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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第51話[裏] 少女の名前と自然公園のねじれ

<Side:Souya>

「それって、ヴァロッカで大掛かりな積み込みが行われたって話? さっきロゼが言っていたわね」

 シャルが顎に手を当てながら、そんな風に言う。

 運転士からの情報だったな、たしか。

 

「ああ。恐らく見つかったオートマトンやらなにやらを積み込んだんだろう。機巧竜のパーツと思しき物もあったから、既に列車強盗団の手に機巧竜がある可能性も考えられるな。修理用として運ばれていた可能性が十分に考えられる」

「そうですね……。こちらでパーツを抑えたので、奴らは修理が必要な機体を使う事が出来ない――使える機体が減っている状態になっていると考えても良いかもしれないですね」

 バーンに対し、俺はしれっとそんな風に言う。

 無論、俺たちが既に回収した1機が奴らの手に渡る事はないので、実質1機減らしている状態なのだが、そんな事は口にしない。

 

「まあ、なんにせよ……ヴァロッカ方面の調査は俺ら鉄道運行保安隊の管轄だな。そっちは元々自然公園に行く予定だろ? これ以上、手間を取らせるつもりはねぇから安心してくれ。ああ、ロゼもな」

「ん? そう? じゃあ、このままソウヤと一緒に行く。うん」

 バーンに顔を向けられたロゼがそう言って首を縦に振る。


「よし、それじゃあ大分道草を食ってしまったが、当初の予定通り自然公園へ向かうとするか」

「駅までもうすぐと言っていたし、ここからなら徒歩でもすぐよね?」

 俺の言葉に続く形で、シャルがバーンに問いかける。

 するとバーンはそれに対し、

「ああそうだな。駅までは3~4キロといった所だな。だが、自然公園へ入るだけなら駅へ行かずに途中から林道へ入ればもっと近いぞ。ロゼなら分かるだろ?」

 と答え、再びロゼの方へと顔を向ける。

 

「ん、問題ない。案内する」

 そうロゼが告げると、

「もちろん、私も行く!」

 と、寝起きの時とは違う元気な声でそう言ってくる……ん? 名前は――

 ――って、そうだ。名前が分からないままだったんだ……

 

「……と、言ってるけど……どうするの?」

「まあ……自然公園なら、さほど危険はないからいいんじゃないか? 幻獣――あの翼竜もどきが出て来たとしても、これまでに2回迎撃してるし、問題にはならないだろう」

 シャルの問いかけに対しそう答え、そこで一度言葉を切る。

 そして少女の方を見て、続きの言葉を紡いだ。

「それより問題なのは、名前だ」


「名前……?」

「ん、たしかに今のままだと名無し。うん」

 少女とロゼがそんな風に返してくる。

 

「エムとエスが名前に含まれるのよね?」

「うんそう。ABCとかのMとS」

 シャルの問いかけにそう答える少女。

 MS……モビ――いや、それは違うな。絶対。

 

「そうだなぁ……隊員や知り合いでそのふたつが含まれている名前だと、マーシャ、マリシア、ミーシャ、ミリス、メリッサ、メルセデス――」

「……んー、一番最初に上げたのが、何か良い!」

 次々に名前を上げていくバーンが口にしたひとつの名前に反応するように、そちらへと顔を向ける少女。

 

「んん? 一番最初……マーシャ? うん?」

「そう、それ! なんだかそれが一番心に響いた!」

 ロゼの問いかけに少女はそう答え、うんうんと首を縦に振ってみせる。


「なら、マーシャと呼ぶか。心に響いたという事は、それが本名、あるいは近しい名前である可能性が十分に考えられるからな」

「ん、たしかに。それじゃあこれはからマーシャって呼ぶ。うん、よろしく」

 俺とロゼがそう告げると、

「マーシャ。マーシャ……うん、やっぱりなんだかしっくり来る! ありがとう、パパ、ママ」

 なんて事を笑顔で言ってくるマーシャ。

 

「ん、やっぱり凄い違和感がある」

 照れ隠しなのか、額の角部分を撫でながらそんな事を言うロゼ。

 俺もそれに同意すると、シャルが「むぅ、認め難いわ」などとやや不機嫌そうに言ってきたが、こればかりは如何ともし難い。

 

                    ◆

 

 ――とまあ、そんなこんなでコンテナの中で眠っていた少女の名前も決まり、俺たちはロゼの案内で自然公園の入口までやってくる。

 

「うーむ……完全に日が暮れたな……」

「まっくらー」

 俺の言葉に続く形でマーシャが手を額に当て、周囲を見回すような仕草をしながらそんな風に言う。

 ふむ……どうやら暗さに対する恐怖のようなものはないっぽいな。


「ん、列車強盗団の一件で時間を食わされたのが、うん、やっぱり響いてる。うん」

「まったくね……。うーん……一応、整備された歩道部分には、所々に魔煌灯が点在しているけど、その周辺くらいしか照らせてないわね、あれ」

「うん、たしかに。でも、うん、一応地形とかは把握しているから、真っ暗でも大丈夫。うん」


 そんな事を言いながら周囲を見回すロゼとシャルを横目に、俺は携帯通信機を取り出すと、その小型ディスプレイに地図を映し出す。

 たしか、ここから南に10キロくらいだったか……? 

 『いつもの』照明魔煌具は持ってきているが、それでも夜道だとちょっと時間食うな……。マーシャもいるし、あまり深夜に歩き回りたくはない所だが……

 

「ん、そういえばここには何を探しに? うん」

「ああ、簡単に言えば『空間の歪んだ痕』みたいな物を探しに来たんだ。ここに例の灯とユーコが転移してきたみたいでな。もしかしたら『アレ』の可能性が考えられる」

「アレ?」

 ロゼと俺の会話を聞いていたマーシャがそう問いかけてくる。

 

「ん、『世界を浸食する歪み』の事。うん」

 そうロゼに説明されたマーシャは、

「せかいをしんしょくするゆがみ……」

 と、呟くように口にした後、

「んー、それは良くわからないけど、何かがこう……グニャっとねじれている場所なら南の方から感じるよ」

 なんて事を言ってきた。

 

 何かがグニャっとねじれている場所……?

列車強盗団の話が思ったよりも長くなった事もあり、よくやく自然公園に到着しました……

といった所でまた次回! 次の更新は明後日、水曜日の予定です!

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