第105話[裏] 真幻術から生み出されし技術
<Side:Coolentilna>
「機幻獣をベースに魔法で再現……。なんだか幻術――というか『真幻術』に似てるね、それ」
「たしかにその通りなのです。まあ……トップクラスの魔煌技術を有するエステルさん……たち、イルシュバーンの大工房も『真幻術』から『融合魔法』を擬似的に再現する技術を生み出したので、高い技術力を有する『竜の御旗』――いえ、|《銀の王》《しろがねのおう》たちがその技術に類するものを生み出していたとしても不思議ではないのです」
カエデさんの疑問に頷きつつ、そう答える私。
本当は、ほぼエステルさんひとりで生み出したですが、それを言うと、何だか色々マズそうな気がしたので、大工房の名を出してみたです。
……実際、大工房もまったく関わっていないわけではないので、嘘ではないのです。
あ、そういえば関わっていたという話なら、シャルロッテさんも何気に関わっていたのです。
普段は刀剣をブンブン振り回しているせいもあって、そういった『術者』のような印象は全くないですが、あれでいてなかなか高レベルの真幻術を使いこなすのですよね、シャルロッテさんって。まあ、刀剣をブンブン振り回した方が強いですが……
……うーん。なんだか、地球でプレイした術の威力はどうやっても技の威力に勝てないRPGを、ふと思い出したのです。
と、そんな取り留めのない事をなんとなく考えていると、ユーコさんが口元を人差し指で軽くつつきながら、
「そういえば、そんな話していましたね」
なんて言ったのです。
そして更に、灯さんがそれに対して腕を組みながら、
「……言われてみると、たしかにそんな話してたわね」
という同意の言葉を発したです。
あ、エステルさん、その辺までおふたりに説明していたですか。
思ったよりも、随分と詳しく話しているのです。
「うーん、『真幻術』もかなり特殊かつ強力な術っすからねぇ……」
「そうだね。……っていうか、ティアがさっき使った『SWゾーンブレイカー』とかいう名前の、魔煌具と霊具の融合体みたいな代物も、根っこの部分に『真幻術』っぽいものが使われているよね」
ツキトさんの発言に頷きつつ、そう言ってティアさんの方を見るカエデさん。
そこに更にアリシアさんが、
「あれってぇ、もしかしてぇ……魔煌技師の間で噂になっている『幻導具』だったりぃ?」
なんて事を続けて言ったのです。
「ええ、その通りでやがりますねぇ。色々あってイルシュバーンの大工房から『幻導具』のサンプルを借りているんですよねぇ」
と、ティアさんがしれっとそんな風に返したのです。
無論、嘘ではないですが、事実でもないのです。
「……『黄金守りの不死竜』は、イルシュバーンの大工房とも繋がりがあるんですの?」
「当然ですねぇ。『黄金守りの不死竜』は、ありとあらゆる組織との繋がりを持っていると言っても過言ではねぇですからねぇ」
呆れ気味に問うエリスさんに対し、これまたしれっと、そして何やら少しドヤっとした表情で、そう答えるティアさん。
……まあ、私も『黄金守りの不死竜』の人間なので、ティアさんがドヤっとした表情をしたくなる気持ちも、分からなくはなかったりするですが。
「世界最高峰にして最先端の魔煌技術を有する、イルシュバーンの大工房とも繋がりがありやがるとか、相変わらずとんでもねぇな……ったく」
やれやれといった表情で首を横に振るゼルディアスさん。
「――『黄金守りの不死竜』は、女神ディアーナ様を擁していますからね。その事実を知れば、協力する者はあとを絶たないでしょう」
「たしかに……。女神ディアーナ様が関わっていれば、絶対的に『正しい』って思う人は多いよね」
ジャンさんに同意するように頷き、そう返すカエデさん。
……実際、内情を詳しく知らない協力者の方からは、『竜の御旗』や|《銀の王》《しろがねのおう》――一般的には鬼哭界と呼ばれている『このコロニー』とは『別のコロニー』の侵略者たちと、暗闘を繰り広げている正義の秘密結社……のような存在だと思われている節もあるですからね。
もっとも、真の意味で『黄金守りの不死竜』の最終的な目的を知る者は、ほとんどいないですが……
というか……私も、果たして蒼夜さんの考えている事を本当に全て知った上で理解しているのかと問われると、正直怪しいのです……
そもそも……『黄金守りの不死竜』の最終的な目的は、『朔耶さんの計画』がベースにあるのです。
でも、その『朔耶さんの計画』の全容について完全に把握しているのは蒼夜さんだけであり、私たちはあくまでも蒼夜さんから聞いた話として、それを把握しているにすぎないのです。
なので、蒼夜さんが私たちに話していない事があったとしても、私たちがそれを知り得る手段は皆無なのです。
無論、蒼夜さんの事は信頼しているですし、例え私たちに話していない事があったとしても、全力で協力し、蒼夜さんの目指す所に向かって共に歩む事に代わりはないですが。
……そんな事を考えている間に、話が一段落し、
「――とりあえず、|《銀の王》《しろがねのおう》が厄介な技術を生み出したっていう情報は、各方面にばら撒いといた方が良いな」
と、ゼルディアスさんが告げてきたのです。
「そうだね、情報があるのとないのとじゃ、対処に大きな差が出るし、あちらへの牽制にもなると思う」
「ですねぇ。裏の方は私が『黄金守りの不死竜』を経由して流しておきますねぇ」
「なら、表は我々が広めるとしましょう」
ゼルディアスさんの発言に同意したカエデさんに続くようにして、ティアさんとジャンさんがそんな風に言ったのです。
……そんな中、灯さんが何故か考え込んでいたのです。
「灯さん、どうかしたですか? 何やら考え込んでいるですが……」
そう問いかけると、
「え? あ、えっと……少し気になる事があってね」
なんて言ってきたのです。
「気になる事……です?」
「いや、大した事じゃないのかもしれないけど、あの|《銀の王》《しろがねのおう》は、『こうして正体がバレる可能性がある』のに、新兵器……新魔法生物? まあともかく、それをサラッと使ってきたでしょ? その事が、どうにも気になっているのよね。しかも|《銀の王》《しろがねのおう》は、私たちの『足止めになればいい』って感じの口ぶりだったじゃない?」
首を傾げて問う私に、そう答えてくる灯さん。
……なるほどです。言われてみると、たしかにその通りというか……私たちの足止めをする程度の為に、新たな技術で生み出された魔物をけしかけてきたというのは、ちょっと割に合わないというか……なんだか妙な話なのです。
もっとも、思いっきり足止めをされたという点に関しては、間違いないですが……
多くのRPGが、技/特技/スキル等>魔法/術/呪文等になるんですよね、最終的に(最後の最後まで魔法が強いというのも、全く無いわけではないんですけどね……)
魔法でズドーンするより、武器で何ヒットもの多段コンボを叩き込んでからズドーンする方が、演出的に格好いい&キャラの見栄えが良いので、仕方がないといえば仕方がないのですが。
とまあ、そんな所でまた次回! 次の更新は12月28日(火)の予定です!




