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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第1章 アルミナ編
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第34話 シャルロッテ

「――とまあ、そんな感じの人がいたんだよ」

 翌朝、昨日と同じベーカリーカフェで、アリーセとロゼにモノノフの女性についての話をする俺。

 

「エルラン族のモノノフ……ですか? それはまた珍しいですね」

 アリーセのその言葉にロゼが頷き、

「うん。そもそも、刀は切れ味が凄まじい反面、扱いがとても難しい。だから、うん、使おうという人自体少ない。私も刀を使うのは苦手」

 と、そう言って肩をすくめるロゼ。

 

「ああ……まあ、たしかに刀は力任せに振り回せばいいってもんじゃないからなぁ」

「うん? ソウヤは使える? 刀」

「んー、一応扱えるな。モノノフではないが、刀を得物とする奴に直接教わった事があるし」

 ロゼの問いかけにそう応える俺。……まあ、蓮司から基礎的な部分を教わった程度なので、あの女性と刀のみでの手合わせをして勝てるかというと……正直厳しい。

 

「うん、なるほど。さすがはアカツキの人間だけはある。――ところで、その女性の名前は?」

「……あ、そういえば名前聞いてなかったな……」

 そんなに長い間話をしていたわけでもなかったからというのもあるが、すっかり失念していたな。もっとも、こっちも名乗っていないのだが。

 

「まるで一昨日の私たちのようですね」

 ふふっと小さく笑うアリーセ。そう言われてみると……

「たしかに……そう……だな。ま、まあ、とりあえず次に出会う機会があったら、忘れずに聞くとしよう」


「ん……今の話を聞いた感じだと、その人、首都へ行くみたいだし、ならうん、私たちも出会う可能性、ありそう。うん」

 と、ロゼが駅のある方へと顔を向けて言う。

 それを聞いたアリーセが、合点がいったと言わんばかりの表情で、両の掌を静かに重ねた。

「あ、たしかにそうですね。私たちはエステルさんと一緒に次の列車に乗る予定ですし、その方と同じ列車になる可能性は十分にありますね。もっとも始発に乗っていなければ、ですけど」


「……そう言えば、首都方面行きの始発は7時だったな」

 ベーカリーカフェの壁に掛けられている時計を見ると、8時少し回った所だった。

 

 今朝、宿にあった列車の時刻表を確認してみた所、イルシュバーン共和国の首都と、このアルミナや更に南部の地域とを結ぶ鉄道は、ぴったり2時間に1本の間隔で運行されている。

 そして、共和国領最南端――獣王国との国境上にある駅を、4時45分に発車してくる始発列車がこのアルミナに到着するのは、7時丁度だった。

 なので、その次の首都方面行き列車は、今から約1時間後の9時丁度という事になるわけだ。

 

 たしかに始発に乗っていなければ、同じ列車に乗る事になりそうだな。

 もっとも、ウェルナット装備品店に寄るのであれば、あそこは7時半に開店する為、始発には乗っていない可能性の方が高いが……


 なんて事を考えていると――

「あれ? あなたはたしか昨夜の……」

 という声が聴こえてくる。

 

 声のした方に顔を向けると、例のモノノフの女性の姿があった。

 どうやら俺たちと同じく朝食を摂りにきたらしい。これは、思ったよりも早い再会だった、というべきなのか?

 

「そう言えば、名前を聞いていないどころか、名乗ってもいなかったわね。私は、シャルロッテ・ヴァルトハイムよ。よろしくね」

「ああ、よろしくな。っと、こっちも名乗っていなくてすまない。俺はソウヤ・カザミネだ。で、こっちの二人は……」

「アリーセ・ライラ・オルダールです。よろしくお願いします」

「ん、私はロゼ・セプト。よろしく。うん」

 

 順番に名乗り終えた所で、俺はシャルロッテに、この次の列車に乗るのか問いかけてみた。

「ええ、そのつもりよ。まあ、まだ時間があるからその前に朝食をと思ってここに来たんだけどね。というか、もしかしてあなたたちも?」

 空いている椅子に座りながら、そう言ってくるシャルロッテ。

 

「アリーセとロゼの二人と、エステル――ここにはいないもう一人はそうだが、俺は違うな。二人を見送ったら森の方へ行くつもりだ」

「森? ……そういえば、魔獣が出没するようになったから不用意に入らないように、って注意喚起がなされていたわね。もしかして魔獣狩りに?」

「ああ。せっかく優遇して貰った事だしな。出来る範囲で狩っておくつもりだ」

「優遇? 何を?」

「あ、それはですね――」


 シャルロッテが首を傾げて浮かべた疑問符に対し、俺の代わりにあれこれと説明をし始めるアリーセ。なんだか、若干……いや、結構な誇張が入っていた気もするが……まあ……いいか。


「……無茶苦茶ね……。あなたなら、森の魔獣を狩り尽くせるんじゃない?」

 アリーセの説明を聞いたシャルロッテが、呆れ顔でそんな冗談を言ってくる。

 

「うん、ソウヤならきっと狩り尽くせる、うんうん」

 真顔でそう言って、コクコクと首を縦に振るロゼ。

 ……あれ? シャルロッテの言葉を冗談だと思っていない?

 

「いや、さすがに狩り尽くすのは無理だと思うが……」

 そもそも、森へ行くのは魔獣を狩るだけが目的でもないしな。

 

「そうですか? なんだかソウヤさんなら出来そうな気もしますけど……。あ、狩り尽くすという意味ではなくて、魔獣が湧いてくる元凶を突き止めそうな気がするという意味で、ですけれど」

 ロゼと同様にアリーセも真顔で、首を傾げながらそんな事を言ってきた。

 

 うーん、それならまあ……出来るかもしれない……のか? まあもっとも、そうは言っても今の所は何が元凶なのか、皆目見当もつかないんだけどな。

この先だとちょっと区切りづらかったので、少し短いですがここで一旦区切りました……

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