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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第83話[裏] ロゼとクーレンティルナ

<Side:Rose>

「ん、みんな様子見をやめたらしい。うん」

「こちらは最初から全力なのです……っ」

 クーがそう返しながら、私を起点として円を描くように動きつつ、漆黒の魔弾を連射してくる。

 

「それは……うん、私もそう」

 ほぼ360度全方位攻撃と化したクーの魔弾を回避しつつ霊力の刃――衝撃波を飛ばす。

 

 しかし、円を描くようにして動いているクーには当たらず石壁に傷つけるだけに終わった。

 ん、全方位からの攻撃はなかなかに厄介……

 うん、ならば……こう。


 私は迫ってくる魔弾を二刀の回転斬りで消し飛ばしながら跳躍。

 そこから飛翔状態に移行し、魔法で空中に生み出した足場を蹴る。

 そして、空中を滑るようにして駆け抜け包囲を破った。

 

「ただでさえ強いのに、空まで飛べるとかチートすぎるのです……っ!」

「うん? 空飛べるのがチートなら、セレリア族は全員チートになる。うん。そもそも疑似融合魔法を、まるで普通の魔法の如く多用しているクーも、うん、十分チート。疑似融合魔法の魔力消費量を考えたら、普通は、うん、そんなに使えない」

「うぐっ。ひ、否定出来ないのです……」

 そう返してくるクーを見据えつつ、私は左右の手に3本ずつ持った短剣を真横に放り投げる。

 そして、それと同時にクーに向かって一直線に突っ込んだ。

 

「っ!?」

 一瞬、驚きの表情を見せたクーだったが、即座に「《蒼碧ヨリ冥キ殻ノ守護》」と呟き、自身を包み込む(あおぐろ)い球体を発生させた。

 

 私の繰り出した斬撃が、球体に接触した瞬間、金属製の頑丈な盾を斬りつけた時のような、甲高い音と共に弾き返される。

 時間差で左右から弧を描く形で着弾した6本の短剣――突っ込む前に投げた奴――も同じだった。

 球体に刺さる事すらなく弾かれて地面に落下した。

 

 ん、さすがは疑似融合魔法……うん、バリアも硬さが半端じゃない。というか硬すぎ。うん。

 正直、うん、ずるい……かな。一体いつの間に、こんなに疑似融合魔法を……?

 

 そんな事を思った所で、攻撃が通らないという事実が変わるわけでもなく……私はクーからの反撃を想定し、瞬時に後方へと宙返りしつつ距離を取る。

 ……ん? 空を飛んでいるのだから、宙返りする必要なかったかも……うん。

 やっぱり、長年のクセは抜けない。うん。

 

 クーが展開していた(あおぐろ)い球体が消滅する。

 想定していた反撃は来なかった。

 ……ん? もしかしてあのバリア、展開している間は動けない……?

 

「そ、蒼夜さんのサイコキネシスでもないのに、どうして短剣がカーブしながら飛んでくるです……!?」

 なんて事を驚きの言葉を投げかけてくるクー。


 まあうん、たしかに投げた物の軌道を変えるのはソウヤの十八番(おはこ)

 ……って、向こうのロディっていうのも出来るんだった。うん。

 ともあれ……カーブさせる程度であれば、うん、ソウヤやロディでなくても出来る。


「ん、あれはカーブするように投げているだけ。アカツキでビャクガマルから教えて貰った。うん。ちなみに……上下方向にもカーブさせられる、うん」

 そうクーに説明しつつ、私は先程と同じように短剣を投げる。

 ただし、今回は上方向と下方向に。

 

 そういえば、ビャクガマルが上下はかなり難しいとか言ってたっけ。うん。

 ……私は少し練習したら割と簡単に上下にもカーブさせられるようになったけど……多分、うん、円月輪でそういう投げ方に慣れていたから……かな? うん。

 

 ともあれ、そんなわけで上下からも攻撃を仕掛けられる。

 弓なりに飛んでクーを上から狙う短剣と、滝登りの如くクーの下から狙う短剣、そのふたつの動きに合わせるようにして、更に左右に短剣を投げる私。

 

 ……で、もちろんそれで終わりではない。うん。

 私は更に手に持った円月輪でX字の衝撃波を生み出し、それを真正面から飛ばした。

 

「左右だけじゃなくて上下もとか意味不明なのですっ!」

 なんて事を言いながらも、バリアで攻撃を防いでくるクー。

 当然といえば当然だけど、投擲(とうてき)した短剣だけではなく、衝撃波の方も防がれてしまった。

 

 んん……。このバリア、チートすぎる。うん。

 発動中は動けない攻撃っぽいけど、うん、その欠点を補って余りある尋常じゃない防御性能……。うん、あれを突破するのは……かなり厳しい……うん。

 

 そんな風な思考を巡らせつつ、私はクーの周囲を文字通り高速で飛び回りつつ、四方八方から衝撃波を放ち、解除の隙を与えないようにする。


 ん、あれだけの強固なバリアを生み出す以上、魔力の消費も桁違いなはず……うん。

 だから……うん、ひたすら攻撃し続ければ、いずれ切れる。うん。

 

 そう考えつつ投擲したふたつの円月輪が、ガリガリとバリアの表面を削る。

 んん……これだけの攻撃でも、まったく効いているように見えない……そう思った次の瞬間、バリアが消滅した。

 

 その飛翔の力を失っていなかったふたつの円月輪が、クーへと襲いかかる。

 慌てた様子で円月輪を回避するクー。

 

 チャンス! 

 私は攻撃を仕掛けるなら今だと判断し、円月輪以上に長く使っている短剣で衝撃波を生み出すと、その衝撃波の飛翔を追うかの如くクーへと突撃。

 

 クーは私が飛ばした衝撃波を回避する為、素早くサイドステップ。

 そこから迎撃の構えを取るが少し遅い。

 

 そして、こっちは……うん、ナイスタイミング!

 私はちょうど戻ってきた円月輪をキャッチすると、そのまま身体を捻り、自分自身が独楽になったような感じで回転しながらクーに向かって円月輪を振るう。

 

 と、その直後、再びバリアが出現する。

 んんっ!? 魔力が……回復した!?

 

 振るった円月輪は既に止まらない。

 バリアに激突し、そして勢いよく弾かれる円月輪。……と、私。

 

 うん、そう、弾かれた際の反動に引っ張られる形で、私自身の身体も大きく仰け反る事となった。

 

 くぅっ! 体勢が崩され……っ! 

 けど、うん、バリアを解除して動く前に立て直せば……っ!

 

 そう考えたその刹那、唐突に眼前にバリアが迫った。

 っ!? か、拡大!?

 

 否。そうではなかった。――バリアが突然1つ増えていた。

 

「ぐうぅっ!?」

 突如として出現したバリアに押し出されるような形で、吹き飛ばされる私。

 

 体制を立て直……

「あぐっ!?」

 背中に衝撃が走った。

 空中で何かに……んっ!? 違う、これもバリア……!?

 

 ――3つ目のバリアに激突し、そのまま落下する私。

 

 バリアを認識したものの、わけがわからない私めがけて、極太の赤と青の螺旋が3つ降り注いできた。


 ……あ、うん、わかった。理解した。

 ――分身の魔法を使われてたっぽい……うん。


 これは……ちょっと無理、かも……

クー視点との切り替えも考えたのですが、ロゼ視点に絞った方が良さそうだったので、今回はロゼ視点に固定してみました。


とまあそんな所でまた次回! 

次の更新は少し空いてしまい、申し訳ないのですが……10月17日(日)を予定しています!

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