が内側へ向かって曲がっている分、私の持つ刀剣よりもリーチが短い。

 だから間合いを詰めてくるのは至極当然の動きと言える。

 

 なので、こちらは真正面からぶつからず、軸をずらし、相手のリーチの外へ移動しながら反撃していけば良い。

 もっとも、それで決定打を与えられるような相手ではなく、悠々と私の繰り出す反撃を防いでくる。

 むしろ、防がれた瞬間に動かなければ、そのまま間合いを詰められ、逆に反撃される事すらあった。

 

 斬る、動く、斬る、動く、斬る、動く、斬る、防ぐ、動く、斬る、動く、斬る、動く、斬る、防ぐ、動く……

 

 む、むぅ……。徐々に反撃に反撃を返される回数が増えてきたわね……

 これは、こちらの動作が徐々に見切られ始めていると思った方が良さそうだわ……。まったく……ホントにロゼ並に厄介ねぇ……

 

 ともあれ、このまま攻防を続けていても、こちらが徐々に不利になっていくだけなので、私は相手の見切りを防ぐべく、二刀から一刀へとバトルスタイルを切り替え、一度仕切り直すために大きく距離を取るように跳躍。

 ……が、その直後、ゾクッとする殺気を感じ取った。

 それも……女がいない所から、複数。


 何者かが潜んでいた? いや、そんなはずは……

 

 そう思考しながらも私は即座に直感に従い、久しぶりに真幻術を発動させ、生み出した結晶の足場を踏み台として、更にもう一度大きく跳躍。

 エセ二段ジャンプでその場から一気に離れ――

「くっ!?」

 ――ようとした所で、突然出現した青い斬撃によって脇腹が引き裂かれ、鮮血が少量ながら舞った。


 唐突な痛みで口から声が漏れてしまったが、傷自体は大した事なかった。

 かすり傷……ではないけど、動きが鈍るようなものでもないわね。

 流れる血も大した量ではないし……薬を使うのは後でいいわね。それよりも――

 

 何が起きているのか認識すべく、素早く目を動かす。

 ……すると、視界いっぱいに青い斬撃が踊っていた。

 

「っ!? これって……ディレイストローク!?」

 それは七聖将の残党であるゴルドールが、『邪聖装』を用いて発動させていた技――『攻撃が遅延して放たれる』とかいうもの――だった。

 

 でも……あの時と違って、発動の直前まで何も感じ取れなかったわ。しかも、遅延して放たれている攻撃の数が多すぎる……

 同じ技であったとしても、厄介さはゴルドールの使っていたものの比ではないわね。改良版……といった所かしら……?

シャルロッテの刀は、1億5000万年前の代物ですからね……

というか、なんとなく全体的に久しぶりの登場となる用語の多い回に……

そして、シャルロッテが真幻術を使って戦闘するのも、かなりレアですね。

(基本的に本人の身体能力がとても高い上に、真幻術よりも剣技の方が強いので、なかなか使う機会がないんですよね……)


とまあそんな所でまた次回! 次の更新は、2月13日(日)を予定しています!

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