第74話[裏] 邂逅と邂逅
<Side:Glendine>
何故、黄金守りの不死竜にいるのかと問われたガレスが、ソウヤの方へと視線を向ける。
そして、その視線に対しソウヤは、無言で頷いてみせた。
それはつまり、話しても問題がないという合図。
「――僕は、モニカを取り戻したい。だから、黄金守りの不死竜に協力……いや、属する事を決めたんだよ」
ガレスがそんな風に広捜隊の面々を見回しながら言う。
「モニカ……隊長を……取り戻す?」
このドラグ族は……昨日見たデータファイルでは……たしか、ゼルディアスという名前ったな。
そのゼルディアスが、驚きと困惑の入り混じった表情でそんな事を口にした。
「どういう……事、ですか? その口ぶりだと、まるで死者を蘇生させようとしているかのように聞こえますが……」
ソウヤと同種の力を使う――ロデリックという名前だったはずの――青年がそんな事を、ゼルディアスと同じく驚きと困惑の入り混じった表情で、ガレスに尋ねる。
「死者は蘇らない。それは絶対だよ。だけど……『死』をなかった事にする……それは可能なんだ。黄金守りの不死竜の目指す先にあるモノであれば、ね」
「黄金守りの不死竜が目指す先……『死』をなかった事にする……? なんともとんでもない話ね」
ガレスの話を聞いていた黒髪の少女……アカリとか言ったか? が、腕を組みながらそんな風に言う。
「そうですね。ですが、もしそれが出来るのであれば……」
「ユーコ?」
アカリという少女の横に浮いている霊体――いや、アストラル体のユーコとやらの呟きに首を傾げるアカリ。
「いえ、なんでもありません」
ユーコがそう答えて首を横に振ってみせる。
……なんだ? このふたり、妙な違和感があるな……
まるで、昔から知っているような……
無論、出会った記憶などないので、単なる俺の勘違い、あるいは思い違いかも知れないが……
だが……それでも……だ。
何故だ? 何故、ふたりの仕草の一部があいつと……アルチェムと被るんだ……?
そんな思考を巡らせていると、
「この辺りの魔力残滓を隠蔽したのは、貴方たちですか?」
と、セレリア族の男性――ジャンと言ったはずだ――が、問いかけてくる。
「魔力残滓の隠蔽?」
ソウヤは首を傾げてしばし考えた後、
「ああ、そういう事か。……それをしたのは俺たちじゃあない。この拠点にいた連中の協力者――『銀の王』か、妙な理を作った人物のどちらかだろう」
なんて事を告げる。
「……『銀の王』?」
「この大陸で活躍していた傭兵団の……だった連中ですわね」
「ああ。今はこの世界のあらゆる場所に潜み、様々な破壊行為を行う超広域テロ組織である『竜の御旗』に与する集団と化しているな」
「鬼哭界という異界の住人だという噂があるよねぇ」
アカリの疑問に広捜隊の面々がそう説明する。
「最後のは、噂ではなく事実だけどな」
俺はそう告げてやる。
「なるほど……。要するに『銀の王』というのは、世界各地で暗躍する『竜の御旗』を裏から補助し、この世界を緩やかに侵略する鬼哭界の尖兵……という事ですか」
ジャンという人物が、メガネをクイッと押し上げながらそんな風に言う。
「ま、簡単に言えばそういう事になるな。……これは、現時点で得られている情報からの、最も可能性の高い推測ではあるんだが……竜の御旗のトップである『真なる王』というのは、『銀の王』――つまり、鬼哭界の者たちのトップと同一……要するに『鬼哭界の王』であると俺達は考えている」
そう説明するソウヤに、
「……その話、俺たちにしてしまって良いのか?」
と、問いかけるロデリック。
「ああ。むしろ、知っておいた方が良いだろうしな」
「そうね。ここを貴方たちよりも先に制圧し、調査してしまったお詫びも込めて、ね」
ソウヤとシャルがそんな風に言うと、
「……その言い回し、他にも――その場所で何か情報を得ている感じですわね?」
なんて事を言うゴツい得物を持ったリリアみたいな喋り方の女――エリスとかいう名前だったはずだ――が、訝しげな目でそう言ってくる。
「そうですわね。たしかに得はしましたけれど……そちらがどうこう出来るような情報ではないですわよ」
リリアがため息交じりに肩をすくめてそう言い、
「ん、だから、うん、この件に関してはこっちに任せて欲しい。うん。きっちりこっちでどうにかする。うん」
と、ロゼが補足するように続けた。
「いやいや、そんな事を言われても……ねぇ?」
「ええ。はいそうですか、後はお任せします。……とは、言えませんよね」
「全くもってその通りだぜ。――俺たちにどうこう出来るような情報じゃねぇっつーのは、一体どういうこった?」
広捜隊の面々がもっともな反応を返してくる。
「――ん、それは簡単に言えば……うん、私たちとそっちでは、色々な面で圧倒的な差がある為。うん」
「お前らじゃ、手出しするのが難しい上に、仮に手を出す事が出来たとしても、返り討ちに合うのが目に見えてるっつーこった」
ロゼの言葉に続く形でそんな風に言って肩をすくめてみせる俺。
そして、一呼吸置いてから、
「……と、口で言っても多分納得は出来ねぇだろうから、実際に試してみるか? この先に待つ『敵』の相手を出来るかどうかを……な。まあ、俺に膝をつかせる事すら出来ねぇと思うぜ?」
なんていう挑発めいた言葉を敢えて吐き、俺は螺旋騎槍――俺命名――を構えた。
予約投稿が完全にミスって15日になっていました……
ので、変な時間ですが手動で更新いたしました……
次回の更新こそ15日の予定です……




